少子高齢化や人口減少、空き家率の上昇など、不動産投資にネガティブなニュースが続いています。現代の日本における「大空室時代」を乗り越えるために、不動産投資家は従来とは異なる発想が求められているのです。近年、消費者の嗜好やトレンドは「コミュニティ」に向かっています。そこで、今回は不動産投資に不利な状況下で“満室経営”を維持するために欠かせない「コミュニティ」について考えてみましょう。
2018年以前とは全く異なるこれからの不動産投資とは?
未来を考える前に、まずは過去20年間を振り返ってみましょう。かつては3LDKなどのファミリー向け賃貸マンションが多かったのですが、2000~2010年の賃貸マンション・アパートでは、1LDKや2LDKなど部屋数の少ない物件が増えました。変化の要因として、核家族化が進み、単独世帯や夫婦のみの世帯が増えた点が挙げられます。2010年以降は1戸あたりの小型化がさらに進んで、1部屋20平方メートル前後の1R・1Kなどが増えました。これまでの賃貸住宅のターゲット層の変遷を見ると、
1990年代:核家族
2000年代:子なし夫婦世帯
2010年代:単独世帯
と変化してたことがわかります。この流れは、「日本全体の人口は減っても単独世帯は当面の間、増え続ける」という世帯推計に基づいたものでしたが、現在は単独世帯の数も2030年以降に減少に転じるとされています。さらに、相続税対策によるアパート数増加の影響もあり、もはや世帯人数という観点だけで戦略を立てるのは難しい時代なのです。
2019年以降は「コミュニティ」がキーワード
ソーシャルネットワークの巨人Facebookは、2017年6月に新しいミッションとして「コミュニティづくりの力を人々に提供し、世界のつながりを強める」ことを発表しました。また、「宇宙兄弟」「ドラゴン桜」などのヒット作を送り出した編集者・佐渡島庸平氏も、著書の中で、「今、多くの人が抱えているのは、関係性を築きたいという欲望だ」と語っています。両者に共通するキーワードは、「コミュニティ」です。より多くの人が、自分が属する場を求めているのかもしれません。
コミュニティの需要が高まる一方、家族を持つ人は少なくなってきています。国立社会保障・人口問題研究所が発表している「人口統計資料集(2017)」によると、2015年度の50歳時の生涯未婚率は、23.4%にまで高まっています。そのため、家族を念頭に置いた従来の不動産投資は先細りしているといえるでしょう。家族ではなくコミュニティをターゲットとすべき時代に私たちは突入しているのです。
新しい不動産投資の手法
ソーシャルアパートメント
そんな中、ターゲットをコミュニティに絞った不動産投資の手法が次々と登場しています。そのひとつがソーシャルアパートメントです。ソーシャルアパートメントとは、一言でいえば「プライベート空間を確保したシェアハウス」のことです。入居者は、一人暮らしの気楽さを確保しながら、広いダイニングやラウンジなどの共通空間を利用することができます。
ソーシャルアパートメント住人の一番のモチベーションは、「似たような価値観の友人を作ることができる」点です。孤独になりがちな現代の都市生活者の欲求を的確に捉えたコンセプトといえるでしょう。
コワーキングスペース
コワーキングスペースとは、イベントスペースや会議室を備えたシェアオフィスのようなものです。ソーシャルアパートメントと同様に、「似たような価値観の仕事仲間を作ることができる点」が魅力です。ただし、コワーキングスペースはコストも多くかかるため、コンスタントに利益を出すことは難しいケースも多いようです。マンションの1室などを改装して時間貸しする「無人貸し会議室」の方が比較的黒字化しやすい形態といえます。
他にも古い団地を再生して住人同士のつながりを回復しようとしている千里ニュータウン(大阪府豊中市)や、ハラッパ団地・草加(埼玉県草加市)などの事例もあります。こういった「コミュニティ」を軸に、住人同士の結びつきを強めている共同住宅は増加傾向にあります。
まとめ
2019年以降の不動産投資は、「コミュニティ」という要素を抜きにしては成り立たなくなっていきます。とはいえ、「コミュニティ」に特化した不動産運営に本格的に取り組むことは、サラリーマンの副業としては負担が大きいです。一つの案として、不動産投資に「ゆるいコミュニティ」を取り入れることが考えられます。
たとえば、サーフィンや自転車など特定の趣味をコンセプトとした内装・設備で統一するのも方法の一つです。また、猫好きが集まるような設備を備えたシェアハウスを運営したりすることも、「ゆるいコミュニティ」の一種といえます。画一的なアパートとは、一味違った「ゆるいコミュニティ」をコンセプトとして掲げることで満室経営へ近付くことは充分可能です。