不動産投資アドバイザーとして、まだご自身も不動産投資家として多くの物件を所有する小原正徳さん。名だたる大企業で不動産ファンドの監査や運用に携わった経験を活かし、不動産投資に興味を持つ人々にさまざまなアドバイスを行っています。そんな彼はなぜ輝かしい経歴を捨てて起業し、投資の道を歩み始めたのか。ここまでの人生と、現在手掛ける事業について語っていただきました。
保有資格:不動産鑑定士、宅地建物取引士
先輩の姿に10年先の自分を見てしまった
――ご経歴を拝見すると、そのままキャリアを重ねていけば非常に輝かしい未来が待っていたのではないかと思ってしまうのですが、あえて独立起業という形でキャリアチェンジをされたのはなぜでしょうか?
前職はゴールドマン・サックスの不動産運用部門で働いていましたが、あの業界って朝から晩まで働いても電車ではなかなか帰れないような、非常にハードワークな世界なんです。そこに僕と同じ業務を担当するキャリア10年ぐらいの先輩がいて、僕より3倍ぐらいの給料をもらっていたと思いますけど、ある時、「10年経ってもこの仕事なのか」と、このハードワークをあと10年続けるのは無理だなと、ふと思ってしまったんです。10年頑張れば給料が3倍になるかもしれないけれど、逆に10年先が見えてしまった感じがしました。
そこで次の仕事を考えたわけですが、これだけ頑張って働いたのだから、自分のためだけに力を発揮すればもっと稼げるんじゃないかなと思いました。仕事の質というものを学ばせてもらえたし、あとは自分が何をするかだけだと。だから、別の会社に転職する意識はまったく芽生えなくて、次は自分が直接世の中に何かしらを提供すべきだと思い、それなら起業だろうと考えました。
――起業意識のようなものは以前からお持ちだったのでしょうか?
起業意識があるというよりは、勤め人のマインドがあまりなかったんだと思います。企業に雇用されるというスタイルが当たり前だという考えがもともとなかったんですね。
スナックのママへの家賃の督促も経験
――不動産業界に関わることになったのはそもそも何がきっかけだったのでしょうか。
実は僕、新卒で就職していないんです。東大卒のニートだったんですね。ちゃんと働かなければと思ったのは26~27歳の時でした。きっかけは明確で、もうその時すでに結婚していて、子供ができたんです。僕も働いてはいましたが年収は確か300万円ぐらいしかなくて、妻は非常勤の仕事でしたが出産のために仕事を辞めることになり、その中で家族3人食っていかなきゃいけない。いよいよ自分のキャリアをちゃんと考えて給料を伸ばしていかないと暮らしていけないなと思いました。それで不動産業界に転職をしようと思ったのがきっかけです。
ただ、そもそも僕は営業には向いてないタイプなので、不動産鑑定士という資格を取得してから転職しようと考えました。しかし、不動産業界に転職をしようと思ったのが2008年3月、資格を取得できたのがリーマンショックをまたいだ2009年でしたので、不動産業界もファンド業界もガタガタの時代で…。なかなか働き口が見つからない中、不動産の管理をメインにやっている会社にようやく拾ってもらい、2010年の1月1日からようやく不動産の世界で働き始めることができました。ただし、最初から鑑定部には入れてもらえず、まずはとりあえず管理の現場で揉まれてきなさいと。だから、僕の不動産における最初のキャリアは管理マンだったんです。テナントさんからの減額のご要望を何とか断るとか、上野のソシアルビルに入っているスナックのママさんに賃料の督促をするとか。そんな仕事をやっていました。
――ご経歴の字面からは想像できないご経験ですね。
トップラインだけ並べるとすごくきらびやかなんですけど、いろいろボトムもあるんです(笑)。でも、管理の経験からゴールドマン・サックスの仕事まで、すべての経験が今の事業に結びついています。
不動産投資にまつわる3つの事業を展開
――個人の不動産投資家として、今の投資家さん達が置かれている状況をどのように感じていらっしゃいますか?
不動産投資家にとっては不動産を保有してどれだけのキャッシュが残るかということが大事なわけですが、それを緻密に理解し計算できている人って実はほとんどいないと思うんです。よくわからないまま買ってしまってるのが現状で、そのため高値掴みをさせられ失敗しているケースが多いと思います。
――たとえば、投資しようと思ってネット検索して出てきた情報を精査せずに「これでいいや」と安易に決めてしまって失敗するといったケースでしょうか。
少し前はそんな人が多かったですね。最近はそう簡単に融資がつかなくなったので、変に高値掴みをさせられてしまう人は少なくなったとは思いますが、業界的には手を変え品を変え「買うべきもの」より「買えるもの」を買っていただく業界なので、やはり買う側がしっかりジャッジしなければいけないことに変わりはありません。
――そうした中、小原さんは今、不動産投資にまつわるどのような事業を展開されているのでしょうか。
大きく3つの事業があります。まずメディアなどに取り上げていただいているものでいうと、不動産ファンドの企画・運用です。ファンドと言ってもいわゆる金融商品としての分類にはならない、免許がなくても運用できる不動産ファンドのスキームを構築し運用しています。投資対象は東京23区内の3億円前後の築浅の共同住宅です。2021年11月にスタートし、現在順次購入を進めているところです。
2つ目は、土地の仕入れからマンションの開発を手掛けるパターンです。こちらも2~3億円規模で、10世帯~10数世帯程度の単身向けのマンションを新築する事業を手掛けています。
3つ目は個人の方に向けたスクール事業です。不動産投資を始めたい方向けに、基礎的な内容、特に収支の計算に主眼に置いたスクールを開講しています。
都心の土地を仕入れ自ら建築まで手掛ける
――物件は具体的にどのようなものをお持ちですか?
もともとは地方の中古物件を多く所有していて、エリアで言うと札幌がけっこう多いですね。西だと一番遠いのが高知県です。買えませんでしたが九州の物件を見に行ったこともあります。そういった地方の2~3億円の中古の鉄筋コンクリート物件を見ることが多かったのですが、最近はなかなか希望に合う物件は出てこなくなったため、今は都心の土地を購入、自ら保有する前提で建築を企画する事業に転換しています。
――最初に地方に目を向けたのはどういったところに理由がありましたか?
利回りです。都心や一都三県の物件は利回りが低すぎて、事業として伸ばしていくことを意識すると買えないんですね。事業の規模感を出していくのがなかなか難しい。規模感が出しやすく、かつ売却によって次につなげるという買い方を考えると、やっぱりある程度の利回りが必要になるわけです。そうして絞っていった結果、地方の物件に行き着いたという流れでした。
――それで言うと、都心で土地から手掛けることに関しても利回りの部分でメリットを感じていらっしゃるということですね。
そうですね。利回りという意味では地方の物件よりはまだ低いですが、都心で中古を買うよりも自ら汗をかき土地から一生懸命考えて新築を建てたほうが利回りを確保できることは間違いありません。
――しかし、これから新たに不動産投資を始めようと思う方にとっては、土地から始めることに戸惑う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
それは将来どうなりたいと思っているかにもよると思います。片手間に月5万円や10万円が手元に残る程度で十分なら区分所有の物件をゆっくり買い進めていくスタイルでもいいでしょう。しかし、「3年後にFIRE(経済的自立と早期リタイア)したいから区分を買いました」というのは間違いです。どこを見据えるかによって違ってくるということですね。
(後編に続く)
小原正徳さんのYoutubeチャンネル(外部リンク)
https://www.youtube.com/channel/UC9PYiD73q11jIMvaeBsqMvQ
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