オーストラリアの山火事、インドネシアの洪水、日本の暖冬。気候変動の影響を感じずにはいられないこの頃、環境への関心がますます高まっています。今日は、建物を通じて環境に貢献するグリーンビルディングについてみていきましょう。
グリーンビルディングとは?
グリーンビルディングとは、そのデザイン、建設、または運用の中で、気候および自然環境へのネガティブな影響を排除し、ポジティブな影響を作る建物です。グリーンビルディングは、貴重な自然資源を守り、生活の質を向上させるものです。
グリーンビルディングの特徴
建物が「グリーン」となるための主な特徴は以下の通りです。住宅、オフィス、学校、病院、コミュニティセンター…どんな構築物であっても、このような特徴を含んでいる場合には、グリーンビルディングとなりえます。
- エネルギー、水、その他資源の効率的な利用
- 太陽エネルギーなどの再生可能エネルギーの使用
- 公害・廃棄物削減、再利用や資源再生などの促進
- 良質な屋内空気質
- 無害で、倫理的、かつ持続可能な資材の使用
- デザイン、建設、運用における環境への配慮
- デザイン、建設、運用における入居する人々の生活の質への配慮
- 環境の変化に対応できるようなデザイン
ただし、国や地域で気候条件も異なりますし、独自の文化や伝統もあります。また、建物タイプや築年数、または環境、経済、社会的な優先順位づけなどによって、特徴も変わってきます。よって、すべてのグリーンビルディングは同じではなく、同じである必要もありません。上記のような特徴すべてが、グリーンビルディングへのアプローチとなるのです。
グリーンビルディングのメリット
では、グリーンビルディングにすると何がいいのでしょうか。世界グリーンビルディング協会(World Green Building Council)は、グリーンビルディングのメリットについて、3つのカテゴリー(環境、経済、社会)に分けて説明しています。
1.環境
気候および自然環境に関するメリットです。グリーンビルディングは水、エネルギー、天然資源の使用を抑えることで、環境へのネガティブな影響を抑える、または排除するだけでなく、自力でエネルギーを発生させたり、生物多様性を向上させたりすることで、建物単位、または都市単位で、環境にポジティブな影響を与えることができます。
▶世界レベル:
- 建築セクターには、他の主要なセクターと比べると、グリーンハウスガス削減のためのポテンシャルがたくさんあります。-国際連合環境計画(UNEP)、2009年
- このグリーンハウスガス排出削減ポテンシャルは、エネルギー効率、燃料の転換、再生可能エネルギーの利用などを通じた建物内での直接的な対策を通じて、2050年までに84ギガトンものCO2になるといわれています。―UNEP、2016年
- 建築セクターは、パリ協定での産業革命前からの温度上昇を2℃未満に抑えるという目標のために、2050年には50%以上のエネルギー節約ができるポテンシャルがあります。-UNEP、2016年
▶建物レベル:
- オーストラリアのグリーンスター認証を達成するグリーンビルディングは、平均的なオーストラリアの建物より、グリーンハウスガスの排出量が62%減、業界最低限の要件を満たすように建てられていれば、飲料水使用量を51%減できることが証明されています。
- インド・グリーンビルディング協会(IGBC)認証を受けたグリーンビルディングは、インドの従来の建物と比較して、エネルギー使用量40~50%減、水の使用量20~30%減となっています。
- 南アフリカのグリーンスター認証を受けたグリーンビルディングは、業界スタンダードと比較すると、毎年平均30~40%のエネルギーおよび二酸化炭素排出と、毎年20~30%の飲料水を節約できることが分かっています。
- 米国およびその他の国においてLEED認証を受けたグリーンビルディングは、グリーンビルディングでない建物と比べて、エネルギー消費量25%減、水使用量11%減できることが分かっています。
2.経済
グリーンビルディングは、多くの経済的・財務的なメリットを与えてくれます。このメリットは、立場によって異なります。たとえば、テナントや家庭では、エネルギーや水の効率的な使用ができることで光熱費を削減することができます。建物のデベロッパーは、建設費を下げ、不動産価値を高めることができます。建物のオーナーは、これらの長期的なメリットを背景に稼働率を上げ、維持することができます。そして、仕事も生まれます。
▶世界レベル:
- 世界のエネルギー効率化の対策を行うことで、エネルギー支出において2800億~4100億ユーロ(約33兆円~49兆円)の節約ができます(米国の年間の電力使用量のほぼ2倍に相当)。-欧州委員会、2015年
▶国レベル:
- カナダのグリーンビルディング業界は、2014年、GDPのうち234.5億ドル(約2兆円)と約300,000のフルタイムの仕事を生みました。―カナダ・グリーンビルディング協会/ザ・デルファイ・グループ、2016年
- グリーンビルディングは、2018年までに米国の仕事の330万以上を占めるとみられています。―USグリーンビルディング協会/ブーズ・アレン・ハミルトン、2015年
▶建物レベル:
- グリーンビルディングは、新築か改装かにかかわらず、従来の建物と比べて資産価値が7%上昇すると、建物のオーナーたちは報告しています。―ドッジ・データ&アナリティックス、2016年
3.社会
グリーンビルディングは環境、経済だけでなく、社会にもポジティブな影響をもたらすことがわかってきました。グリーンオフィスで働く人々、グリーンホームに住む人々の健康とウェルビーイングに関わるものです。
- グリーンで換気の行き届いたオフィスで働く人々は、認知スコア(脳の機能)において101%増を記録しています。―ハーバード大学公衆衛生学部/シラキュース大学センター・オブ・エクセレンス/SUNY州立医科大学、2015年
- 窓のあるオフィスで働く従業員は、毎晩平均46分多く眠れています。―米国睡眠医学会、2013年
- 屋内空気質がよい(CO2と汚染物質の濃度が低く、換気率が高い)と、パフォーマンスが最大8%あがります。―パクおよびヨン、2011年
気候変動への対応や経済成長の加速だけでなく、グリーンビルディングを利用する人々の健康やサスティナブル(持続可能)で活気あるコミュニティづくりなど、さまざまなメリットをもたらすグリーンビルディング。世界銀行グループの国際金融公社(IFC)もまた、2050年までに多くの企業や政府がカーボン・ニュートラルを目指すにつれ、グリーンビルディングは低炭素経済の成長を促し、クリーン・エネルギーへ移行するのに重要な役割を果たすとしており、今後ますます注目が高まりそうです。
※円表示は、記事執筆時のレートで換算した参考値です。
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