不動産投資,節税手法
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佐古野 道人
佐古野 道人
一般企業で不動産運用や税務を経験後、ファイナンシャル・プランナーとして独立。マネー専門ライターとしてWEBライティングの他、書籍の企画・構成にも携わる。得意分野は資産運用。日本FP協会資格認定会員(AFP)。

不動産投資に興味がある人なら、節税手法について一度は見聞きしたことがあるでしょう。どんな手法も世間を騒がすほど行き過ぎたものであれば、税務当局によって不公平と見なされ、法律改正によって封じられていくものです。そして、ブームが過ぎた「オワコン(終わったコンテンツ)」になっていきます。

本記事では、不動産投資でしばしば用いられてきた節税方法である「タワマン節税」「一般社団法人を利用した節税」「消費税還付」ついて検証します。

タワマン節税

タワーマンション(タワマン)の高層階を購入することで、固定資産税と相続税を節税する手法が一時期話題になりました。固定資産税に関しては、2017年度から適用された地方税法の改正によって、すでに「オワコン」になっています。

節税の基本的な流れは、現金をタワマンに変える→タワマンを相続して相続税を納税→タワマンを現金化、というシンプルなものです。建物の相続税評価額は、固定資産税評価額を用います。特にタワマン高層階は評価額が実勢価格よりも低いため、資産を現金で持つよりも相続税を軽減することができました。

2017年の法改正まで、タワマンの土地にかかる固定資産税の計算は、床面積によって按分する方法が採られていました。一般的に、マンションは高層階になるほど実勢価格が高くなります。この計算方法では、高額な高層階も比較的安い低層階も、同じ間取りなら土地の固定資産税額は同じになります。

改正後の固定資産税額は、1階上がるごとに約0.256%の補正率を乗じることになりました。たとえば40階の評価額は、1階の評価額と比べて(40-1)×0.256=約10%高くなります。

近年タワーマンションの実勢価格は、低層階と高層階の価格差が縮小してきたと言われています。最新の集計データから都心タワーマンションの実勢価格を見ると、40階は1階の約1.12倍で固定資産税評価額の差とほぼ同じです(三井住友トラスト不動産「不動産マーケット情報」2018年12月号よりデータを引用し計算)。

計算方法の改正によって、タワマンの低層階と高層階の固定資産税の差は、実勢価格の差とほぼ変わらなくなりました。しかし相続税の計算方法については変わっていないので、節税方法としてはまだ「賞味期限内」と言えるかもしれません。ただし、あまりに実態とかけ離れた税額になると、国税庁から指摘を受ける可能性があります。固定資産税に関する改正が行われた以上、相続税に関しても厳しく目を光らせていると考えたほうがいいでしょう。

相続税におけるタワマン節税はオワコンとは言い切れませんが、慎重になる必要があるでしょう。

一般社団法人を利用した節税

一般社団法人を利用した相続税の非課税スキームが流行したことがありました。一般社団法人は株式会社や合同会社と異なり、特定の個人の持分がありません。そのため、社団の理事が死亡したとしても相続税はかからないのです。これを利用すると、まず親の資産を社団に移転し、その後子が理事になることで、実質的に親の資産を非課税で引き継げるのです。

しかしこの手法は、2018年4月の相続税法改正によって封じられました。以下の要件のどちらかに当てはまる一般社団法人の理事には、一定の持分を持つとみなして相続税を課すことになったからです。

①相続時に同族理事人数が総理事数の2分の1を超える
②相続開始前5年以内に2分の1を超える期間が3年以上

そもそも、このスキームは一般社団法人に資産を移転する際、贈与税や譲渡所得税がかかる可能性があったため、リスキーな手法でした。その上相続時に個人とみなす規定が設けられたので、利用するメリットはまったくなくなりました。完全な「オワコン」スキームです。

消費税還付

不動産投資用の不動産を購入したときに支払った消費税を還付させる節税方法は、消費税還付スキームとして長らく行われてきました。不動産投資家であれば、一度はこのスキームを検討したことがあるでしょう。

消費税の納付額は、「売上にかかる消費税額-仕入れにかかる消費税額」という計算式で求められます。賃貸用建物を購入するときは消費税を支払いますが、購入後の家賃収入は、住宅用であれば非課税です。よって納付額は「0-賃貸用不動産に係る消費税額」となり、賃貸用不動産の購入時に支払った消費税がほぼ全額戻るというスキームです。

このスキームを封じるため、3年後に還付された税額を徴収するようになったことで、還付のうまみは徐々に少なくなっていきました。それでも、消費税還付を受ける方法はある程度残されていました。

しかし2020年10月の税制改正によって、このスキームは完全に封じられることになりました。1,000万円以上の賃貸用不動産を購入した場合、購入時に支払った消費税は消費税の計算上差し引けないことになったのです。還付対象となりうる消費税自体を、支払っていないと見なされるのです。この改正法の施行によって、消費税還付スキームは完全に賞味期限切れとなります。

タワマン固定資産税と一般社団法人は「オワコン」、残り2つも賞味期限は近い

不動産投資で利用されてきた3つの節税手法を検証しました。税制改正によってタワマンによる固定資産税、一般社団法人による相続税節税は完全に「オワコン」となっており、消費税還付スキームの賞味期限は2020年9月までです。残されたのはタワマンによる相続税の節税のみですが、固定資産税の節税が封じられたことを考えると、オワコンとなる日は近いかもしれません。

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