生命保険を使った相続税対策【その1】
(画像=Jirsak/Shutterstock.com)
中村伸一
中村伸一
(株)マネーデザイン代表取締役 学習院大学卒業後、外資系会計事務所、銀行、証券会社を経て、2014年FP会社である株式会社マネーデザインを立ち上げ、代表取締役に就任。 フランスの経済学者、トマ・ピケティが「21世紀の資本」で述べている通り、金融リテラシーの向上が日本の経済発展につながるという信念のもと、お金に関する情報発信や講演活動を行う。特に50歳以上の層に対し、その人の持つ「人的資源」とファイナンシャル・プランニングを合わせた「リ・ライフデザイン」を提唱し、個人の住宅購入、生命保険、資産運用アドバイス、相続・事業承継、中小企業の財務相談、企業研修などを行っている。 保有資格 ファイナンシャルプランナー(AFP)、宅地建物取引士、高齢者住まいアドバイザー、 証券外務員1種、生命保険シニアライフコンサルタント、変額保険販売資格、海外ロングステイアドバイザー、日商簿記検定2級

2015年1月に相続税の基礎控除が大幅に引き下げられ、増税になりました。この税負担を回避する方法として不動産を使った相続税対策があり、一時はタワーマンションを使った節税などもはやりましたが、最近は国税当局の課税方針の変更などによって効果が薄れているとも言われています。

不動産を使った相続税対策では手続きに手間がかかる上に、管理費や租税公課などのコストもかかります。相続税の対策はできたとしても、今後の日本の人口減を鑑みると相続後の資産価値の低下も懸念されるでしょう。

不動産のほかにも相続税対策に有効な手段として、生命保険を使った対策があります。

相続税対策に生命保険を使うメリット

生命保険を使う相続税対策に面倒な手続きはほとんどありません。契約書に必要事項を記入して告知し、保険料を支払い、保険会社の承諾を得ると契約が有効になります。

保険商品は契約時点で将来もらえる金額が確定する商品がほとんどで、その資産価値はほとんど変わりません。

相続用保険は相続対策のラストリゾート的な商品です。これが普及しなかった理由は、保険と相続に詳しく、柔軟に対応できる保険募集人が少なかったことと、保険募集事業の収益性が低いことです。しかし、これを上手に活用することで相続税対策がシンプルになり、しかも確実になります。

相続に直面する人を悩ませる3つのポイント

以下の3点は、実際に相続に直面した人に多い悩みです。

納税資金の確保

相続税は現金、金融商品、不動産、自動車、書画骨董など、ほとんどすべての財産に課税されます。不動産が財産の大部分を占める場合、相続人によっては納税資金を用意できない場合もあります。

相続税評価額の問題

相続税評価額は資産の種類によって計算方法が決められており、財産評価が高くなると相続税も高くなります。現金はその金額が評価額になりますが、不動産や株式などには別の計算方法があります。評価が高い財産を保有していると納税資金に困ることがあるのです。

「争続」の問題

法定相続人の間で、相続財産を争うケースは珍しくありません。節税に注力するばかりに、遺産分割がおろそかになることが多いからです。

生命保険が相続税の3つの悩みに対応できる仕組み

これらの3つの悩みを解消できるのが、生命保険を使った相続税対策です。生命保険を使った相続税対策というと「法定相続人の人数×500万円」という非課税枠を利用するのがセオリーですが、相続に使える生命保険を活用すれば、その効果はさらに広がります。

納税資金として準備する

生命保険の受取人は、契約時に決められた金額を現金で確実に受け取ることができます。また生命保険は相続税法上では「みなし相続財産」として取り扱われるため相続財産に含まれますが、民法上では相続財産に含まれないので、受取後自由に使えるまとまったお金になります。

そのため受け取った保険金はすぐに納税資金に充てることができます。

相続税評価を下げる効果

生命保険に相続税評価を大幅に下げる効果があることは、あまり知られていません。これは、生命保険の「解約返戻金」の金額が相続税評価額そのものになる仕組みを利用するものです。

例えば被相続人が1億円の生命保険に加入し、その保険商品の解約返戻金が5,000万円であれば、相続税評価額は5,000万円です。相続発生時の解約返戻金の額にもよりますが、解約返戻金が少なくなるように調整することで、相続税の総額を下げることができます。

保険の評価額を一時的に下げるだけで、最終的に払い込んだ保険料の総額に近い金額まで解約返戻金がもらえる保険商品を選択すれば、解約返戻金の動きを上手に使いながら節税することができるのです。

遺産分割の手段

遺産分割は財産を残したい人を保険金受取人とすることで解決します。保険金は「受取人固有の資産」となるため、原則遺産分割の対象にはなりません。遺産を法定相続人に対する割合で分けたとしても、生命保険で受取人を指定しておけば、相続人はその分割割合とは関係なく現金を受け取ることができます。

遺産分割で悩ましい問題が起こりそうな場合は、生命保険を使った分割を検討してはいかがでしょうか。

生命保険を上手に活用しましょう

このように、生命保険の仕組みを上手に活用することで相続時に発生しがちな3つの問題を回避できます。次回は、もう少し具体的なケースを見ていきましょう。

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