日本政府財政赤字
(画像=キャプテンフック/stock.adobe.com)

日本政府は、国民にも財政状況がわかるようにYouTube動画を作成し、現状を広く伝えようとしています。財務省曰く、「2015年の日本の一般会計予算は、家計に例えると『月50万円の収入で支出は80万、8,400万円のローンを抱えている』状態」。日本の財政は、本当に危機的な状況なのでしょうか。詳しく説明します。

日本政府の借金ってどんな状態?

まずは、2020年の歳入・歳出額を見ていきましょう。

2020年の一般会計の歳出(支出)総額は128兆3,793億円、歳入(収入)のうち税収が63兆5,130億円で、その他の収入が6兆5,888億円です。歳出総額に対して、国の収入の柱となる税収が半分程度しかありません。その他の収入を合わせても歳出総額には届かないため、残りは公債金、つまり借金で補っている状況です。

財政赤字による公債金は年々増えており、2020年の普通国債残高は932兆円に上ります。これを国民全員で分けると、1人当たり約750万円の借金となり、勤労者世帯の平均年間可処分所得である約546万円を大きく上回ります。

リーマンショックの影響で悪化した財政状況は回復傾向にあるが、いつ明けるのかわからないコロナ禍によって先行きは不透明です。この状況で「国の財政赤字は深刻な状態」と政府にいわれれば、国民のほとんどが危機感を覚えるでしょう。

政府の借入先のほとんどが国内の金融機関や企業という現実

日本政府の借金の9割は、国内の銀行や企業、年金基金からの借り入れです。家計で考えると、「父親(政府)が配偶者や子ども(国民)からお金を借りている」状況です。前述の財政状況でいえば、家計の支出は月100万円で、収入は50万円。毎月家族から50万円を借りて、利息分だけ返して新たに借金を繰り返していることになります。

父親は借金の利息を配偶者や子どもに支払い、お金が足りなくなると配偶者や子どもからさらにお金を借りているのです。お金を他人(諸外国)から借りているのなら事態は深刻ですが、家庭内での貸し借りなら母親や子どものお金がある限り破産することはないでしょう。

父親が配偶者や子どもからお金を借りられるということは、配偶者や子どもは貸せるだけのお金を持っている」とうことです。配偶者や子どもは父親にお金を貸してもなお、銀行に預けられるだけの現金を持っています。

万年金欠の父親を抱えて、家族はどうしたらよいのか

父親が万年金欠の状態にあるのは「家族の生活費(社会保障費など)を支払うため」です。つまり、家族が力を合わせて支出を抑えることができれば、借金を増やすことなく生活することもできるでしょう。しかし、どのようにして支出を削っても、最終的に「家族(国民)が困る」という未来は変わりません。

  • 支出を削ると社会保障費などが削減されてしまう
  • 収入を増やそうとすると増税しかなく、国民の資産が減ってしまう

政府と国民が痛みなく財政赤字を乗り切る方法は、まだ見つかっていません。高度経済成長期のように、日本で生まれたモノやサービスから得られる利益が大幅に増えれば黒字に転じることもあるでしょうが、実際は難しいでしょう。

父親がお金を借りられるのは、家族にお金があるときだけです。日銀が2021年3月17日に発表した「資金循環(2020年第4四半期)」によると、家計金融総資産額は1,948兆円。また、2020年7月に財務省が公表した「日本の財政関係資料」によれば、国および地方の長期債務残高は1,182兆円に達する見込みです。

国民の総資産(家計金融総資産)が国の債務額を上回っている間は、低リスクで借金を重ねられます。しかし、労働人口が減少していく中で家計金融総資産が増えることは期待できず、財政破たんを避けるために国は「赤字を減らし黒字化する努力」が求められます。

「黒字化」の年がどんどん遠ざかっている日本

政府は2025年までに財政を黒字化することを目指していましたが、コロナ禍によってそれがいつ実現するかわからない状況です。

現在の日本の財政は、「家族内のお金の貸し借りなので破たんの心配はないが、家計を黒字化できるのはいつになるかわからない」ということです。

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