生命保険,相続税対策
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中村伸一
中村伸一
(株)マネーデザイン代表取締役 学習院大学卒業後、外資系会計事務所、銀行、証券会社を経て、2014年FP会社である株式会社マネーデザインを立ち上げ、代表取締役に就任。 フランスの経済学者、トマ・ピケティが「21世紀の資本」で述べている通り、金融リテラシーの向上が日本の経済発展につながるという信念のもと、お金に関する情報発信や講演活動を行う。特に50歳以上の層に対し、その人の持つ「人的資源」とファイナンシャル・プランニングを合わせた「リ・ライフデザイン」を提唱し、個人の住宅購入、生命保険、資産運用アドバイス、相続・事業承継、中小企業の財務相談、企業研修などを行っている。 保有資格 ファイナンシャルプランナー(AFP)、宅地建物取引士、高齢者住まいアドバイザー、 証券外務員1種、生命保険シニアライフコンサルタント、変額保険販売資格、海外ロングステイアドバイザー、日商簿記検定2級

前回のコラムでは、生命保険を使うことによって相続時に発生する「納税資金の準備」「相続税評価を下げる効果」「財産分割の手段」といった3つの効果を紹介しました。生命保険を使った相続税対策の基本的考え方は、相続した保険金を現金として手元に残せることがポイントです。生命保険の加入時は、特に高齢者の場合、告知の問題があり病歴や入院歴があると加入が難しいケースもあります。

保険商品によっては加入できないことも事実ですが、そうでない保険商品もあるのです。今回は、相続税対策ができる生命保険を見ながら、より具体的なケースで深堀していきましょう。

現物移転パターン

「現物移転パターン」は、相続資産の評価額を下げて相続人に渡す手法です。まず生命保険と相続税の関係で重要なポイントは解約返戻金です。ここで解約返戻金をおさらいしてみましょう。通常、保険契約者が自ら契約を解約した場合、保険契約者に対して払い戻されるお金のことを解約返戻金といいます。解約返戻金がつく保険の種類は、主に貯蓄性のある終身保険や養老保険です。

しかし解約のタイミングによっては解約時点まで払い込んだ保険料のすべてが戻ってこない場合もあります。通常は年数が経過すればするほど解約返戻金の返戻率が上昇し、払い込んだ保険料の累計を上回る商品も少なくありません。これは保険会社の保険商品ごとに異なるため、実際に設計書を作成しないと解約返戻金の推移は分かりません。

さらに生命保険を相続税で使う場合、解約返戻金が相続税評価額となります。そのため解約返戻金の仕組みを利用して、ある程度の現金を生命保険に変え一時的に相続税評価額を下げるのです。その下がったタイミングで相続が発生したときには、保険契約そのものを低い解約返戻金のまま「現物」で相続人に移転します。

この場合、注意を要するのは現金で渡さず「生命保険現物」で渡すということです。そのため一般的に相続税の控除として使える「500万円×法定相続人数」の非課税枠は使えません。例えば5,000万円の現金を解約返戻金がつく一時払い生命保険に投じた場合、数年後に一時的に解約返戻金が500万円になったとします。

そのタイミングで相続が発生したときは、基礎控除以内となりますので相続税が発生しません。それが数年後には元の5,000万円まで戻る生命保険もあるでしょう。現物移転パターンでは、保険の加入方法が鍵となり被相続人、相続人の2人で保険の契約を行います。被保険者を子どもとすることが最大のポイントといえるでしょう。それをまとめると以下の通りです。

相続発生前相続発生後
契約者子ども
被保険者子ども子ども
保険受取人孫・親族

これを見て分かる通り相続発生前は、契約者は親で保険料も負担します。いざ相続が発生した時点で保険契約そのものを子どもが引き継ぐこととなるのです。前述した通り相続発生時の解約返戻金額が生命保険の財産評価額となりますので、その時点では評価額相当額を相続税に含めて支払います。相続発生後に「生命保険を現金化するか」「そのまま契約を続けるか」は子どもが判断するのが特徴です。

そのまま持ち続けて解約返戻金が元本まで戻るタイミングで解約すれば、現物移転パターンを使った節税は終了します。

現金移転パターン

「現金移転パターン」は、現預金を生命保険に変えてそれを増やして相続人に渡すパターンです。しかし近年の低金利下においては日本円で増やすことは難しいといえるでしょう。そのため例えば外貨建て(米ドル・豪ドル)一時払い保険を使って増やすことが主流です。これは小さな掛け金を増やすことで納税資金を準備するスキームといえるでしょう。

ここでのポイントは「いかに元本を増やすことができるか」にかかっているので円より金利の高い米ドルや豪ドルが使われています。相続が発生した時点で米ドルや豪ドルのままで受け取ることが可能です。そのため相続時点で為替レートの損益分岐点を見て円高になっていれば外貨のまま受け取ることもできます。そして円安になった段階で円に交換すれば為替リスクを減らすこともできるでしょう。

また保険にはレバレッジ効果があります。例えば毎月3,000円の支払いで年間3万6,000円ですが、これが保険金として払われるケースでは何倍にも増えます。特に定期保険といった保険期間が決まっている商品ですと支払った保険料に対して受け取れる保険金が大きくなりますので、その仕組みを使うのです。

例えばある程度の資産家の人なら1億円の保険金が出る定期保険に加入し保険料を毎月10万円支払うとしましょう。相続発生のタイミングが早ければ早いほどレバレッジ効果が効くということになります。もちろん受取保険金には税金がかかるため、手残りの金額で考えることが必要です。次回は、法人保険を使ったパターンと暦年贈与をかませたパターンを紹介します。

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