ふるさと納税は、節税対策の一つとして紹介されることが多く実際に行っている人も増えています。とはいえよく内容を把握しないまま始めてしまうと「思ったほどの節税効果はなかった」と感じることになりかねません。ふるさと納税の節税効果は、所得に比例するため、ここで仕組みをしっかりと理解して有効に活用するようにしていきましょう。
ふるさと納税の概要
ふるさと納税とは、自分の選んだ自治体に対して寄付を行うことでその寄付金合計のうち2,000円を超える部分(上限あり)について原則として所得税もしくは個人住民税から控除される制度です。この控除は所得控除となりますので、所得の多い方ほど節税効果は高くなります。寄付の方法は、現金を寄付するのではなくふるさと納税のサイトなどで返礼品を購入する方法が一般的です。
返礼品の種類は「食品」「お酒」「家電製品」「旅行券」「工芸品」など多岐にわたります。自分の好きな返礼品を選択することで各自治体への寄付につながるだけでなく自分の所得税や住民税の節税対策に結び付く仕組みです。
利用実績
総務省が公表している「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和2年度実施)」によると2020年におけるふるさと納税の所得控除利用者は約406万人でした。住民税控除額については約3,391億円となっています。
控除されるふるさと納税額の目安
ふるさと納税額の上限額については、総務省のサイトや各自治体のサイトなどで確認することができます。しかしサイトによって表示方法が異なるため、「実際に自分がいくらまで寄付できるのか分かりにくい」と感じる人もいるのではないでしょうか。
年収および家族構成によって上限額が異なる
ふるさと納税の上限額は、世帯の年収や家族構成によって大きく変わります。一例を挙げると以下の表の通りです。
(上限額:自己負担額である2,000円を除いた額)
給与収入額 | 家族構成 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
独身 または 共働き | 夫婦 | 共働き+子1人(高校生) | 共働き+子1人(大学生) | 夫婦+子1人(高校生) | 共働き+子2人(高校生と大学生) | 夫婦+子2人(高校生と大学生) | |
500万円 | 6万1,000円 | 4万9,000円 | 4万4,000円 | 4万円 | 3万6,000円 | 2万8,000円 | |
1,000万円 | 17万6,000円 | 16万6,000円 | 16万3,000円 | 15万7,000円 | 15万3,000円 | 14万4,000円 | |
1,500万円 | 38万9,000円 | 37万7,000円 | 37万3,000円 | 37万7,000円 | 36万1,000円 |
ちなみに給与収入額とは、ふるさと納税を行おうとする本人の給与収入額のことで個人事業主や年金収入のみの人については、この表は適用されませんので注意してください。また「共働き」の定義は、配偶者の給与収入が201万円超の場合、つまり配偶者控除の適用外となっていることです。逆に夫婦の定義は、配偶者に収入がないケースを指します。
これらの表に小学生や中学生の子どもが含まれないのは、扶養控除の対象とならないためです。扶養控除の対象となるのは16歳以上の扶養親族、さらに19歳以上23歳以下であれば特定扶養親族に該当するため、このような表の分類となっています。例えば給与収入500万円・独身・ふるさと納税額合計が6万1,000円以下であれば自己負担額2,000円のみの納税です。
また年収1,500万円で配偶者に収入がなく高校生と大学生の子どもが1人ずついる場合、36万1,000円までふるさと納税を利用して返礼品を購入しても納税する額は2,000円のみとなります。ちなみに限度額を超えた部分については、自己負担となるため注意してください。
控除額の計算方法
ふるさと納税を行った際は、以下の順番で計算された額が順次控除される形となります。
所得税
所得税を計算する際、ふるさと納税額から2,000円を差し引いた額を「寄付金控除」の欄に記載し合計所得金額を下げることで最終的な所得税額を削減することができます。仮に給与所得が1,000万円の人(妻は専業主婦、子どもなし)が10万円のふるさと納税を行った場合、所得控除による税額の軽減額は9万8,000円(10万円-2,000円)に所定の税率(33%)を乗じた3万2,340円となります。
個人住民税
上のケースだとふるさと納税額10万円に対してまだ約3万2,340円しか差し引かれていないため、残りは個人住民税(基本分)から差し引き可能です。個人住民税では、ふるさと納税額から自己負担分の2,000円を引いた額の10%が税額控除されます。そのため(10万円-2,000円)×10%となる9,800円が控除されるのです。
また所得税および個人住民税(基本分)で差し引いた残りの額は、個人住民税(特例分)から引かれることとなります。個人住民税(特例分)については、ふるさと納税額から自己負担分の2,000円を引いた金額から基本分で計算した額を差し引きさらに所得控除で算出した減税額を差し引く仕組みです。つまり「(10万円-2,000円)-9,800円-3万2,340円=5万5,860円が差し引かれることとなります。
差し引かれる金額の合計は9万8,000円のため、ふるさと納税額10万円から自己負担分の2,000円が引かれた全額が控除されたことが分かるでしょう。
確定申告不要となる「ワンストップ特例」とは?
ふるさと納税による控除を受けるためには、原則として確定申告を行うことが必要です。しかし一定の要件を満たすことで確定申告が不要となる「ワンストップ特例制度」も利用でできます。この制度を利用することで本来であれば確定申告が必要のない給与所得者は、確定申告を行わなくても控除を受けることができる点がメリットです。
ワンストップ特例を受けるための要件
ワンストップ特例を受けるためには「確定申告が必要でない給与所得者など」「寄付した自治体の数が5つ以下」という要件を満たす必要があります。自治体の数に制限があるだけで寄付の回数に上限はありません。さらに特例を受けるためには、寄付先の自治体に対して寄付の都度「ワンストップ特例申請書」を提出することが必要です。
その際には、マイナンバーが分かるものの写しが必要になるため、事前に準備しておくようにしましょう。
ワンストップ特例を受ける際の注意点
ワンストップ特例は、確定申告不要で行える点がメリットです。しかし控除の適用を受ける際には、住民税のみの適用となります。住民税の控除適用は、翌年6月からとなるため、控除の適用が若干遅くなる点に注意してください。
ふるさと納税を利用するうえでの注意点
ワンストップ特例を利用できるのは、あくまでも確定申告が不要な人です。そのため医療費控除など還付申告が発生する人の場合は、利用することができません。またiDeCoを利用している人も要注意です。iDeCoの拠出金を給与天引きではなく個人で支払っている場合は、年末調整の対象とはならないため、確定申告を行う必要があります。
税制改正に伴いさまざまな控除の特例があるため、「年末調整で行えるものなのか」「確定申告が必要なのか」について事前にきちんと確認しておくと安心です。仮にワンストップ特例を利用していたとしてもその後確定申告の必要が生じた場合は、確定申告にてふるさと納税の内容についても申告する必要があります。
ワンストップ特例の効力については、確定申告を行った時点で無効になるため、自分が寄付した先の自治体から受ける「寄附金受領証明書」をなくさないように保管しておくことも忘れないようにしてください。ふるさと納税は、節税効果が高い点で注目されていますが実質は「所得税および住民税を先払いする」というイメージです。
ただ「税金を納める際に現金で納付するか」「自分の好きな返礼品を購入することで納めるか」といった違いは、非常に大きいのではないでしょうか。返礼品には商品だけでなくプロジェクトへの参加などユニークなものもあります。それぞれの自治体のサイトを確認しながら本来納付すべき税金を自分の好きなものに使う楽しみに変えることができるふるさと納税の仕組みを上手に活用していきましょう。
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