コリビングとは?
コリビング(co-living)とは、複数人が一つの場所に住み、交流し、共に働くライフスタイルのための住まいです。ホステルや寮などを想像する方もいらっしゃるでしょう。最大の違いは、個人の居住空間のプライバシーが守られながらも、交流、仕事や余暇のための共有スペースがあるところで、若い働く世代を念頭においてデザインされています。
コリビングスペースの多くは企業によって運営されています。都市によっては、一つの企業が複数物件運営していることもあります。もともとは、物価の高い都市に職を探しに移り住む若い世代のニーズに応えて発生したものだと言われています。コリビングは、興味や目的、価値観を共有する住人同士が、大きな家族のように暮らす、現代の住まいの新しい形です。世界中どこでも実現可能ですが、今のところ特に都市部でトレンドとなっています。
コリビングは、シェアリングエコノミーの考え方に基づいています。住人は、各々のベッドルームとバスルームがありながらも、キッチンやリビングスペースといったエリアを共有します。費用をすべての住人で割ることになるので、経済的な選択肢として考慮する人もいます。コリビングスペースに支払うお金は、都市によって異なりますが、従来のようにアパートを借りるより安く上がる場合がほとんどです。
なぜコリビングが人気なのか?
コリビングが浸透してきたのには、いくつかの要因があります。
魅力的なアメニティがあることと、共通の関心を持つ人たちと暮らすという楽しさが最大の人気の理由です。人と一緒にいることが好きな人にとって、コリビングは理想的です。ソーシャルイベントなどの交流を通して、新しい友だちを作ることができるだけでなく、ひいては新しいビジネスが始まることだってあるのです。
他には、金銭的な負担を減らせること、コミュニティサポートやグループ活動に参加できること、帰属意識が持てることなどもコリビングの人気の理由としてあげられています。
コリビングに特に魅力的に感じるのは、若い世代です。特にITを活用して仕事をしながら旅をするライフスタイルを選択するデジタルノマドと呼ばれる人々にとって、コリビングスペースなら住宅ローンの心配をする必要がありません。このようなライフスタイルは、近年よく聞かれるようになったアジリティ(機敏性)に重きを置いています。ローンや長期のリースに縛られることなく、場所から場所へと移動できることに解放感を覚える人も多くいます。
コリビングは、デジタルノマドやミレニアル世代が直面する問題の多くを解決してくれます。新しい街に移り住むと、ふつうは1年間の賃貸契約をし、家具をそろえ、電気や水道などの手続きをして、1年たったら引っ越すか、または契約更新することを選択することになります。
しかし、コリビングスペースの場合、賃貸契約や最低契約期間などがありません。よって、仕事や個人の都合で、街から街へと引っ越しするような人々にとってはぴったりの場所です。ほとんどの場合、敷金などもなく、電気や水道の手続きをする必要もありません。共同生活を基本としているため、必要なものはすでに揃っています。また、多くが家具付きなので、引っ越し業者を雇ったり、家具にお金をかけたりする必要がありません。コリビングスペースに住み、コワーキングスペースを利用して仕事をすることで、生産性がぐっと上がることでしょう。
東南アジア最大のコリビングスペースがシンガポールにオープン
2019年9月5日、東南アジア最大のコリビングスペースがシンガポールにオープンしました。ミレニアル世代の間で急速に成長するトレンドの波に乗ったものです。
デベロッパーであるキャピタランド社の宿泊事業部門であるアスコット社は、メディア向けの声明で、シンガポールのフナン(Funan)に総床面積約11,240㎡、アパートメント279戸412室の新築9階建てのlyf Funan (ライフ・フナン)をオープンしたことを発表しました。
この新しいlyf(ライフ、”live your freedom(自由を生きる)“の頭文字をとっている)は、ノースブリッジロードにあるキャピタランドの総合開発フナンの一部で、他にオフィスブロック2つと改装を経て開店したフナン・モールがあります。
MRTシティーホール駅とラッフルズプレイス駅に近いこのライフ・フナンは、「ミレニアルとミレニアル的思考の人々のための、ミレニアルによる管理」を目玉としています。
生まれたときから携帯電話やPCなどインターネットの整った環境に慣れ親しんでいるデジタルネイティブに対応すべく、アプリをダウンロードすることで、スムーズな支払い、予約からチェックインまでを行うことができるようになっています。また、キーカードではなく、自身の携帯電話を使って部屋の開錠が行えるということです。
有料で家事を頼むこともでき、共有キッチンで一緒に食事を作るなど、ソーシャルイベントに参加することもできます。
ライフ・フナン・シンガポールは、コミュニティー管理者、街やグルメガイド、バーテンやイベントオーガナイザーなどの役割をする「ライフ・ガード」と呼ばれるミレニアル世代によって管理されています。
建物には、共有スペースがいくつもあります。これには、ワークショップやソーシャルイベントを行うエリア、コインランドリー、キッチン、ジムなどが含まれており、ここで入居者は交流を行うことができます。
入居者は、毎週ワークショップにも参加することができます。Tedトークからクラフトワークショップ、ソフトウェア関連プロジェクトのイベントであるハッカソンまで、週替わりでさまざまなソーシャルプログラムが用意されています。
価格は部屋タイプによって異なります。「One of a Kind(スタジオ)」ルームは、18平米、最大2名宿泊可能で、一泊150シンガポールドル(約12,000円)、一か月3,060シンガポールドル(約242,000円)*となっています。
ゲーム好きには「lyf Style」ルームもよいでしょう。同じく18平米で、最大2名宿泊可能、プレイステーションが用意されているこちらのお部屋は、一泊170シンガポールドル(約13,000円)*となっています。
短期の宿泊場所を求める旅行者や事業主も利用することができます。
アスコット社は、この新しいlyfブランドの立ち上げとなるライフ・フナン・シンガポールを皮切りに、2022年までにバンコク、福岡、クアラルンプール、シンガポール、セブ、そして上海にlyfブランド拠点のオープンを計画しています。
さらに、オランダ、英国、オーストラリア、韓国などでもlyfブランドを広めていきたい考えです。
コリビングはシンガポールにすでに根付いてきています。2016年に市場参入した事業者Hmlet(ハムレット)社は、ジョーチアット、シェントンウェイなどシンガポール内の複数ロケーションに拠点を構えています。
*日本円は記事執筆時の為替レートで換算した参考金額です。
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