航空機などに投資する日本型オペレーティングリースとは
(画像=Jaromir Chalabala/Shutterstock.com)

投資商品としてのオペレーティングリース(JOL)は、航空機や船舶など大型の資産に投資を行ったのと同様の効果をもたらす契約のことです。オペレーティングリースを活用することで一定の税務上のメリットを享受することが期待できます。そこで今回は、このようなオペレーティングリースの仕組みや適した活用方法について解説します。

オペレーティングリースはどのような仕組みか

JOL(Japan Operating Lease)は日本型オペレーティングリースとも呼ばれます。オペレーティングリースでは、商法で定められた「匿名組合契約」を活用し、航空機、船舶、コンテナなどの大型資産に投資を行うことになります。匿名組合契約というのは「匿名組合員」からの出資にもとづき、「営業者」が対外的な事業を行い、その成果を「匿名組合員」に還元するという契約です。

たとえば航空機を対象とするオペレーティングリースの場合であれば、リース会社が設立したSPC(特別目的会社)などが「営業者」となります。また「匿名組合員」である投資家から出資を受け入れるとともに金融機関からは融資を受けるのが一般的です。SPCはこれらの資金をもとに航空機を購入し、これを航空会社などにリースします。

その結果、航空会社から定期的に受け取るリース料、リース期間終了時における機体の売却収入などがリース事業の収益となるのです。また航空機の減価償却費、維持管理コスト、借入金利息などがリース事業の費用として計上されます。

オペレーティングリースのメリットとデメリット

税務上、匿名組合の事業損益は投資家の決算に取り込まれることになっています。航空機リース事業では、リース期間の前半に多額の減価償却費が発生して赤字となるため、投資家はこれを決算に取り込むことで税金負担を軽減することが可能です。損金に算入できるのは出資額の範囲に限られるものの、投資後2年程度で出資額の全額を損金にすることができるのは大きなメリットといえるでしょう。

逆にリース期間の後半では減価償却費が減少するとともに、リース終了時に売却益が発生するなどして黒字となる可能性が高くなります。これは投資家にとって税負担が大きくなることを意味します。つまり、リース期間を通じたトータルで考えると課税を繰り延べているに過ぎないという限界もあります。また匿名組合の事業は元本が保証されているものではありません。

中古市場におけるリース物件の価格や為替の変動などにより、元本が毀損したり追加出資が必要となったりする可能性もあります。

オペレーティングリースの活用が適する場合とは?

匿名組合の事業損益を決算に取り込むことができるのは組合員が法人の場合だけです。そのため、オペレーティングリースを税金対策に活用できるのも法人に限られます。また、上述のようにオペレーティングリースはトータルで考えると課税の繰り延べに過ぎません。そのため将来における法人の所得を予測して、匿名組合から生じる事業損益を有効活用できるようにプランニングする必要があります。

具体的には、当初1~2年は所得が多額に発生して節税対策が必要であるものの、将来の事業年度では所得の減少が見込まれている場合などではオペレーティングリースの活用が適しているといえるでしょう。特にオペレーティングリースにおけるリース物件の売却により多額の所得が発生する事業年度には、たとえば役員退職金などの損金を計上して所得を相殺するといったタックスプランニングが必要です。

実際に活用するにはどうすればよい?

オペレーティングリースはリース会社やリース・アレンジメント事業を提供する企業などで取り扱いがあります。実際に活用を検討してみたい場合は、こうした会社に問い合わせして商品概要資料などを入手することから始めるとよいでしょう。ただし「オペレーティングリースの活用が自社に適しているかどうか」については個別に判断することが必要です。

また通達の改正などにより、将来的に上記のような税務上の効果が得られなくなる可能性も考えられます。そのため活用に際しては、税務専門家のアドバイスも参考にしながら、慎重に検討すべきことは言うまでもありません。

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