個人事業主ができる最強の節税!「小規模企業共済への加入!?」

目次

  1. はじめに
  2. 制度の概要
  3. 加入資格
  4. 月々の掛金額
  5. 節税の仕組み
  6. 相続税の節税対策にもなる
  7. デメリット
  8. 終わりに

はじめに

 みなさまは「節税」と聞くと、なにを思い浮かべるでしょうか?「領収書で経費を計上する」「生命保険料控除、医療費控除を適用する」「ふるさと納税をやってみる」など、一般的に個人事業主ができる節税は限られています。
 そのため、私が個人的に非常におすすめしている「小規模企業共済への加入による節税」について、今日は解説していきます。

制度の概要

 この制度は退職金をご自身が積み立てていく制度になります。概要としては、小規模企業共済制度を運営している中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)に掛金をお支払いしていただくことで、退職された時の退職金を、掛金額に応じて中小機構から受け取ることができる制度となります。
 掛金お支払い時は、全額が所得控除となり、反対に退職金として受け取る場合は退職所得になり、退職所得は所得税と住民税が非常に優遇されているため、かなりの節税になります。

加入資格

 中小機構が公表している小規模企業共済への加入要件は下記のようになります。
※(引用元 中小機構のHPより)

1 建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業などを営む場合は、常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業主または会社等の役員
2 商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む場合は、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または会社等の役員
3 事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員、常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員
4 常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員
5 常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員
6 上記①と②に該当する個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)

 なお、加入資格がない例も公表されており、注意していただきたいのが、次の2つです
 A生命保険外務員等
 Bアパート経営等の事業を兼業している給与所得者(法人または個人事業主と常時雇用関係にある方)
 Aの生命保険会社でお勤めをされている方は、多くの方が年初に源泉徴収票ではなく、支払調書を会社からもらっているかと思います。保険外交員で事業所得の場合、他に、事業所得に該当する事業がないと小規模企業共済に加入することはできません。
 また、Bのいわゆるサラリーマン大家さんも、他に、事業所得に該当する事業がないと基本的に加入することができないということになります。
 サラリーマン大家さんが小規模企業共済に加入できないとなると、この記事を読まれている多くの人が「自分は加入できないな」と感じてしまうかもしれません。しかし、不動産を法人で取得し、法人の役員として不動産賃貸業を営んでおり、従業員数などの要件を満たしている方は、例えサラリーマン大家さんであっても小規模企業共済に加入することができます。なお、その他にも一定の条件を満たす場合には小規模企業共済に加入することができるかもしれませんので、気になる方は下記のご連絡先よりお問い合わせください。
※(田中会計事務所 TEL 03-6659-4848)

月々の掛金額

 掛金は月額1,000円から最高7万円まで選択することができ、年間で最大84万円もの所得控除を受けることができます。また、12ヶ月分を一括で前納することも可能であり、翌年以降の掛金額も自由に変更することもできます。

節税の仕組み

 先程もお伝えしたとおり、小規模企業共済への月々の掛金は所得控除となります。反対に退職金として受け取る場合、退職所得は所得税と住民税が非常に優遇されているため、節税対策としてはとても有効となります。
 もし、所得税と住民税率の合計が20%、年間の掛金額が84万円の場合、1年当たり減少する所得税と住民税は168,000円になります。これが10年間続けば168万円、20年続ければ336万円も支払う所得税等が減少します。では、税率ごとに減少する税金と退職時に増える税金をまとめた下記の表を見ていきましょう。

節税の仕組み

※ 退職金としてもらうことを前提としています。他に退職所得がある場合、または
 小規模企業共済を解約金や年金のように一時所得や雑所得となる場合には、
節税効果が変わってきます。
 小規模企業共済により、減少する税金と退職時の退職所得として増える税金を比較してもその節税効果が分かるかと思います。また、投資としての観点からみれば、最大約0.3%程度の定期預金に預けるよりも、はるかに利回りが良いです。
(小規模企業共済の利回り(税率20%の場合)⇒246万円÷1,680万円=14.64%)

相続税の節税対策にもなる

 生命保険金には法定相続人1人あたり500万円の非課税枠があるので、相続税の節税になるよう、生命保険に加入されている方もいらっしゃるかと思います。実は退職金にもこの生命保険金と同じように、法定相続人1人あたり500万円の非課税枠があります。  お亡くなりになる時まで、会社にお勤めされる方は少ないかと思います。そこでこの小規模企業共済を解約せずに、お亡くなりになる時まで掛け続けると、毎年所得税と住民税を節税しながら相続税も節税することができます。相続発生時には解約金を法定相続人が相続することになり、法定相続人が3人いる場合の退職金の非課税枠は1,500万円なので、1,500万円を預金で持ち続けるよりも相続税の節税対策に繋がるというわけです。   例:相続税率が30%、法定相続人が3人の場合
  預金1,500万円×30%=相続税450万円
  退職金1,500万円-(非課税枠500万円×3人)×30%=相続税0円

 なお、小規模企業共済には1年間で84万円を掛けることができますが、1,500万円を積み立てるには、最短で約18年と結構長い時間がかかります。

デメリット

 節税効果が優れている小規模企業共済にも、もちろんデメリットはあります。それが①途中で解約したくなり、任意解約をした時に、納付月数が240ヶ月(20年)未満の場合は掛金が元本割れしてしまうということです。つまり、納付月数が240ヶ月(20年)未満の任意解約満額返金されず、返礼率が80%程度になることもあります。そのため、定期預金よりも解約しにくいと言えます。
 また、②途中で月々の掛金額を減少させた場合も、任意解約時の掛金分の返戻率が減少する可能性があります。
 なお、不動産売却による事業の廃止、法人の解散、または役員の退任等が発生して、退職金を受け取った場合は、元本割れすることはありません。むしろ、納付月数に応じて、掛金の総額に加えて、約10%前後多く返金されます。

終わりに

 今回の小規模企業共済はいかがでしたでしょうか?所得税と住民税の節税になるだけではなく、実は相続税の節税に繋がること、投資としての観点からみても非常に利回りが優れていることが分かっていただけたかと思います。この非常に優れた制度があるにも関わらず、小規模企業共済による節税対策をご提案されない税理士先生が多くいることも事実です。小規模企業共済に加入できる方は、資金繰りに無理のない範囲で、是非加入をご検討いただければと思います。
 なお、加入をご希望される場合、今年から節税したい場合は12月中旬頃が加入期限、お支払い期限となりますので、金融機関等でお早目の手続きをされるのがおすすめです。最後になりますが、下記に小規模企業共済のURLを記載しますので、ご参照ください。

URL
小規模企業共済|小規模企業共済(中小機構) (smrj.go.jp)

執筆
田中会計事務所
東京都墨田区両国3-23-10 田中会計ビル
TEL 03-6659-4848 FAX 03-6659-4858
Mail yoshimit@mti.biglobe.ne.jp
所属税理士(執筆者)村上 覚
代表税理士 田中 美光

【当事務所の強み】
不動産・相続に精通した税理士として徹底した節税対策を行い、税務調査では納税者の立場にたち「闘う税理士」を実践していることから全国に評判が広がり、たくさんの不動産オーナーが顧問先に。不動産所得がある方がお客様の90%以上を占めており、資産運用によってゆとりある将来への適切なアドバイスなど、お客様が抱えるあらゆるお悩みにも豊富な経験から解決へと導いている。所長自身も収益不動産10棟・太陽光発電22基を保有しており、不動産オーナーの悩みを数多く解決。

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