確定申告のe-tax、私にもできる?やり方を解説
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鈴木まゆ子
鈴木まゆ子
税理士・税務ライター|中央大学法学部法律学科卒業後、㈱ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。「ZUU Online」「KaikeiZine」「朝日新聞『相続会議』」「マネーの達人」「納税通信」などWEBや紙面で税務・会計に関する記事を多数執筆。著書「海外資産の税金のキホン(税務経理協会、共著」。

コロナ禍に伴いインターネットなどを活用して所得税や相続税といった国税の手続きを行う「e-Tax」での確定申告が注目されています。家にいながら確定申告ができるため、感染リスクを抑えられる観点から利用する人も増加傾向です。なんだか難しそう……そう感じる方のためにe-Taxの確定申告イロハについて解説します。

e-Taxで確定申告をする5つのメリット

e-Taxでの確定申告は、一見大変そうに感じる方も多いかもしれません。たしかにe-Taxで確定申告をしたからといってお金がもらえるわけではありません。しかし実際にやってみると以下のような5つのメリットを享受できます。

税務署に行かなくていい

2020年以来のコロナ禍で最も心配なのは、新型コロナウイルスに感染することです。特に確定申告の時期の税務署には、たくさんの人が集まっており感染するリスクが懸念されます。仮に必要な書類を税務署に郵送するにしても郵便局には足を運ばなくてはなりません。一方でe-Taxなら在宅で確定申告ができます。

人の集まる場所に行かなくても済むため、結果として感染リスクを抑えることができるのです。

コストがかからない

「税務署に行く」「郵送する」どちらを選択するにしても金銭的なコストはかかります。税務署に行くなら交通費やガソリン代、郵送なら郵送料が必要です。しかしe-Taxならこういったコストはかかりません。パソコンからの申告ならカードリーダライタなどの備品代がかかりますが3,000円前後で済みます。

一見高い出費に感じる方もいるかもしれません。しかしカードリーダライタは、一度買ったらずっと使うことができます。そのため費用対効果としては、e-Taxのほうが高いのです。

24時間申告できる

税務署で申告するときは、開庁時間内に行かなくてはなりません。確定申告期間中は、8時半~17時までですが会場によって異なります。また郵送する場合も時間は限られています。つまり紙を使った申告は時間の制約を受けるのです。しかしe-Taxなら24時間いつでも申告手続きを行うことができます。

紛失のリスクが下がる

紙の申告書は、原本が1枚だけです。申告書を紛失してしまったらそれっきりとなり探してコピーするのにも時間がかかってしまいます。しかしe-TaxならデータとしてPCやクラウドで保管できます。紙を使った申告と比べて紛失や情報漏えいのリスクが軽減されるだけでなく、融資といった申請の際の印刷などが便利になります。

青色申告の特別控除が55万円から65万円に

事業主の自主的な記帳や申告を促す制度として「青色申告」があります。事業所得・不動産所得・山林所得を申告する人が対象です。この制度の特典の一つに「特別控除」というものがあります。青色申告をするといずれかの所得からさらに一定額を差し引くことが可能です。2019年以前の特別控除額は「65万円」「10万円」のどちらかでした。

2020年分以降、65万円控除は「65万円」「55万円」の2つに分かれています。そのため2021年度の確定申告を紙で行うと控除額は55万円です。しかし「e-Taxで申告する」もしくは「帳簿や領収書等を電子保存する」のどちらかを行えば65万円の控除ができます。ただ後者は要件が厳格で使うのはかなり困難です。65万円控除を受けたいならe-Taxのほうがハードルは低いといえるでしょう。

不動産投資では、投資の規模が「5棟10室」という条件をクリアし複式簿記で記帳すると65万円や55万円といった高額の特別控除が受けられます。投資物件をたくさん保有している方には、一考の余地があるでしょう。

確定申告のe-Taxのパターン2つ

e-Taxで確定申告を行う方法は「スマホ」「PC」の2つです。どんな人が利用できるのでしょうか。

スマホで申告できる人

スマホで作成できる内容は、限られています。2020年分でいえば給与所得や一時所得、雑所得を申告する場合に利用可能でした。そのため不動産収入が当てはまる不動産所得の場合、スマホを使った申告はできません。

PCで申告できる人

PCでe-Taxを利用する場合、不動産所得を含むすべての所得の確定申告が可能です。収支内訳書や青色決算書、確定申告書などすべてをオンラインで申告できます。

確定申告のe-Taxで必要な事前準備

パソコンやスマホで確定申告を行うとしてもすぐに手続きをすることはできません。なぜなら以下のような事前準備が必要となるからです。

マイナンバーカードとカードリーダライタを入手する

e-Taxで確定申告を行う際は、オンラインで本人確認ができるようにする必要があります。そこで必要になるのが「マイナンバーカード」です。e-Taxでは、マイナンバーカードに記載されている個人情報から納税者の本人確認を行っています。マイナンバーカードは、オンラインでも申請可能ですがカードを受け取るときは、住民票のある開庁時間内に市区町村の窓口に行くことが必要です。

またマイナンバーカードを入手したとしてもそれだけではe-Taxでの本人確認は行えません。カードの中の情報を読み取るためのカードリーダライタが必要です。

IDとパスワードを入手する

マイナンバーカードがなくてもIDとパスワードがあればe-Taxで申告できます。ただし最寄りの税務署まで足を運んで本人確認を行う必要があるため、郵送やオンラインでは申請できません。税務署で本人確認を行う際は、運転免許証などの身分証が必要です。また過去に確定申告の会場に行ってパソコンで申告したことのある人は、一度そこでIDとパスワードを作成しています。

申告書の控えと一緒に「ID・パスワード方式の届出完了通知」をもらっているはずなのでそちらを確認するといいでしょう。

e-Taxなら国税庁のウェブサイトで申告できる

e-Taxでの確定申告は、民間の会計ソフトも利用できますが一番コストがかからず使いやすいのは、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」でしょう。一度e-Taxで作成しデータを保存しておけば翌年以降、そのデータをもとに内訳書や決算書、確定申告書を作成することが可能です。実をいうと税理士である筆者も民間のソフトではなく国税庁のサイトで個人の確定申告書を作成しています。

なぜなら民間のソフトよりも精度が高く間違えにくいからです。最初はハードルが高く感じるかもしれませんが一度経験するとe-Taxで申告したほうがはるかに便利だと気づくでしょう。なにより確定申告の作業に取られる時間も軽減することができます。確定申告が開始する2~3月に向けてe-Taxで確定申告を検討してみてはいかがでしょうか。

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