新型コロナウイルスの感染拡大は、これまでよりも多くの情報にあふれ、中には不要な情報をもとに、余計な不安を抱いてしまう不動産オーナーの方もいるでしょう。経済学者の小幡績(おばた せき)先生に“余計な不安”を抱かないために、どのような情報を参考とすればいいのかをお聞きします。
━━日々、ニュースなどで新規感染者数の発表などを目にします。これらの情報は直接経済に影響を与えるか分からなくとも、余計な不安をあおるものも存在します。実際の経済状況を読み解くには、どのような情報をチェックすればいいのでしょうか。
まず、SNSなどの情報は確認しなくていいものです。ネットニュースに関しても近いものがあるかもしれません。
専門家ではない人の意見や主張が主流となるため、必要のない不安をあおっているものが多いという印象です。
また、各国のメディアについても、日本のメディアは情緒的、欧米のメディアは中立的、という見解がありましたが、今回の事態を見ると後者も非常に感情的だということが分かってきました。
冷静な視点が必要な状況では、いずれもあまり参考にはできません。
自分自身の考えが一番大切であるとは思いますが、指標にするべき情報があるとすれば、一次情報、つまり政府の発表です。
政府がミスリードするときもありますが、そもそも信用できない組織ではありません。
もともと、私自身も大蔵省の人間であったこともあり、官僚独特の言い回しや発想というものに慣れている、ということもあるかもしれませんが、1つの政治判断にはさまざまな要素が影響するため、発表されたことを表面上のみ理解するだけでは実際の真意を読み解くことができない場合もあります。
まして、伝言ゲームのように他者の主観が交えられるSNSでは最初に説明されたものと異なる意味に捉えられることも多くあります。
だからこそ、一次情報を参考として、自身の考えを固めることが重要です。
すべての発表を追っていくのはむずかしいと思うので、気になるトピックについてはまずネットなどで政府が直接発表した資料の中でどのように表現されているのかを確認してみましょう。
そして、難しい部分は政府に直接取材をしている新聞などの媒体から補足していくようにしていくのがいいでしょう。
━━テナントとして物件を賃貸に出している不動産オーナーの中には、家賃の減額など、世の中の動きに同調した対応を検討している方もいると思います。こういった同調についてどのように考えられていますか。
まったく気にする必要はありません。
たとえば、外出自粛というのは今回のお話とは別です。世の中全体で一緒の行動をすることで効果を出そうとしているものに抗うというのは、あまりオススメできません。
ただ、賃料においてはご自身のビジネスの一環ですから、利益を出して事業を存続していくことが重要です。
賃借人から賃料について相談があれば検討するべきだと思いますが「ほかのオーナーもやっているから」と思い悩む必要はありません。
これは賃料だけではなく、ビジネス全体に言えることです。自身の利害関係者以外の情報であれば、冒頭で述べたように政府発表などに従いながら判断していきましょう。
今回の感染拡大のように、これまで起きたことのないような事態においては議論を紛糾させることを楽しむ人がいたり、経験がないからこそ周囲に合わせようとしてしまう人もいるかもしれません。
こういう場合は、シンプルに考えて行動しましょう。
まずは目の前の自身のビジネスについてミクロ的に観察します。実際に賃貸に出している物件はどの程度需要があるのか、テナントであればニュースではお客さんが少ないと言っているが実際にはどうなのか。
客数が減っているお店もあれば、そうではない業種もあるはずです。そういった業種にテナントを貸している場合は、そもそもニュースの情報は必要ないですよね。
その後、世の中では大きな流れとしてどのような行動をしているのかをマクロ的に確認してもいいでしょう。
別の記事でも述べましたが今回の感染拡大ではストックに影響がないために、経済が回り出せば比較的早い段階で一定の水準に戻ります。
シンプルにミクロとマクロの視点で捉えることで、余計な不安を抱くことなく、正しい判断を下すことができるようになります。
小幡 績
東京大学を卒業後、大蔵省(現 財務省)に入省。ハーバード大学にて経済学博士号を取得し、現在は慶應義塾大学ビジネス・スクールにて准教授を務める。専門は行動ファイナンス、コーポーレートガバナンス。著書に「すべての経済はバブルに通じる」「リフレはやばい」「GPIF 世界最大の機関投資家」など。
>>続きはこちら「小幡績インタビュー#3 アフターコロナ これから気になる日本経済のこと」
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