慶應義塾大学ビジネス・スクール准教授 小幡 積が語る!コロナが変える日本経済と不動産市場への影響

2020年も後半にさしかかり、日本経済を取り巻く状況はさまざまに変化しています。そんな中、不動産オーナーや投資家のもっとも気になることは、これからの日本経済のことでしょう。これから、経済はどのようになるのか、経済学者の小幡績(おばたせき)先生にお聞きします。


━━小幡先生から見て、今後不動産オーナーや投資家が気にしたほうがいいと考えられる経済的要素はどのようなことでしょうか。

新型コロナウイルスの感染拡大が沈静化した後に、元の経済状況に戻る訳ではないということは念頭に置いておいたほうがいいでしょう。

別の記事にて述べましたが、感染拡大によってもともと想定されていたリーマン・ショック後に発生していたバブルの崩壊が早まりました。

そのため、今後は崩壊後の調整局面に移行します。不動産価格など十分に下がっていないと思われるのであれば、調整が落ち着くまで待ちつつ、新たな購入物件を探すべきです。

コロナウイルスに関連した要素は大きく取り上げられたため、沈静化することで経済状況が上向くのではと焦って購入する必要はありません。

長期的に見るとバブル崩壊による影響のほうが大きいはずです。今後も注意深く市場を観察する必要があります。

━━感染拡大前には米中の経済摩擦が大きく取り上げられていました。今後、同国の関係は日本経済にどのような影響を与えるでしょうか。

米中の関係は、これまでよりも悪化するでしょう。

貿易については感染拡大による影響からは一定の回復を見せるでしょうが、もともとのベースからは減少し、トランプ大統領が再選するかどうかに関わらずアメリカの経済は高い位置からの右肩下がりになることが想定されます。

そういう意味では、世界経済は実態経済の面で感染拡大前の状態に戻ることはありません。

一方で、株式相場は各国の財政出動に端を発する異常な過剰流動性が進みます。そのため、米中の関係悪化があったとしても、日本の株価が極端に落ちるということはないでしょう。

ただ今後、今回と同じような事態が発生した際には再び財政出動が起こり経済破綻を迎えるのではないかという不安はあります。

いつ、どうやって、という部分の断定はできませんが、今回の政策によって日本の財政はある程度圧迫されます。そこからいかに立ち直るか、また財政破綻という危機があるということも気にしておいたほうがいいでしょう。

━━現在の日本企業の多くはテレワークの導入、時差通勤など、働き方に関する変化に挑戦しています。これらは、今後の日本経済に影響を与えていくでしょうか。

部分的に極端な変化をさせる企業もあれば、そうではない企業も引き続き残るでしょう。

中小企業であれば社長の一言で大きな変革を起こすこともできるでしょうが、大企業で全社員が引き続きテレワークを続けるというのはもう少し先のことになりそうです。

もともと、自分の机を持たないフリーアドレスなどは感染拡大前から少しずつ普及していました。テレワークも同様に、少しずつ言葉が浸透していましたよね。

今回のことでゆっくり進んでいたものが、少し早めに普及しだした、ということではありますが、これが日本経済に影響を与えるほど主流になるにはまだ時間が必要になると思います。

━━今後、日本経済の新たなフロンティアとして期待されるものはどのようなものでしょうか。

今後、フロンティアという考え方自体がなくなるかもしれません。

新型コロナウイルスの感染拡大は、必要なものとそうではないものの区別を明確にしたとも言えます。

元々、自給自足で生活していたものが、より利便性を高めるため国民それぞれが別々のものを生産して互いを補い合いながら社会が形成されました。しかし、いつのまにか必要のないものまで大量生産するようになっています。

外出自粛によって消費者がこれまで購入してきたものの中には、必要のないものであったと気づくものも多かったと思います。

原点回帰ですが、不要不急のうち、不要なものはいったん気づけば多くの人は消費しなくなっていく。

たとえば、夜の店に一人で通いつめる人、パチンコがないと生きて行けない、そういう人たちは継続しますが、付き合いで行っていた人、のりでみんなで行っていた人、なんとなくやることがないから行っていた人、こういう人たちは行かなくなります。

そして、なんとなく行っていた人が多数派だと思います。そういうサービス、業種は需要が大きく減ると思います。

家族との安らかな時間、おいしい食事、そういうものは不可欠であったことに気づき、原点回帰、そこに重点、お金、時間を投入する、豊かな自給自足の世界に戻っていくのではないかと思います。

もしくは、現代社会のようなシステムをまったく導入していないアフリカなどに新たなシステムを構築することでフロンティアとする話も有識者から出てきています。

いずれにしろ、新型コロナウイルスの感染拡大よりも、バブル経済が崩壊したという事実をふまえて、市場への注意を払うことが重要です。

小幡 績
東京大学を卒業後、大蔵省(現 財務省)に入省。ハーバード大学にて経済学博士号を取得し、現在は慶應義塾大学ビジネス・スクールにて准教授を務める。専門は行動ファイナンス、コーポーレートガバナンス。著書に「すべての経済はバブルに通じる」「リフレはやばい」「GPIF 世界最大の機関投資家」など。

>>「小幡績インタビュー#1 日本経済の新型コロナウイルス感染拡大前と拡大後で変わること」

>>通常は見ることのできないマンション開発の裏側を大公開!

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