「リスクに備える方法」というと保険が一般的です。しかし最近では不動産投資と団信(団体信用生命保険)の組み合わせでリスクに備える人が増えてきています。本記事では、不動産投資における団信の仕組みや種類、メリット・デメリット、利用時の注意点などについて分かりやすく解説します。
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<目次>
1.リスクに備える方法は本当に保険だけ?
2.団信の仕組みと3つの種類
2-1.団信の基本的な仕組み
2-2.種類①:基本の団信
2-3.種類②:3大疾病特約付の団信
2-4.種類③:8大疾病特約付の団信
2-5.そもそも団信加入は強制なのか?
3.不動産投資で団信に加入するメリット・デメリット
3-1.団信の3つのメリット
3-2.団信の3つのデメリット
3-3.団信に加入前・加入後で注意すべきポイント
・3-3-1.団信加入前の注意ポイント
・3-3-2.団信加入後の注意ポイント
・3-3-3.団信の金利は経費算入できる?
4.長期融資×団信で高い保険料をカバーすれば家計が潤う
1.リスクに備える方法は本当に保険だけ?
「万一の場合のリスクに備えたい」と考えたとき真っ先に浮かぶのは保険です。保険料を負担することで死亡保険や医療保険など不測の事態に備えることができます。しかし毎月の支払う保険料が負担に感じることも少なくありません。掛け捨ての保険であれば万一の事態が起こらなかった場合は、「完全に払い損」です。
貯蓄性の高い保険の場合は払い損にはならないものの保険料が高くなるため、ますます家計を圧迫してしまうでしょう。しかしリスクに備える手段は、保険だけではありません。不動産投資と団信の組み合わせなら無理なく保険料を払いながら収益や資産を手にすることができます。もちろん一概に不動産投資と団信の組み合わせが保険より優れているというわけではありません。
大切なのは、選択肢を知って自分に合った方法を選ぶことです。保険料の支払いを負担に感じている人や将来の生活に不安がある人は、一度不動産投資と団信の組み合わせを検討してみることをおすすめします。そのためにはまず団信のことを詳しく知ることが必要です。
2.団信の仕組みと3つの種類
一口に団信といって保障内容や金利が違うため、じっくりと考えて加入することが大切です。
2-1.団信の基本的な仕組み
団信はローンの返済中に債務者(契約者)が亡くなったり高度障害状態に陥ったりしたときにローンの残額を保険会社から銀行に支払う保険です。団信といえば住宅ローンを借りるときに加入するイメージがある人もいるかもしれませんが不動産投資においても団信への加入はできます。住宅ローンですでに団信に加入している場合でも不動産投資のため新たに団信に加入することが可能です。
団信に加入しておけば万一の事態になっても家族に返済の負担を負わせることなく資産を遺すことができます。そのため団信を生命保険の代わりとして活用する人は少なくありません。契約者に万一のことがあったときに世帯の収入が途絶える(あるいは激減する)ことは大きな不安材料です。しかし団信に加入することで毎月の生活費(家賃収入)を遺すことができます。
魅力のある団信ですがいくつか種類があり主に下記の3タイプがあります。
2-2.種類①:基本の団信
団信の基本保障内容は、ローンの契約者が亡くなったり高度障害状態になったりした際にローンの残額が0円になるものです。高度障害状態にはいくつかの基準がありますが、ある団信の一例では両目の視力を永久に失った場合(矯正視力0.02以下)、言語またはそしゃくの機能を永久に失った場合などが該当します。
なお金融機関によって団信の条件は異なりますが金利上乗せなしで加入できることも多い傾向です。
2-3.種類②:3大疾病特約付の団信
契約者がより一層手厚い保障を求めるときに加入するものです。団信の基本保障の「亡くなるまたは高度障害状態になる」に加えて「3大疾病(がん、脳卒中、心筋梗塞)」になった場合にもローンの残債が0円になります。ただし3大疾病になれば自動的に保障されるわけではありません。団信が契約書で定める「所定の状態」になったときだけが対象です。
ある団信の一例では、急性心筋梗塞の場合「60日以上の労働制限を必要とする状態が継続したとき」「治療のために手術を受けたとき」などが該当します。特約付の団信を選択される人は「所定の状態」がどんな内容なのかを確認してから契約するのが賢明です。基本の団信と違い3大疾病の団信では加入時に「上乗せ金利」が必要になります。3大疾病団信の上乗せ金利は、+0.25%前後の設定です。
2-4.種類③:8大疾病特約付の団信
3大疾病特約付よりもさらに数多くの病気に対応する団信です。具体的な疾病として糖尿病や高血圧性疾患、肝硬変、慢性腎不全、慢性膵炎などが挙げられます。3大疾病特約付きの団信と同様に「所定の状態」になった場合に保険会社によってローンが完済されるのが特徴です。8大疾病団信の上乗せ金利は、+0.3%前後の設定です。
8大疾病以外にも「がん保障団信」「11疾病保障付団信」なども登場しています。このように団信にはいくつかのラインナップがありますが、すべての団信が利用できるわけではありません。利用できるのはローンを組む金融機関が提携している団信のみです。不動産投資ローンを組み際は「どのような種類の団信を扱っているか」を早い段階で金融機関の担当者に確認したほうがよいでしょう。
2-5.そもそも団信加入は強制なのか?
団信への加入は法律などで義務づけられているわけではありません。原則としては任意での加入ですが強制に近いニュアンスのこともよくあります。理由は万一のことがあったときに困るのは金融機関だからです。だからこそ基本の団信では金融機関が上乗せ金利を負担してまでリスクヘッジすることも少なくありません。
3.不動産投資で団信に加入するメリット・デメリット
不動産投資ローンは、団信のメリットとデメリットの両面を踏まえたうえで検討していくことが大切です。
3-1.団信の3つのメリット
【メリット1】生命保険代わりになる
団信の保障を生命保険代わりと考え不動産投資ローンを組んだ後、生命保険を解約する人もいます。また保障が多い保険から割安な保険に切り替える人もいるようです。これにより定期コストが浮くのも魅力です。
【メリット2】年齢に関係なく条件が一定
一般的な生命保険は加入年齢が上がるほど毎月支払う保険料が高くなっていきます。一方、団信は若い人も中高年の人も上乗せ金利などの条件が一緒です。そのため特に保険料が割高になる中高年(40代以降など)は団信のメリットが大きくなります。
【メリット3】保障規模を大きくしやすい
団信は物件ごとに加入できるのも魅力です。複数物件を購入し基本的な団信を中心に契約することで“実質上の負担なし”で保障を充実させることができます。生命保険の場合は、保障金額を大きくしようとすると毎月の保険料の負担も大きくなりがちです。
3-2.団信の3つのデメリット
【デメリット1】金利が高くなることも
疾病保障付団信を選択すると通常の金利に0.2~0.3%程度の上乗せ金利が発生することが多い傾向です。当然ながら毎月の返済額が多くなるため、利回りが低下します。具体的に「どれくらい返済額が増え、利回りが低下するのか」をしっかりと把握してから利用するのが賢明です。
【デメリット2】相続税が割高になる可能性
団信に加入することで相続税が割高になる可能性もあります。なぜなら団信によって「ローン残債なしの不動産という資産」が生まれるからです。ただし相続税は他の資産との兼ね合いや相続人の人数で変わってきますので気になる人は税理士などの専門家に確認するのがよいでしょう。
【デメリット3】高額物件や法人は利用できない
団信が利用できないケースとしては、不動産投資ローンの合計額が高額になった場合もあります。「どれくらいのローン額になると加入不可になるか」はケースバイケースといえるでしょう。なぜなら金融機関によっては1億円、2億円、なかには4億円までというところもあるからです。これを考えると超一等地の高級マンションや規模の大きい1棟物件を検討する際は対応できる金融機関を探す必要があります。また法人で物件を購入する場合も団信は使えません。
3-3.団信に加入前・加入後で注意すべきポイント
不動産投資のローンで団信を使うときには「加入前の注意ポイント」「加入後の注意ポイント」に留意する必要があります。
・3-3-1.団信加入前の注意ポイント
団信の加入前の注意ポイントは「健康告知」と「年齢制限」です。加入時には必ず契約者の健康告知の必要がありますが、状態によって加入できないこともあります。例えば「過去に高血圧症や糖尿病、肝機能障害など治療を受けた経験がある」といったケースです。この場合、通常よりも健康基準がゆるめのワイド団信に加入できることもあります。
しかし基本的な団信と同じ保証内容なのに年0.3%程度の上乗せ金利が発生するなどの条件になることが多い傾向です。それぞれの団信では個別に年齢制限を設定しています。例えばある団信の加入時の年齢条件は20~65歳以下、他の団信では20~49歳といった具合です。完済年齢が設定されていることも多いため、50代以上の人が契約する場合は早い段階で確認したほうがよいでしょう。
・3-3-2.団信加入後の注意ポイント
契約者が団信の対象になっている高度障害や疾病になったからといって自動的にローン残債が0円になるわけではありません。契約書で定められている「所定の状態」になったときに初めて残債が相殺されます。所定の状態についてはかなり細かく定められていますので契約前に必ずチェックするのが賢明です。
・3-3-3.団信の金利は経費算入できる?
団信の保険料(上乗せ金利)は、生命保険や入院保険のように生命保険控除に使うことはできませんが、金利として経費計上できる可能性があります。税理士などの専門家に確認してみましょう。
4.長期融資×団信で高い保険料をカバーすれば家計が潤う
不動産投資というと「初期費用がかかる」「専門知識が必要」など難しく感じる人も少なくありません。しかし高い保険料を払わずとも団信によって万一の場合の保障が得られ不動産収入が入るなら一考する価値があるでしょう。不動産投資では、家賃収入の中から融資を返済することができます。そのため最近では初期費用を抑えて投資することも十分可能です。
また家賃収入から返済できることから不動産投資のローンは金融機関の審査が通りやすいというメリットもあります。長期融資にすれば毎月の返済額は少額に抑えられるため、無理なく返済を続けていくことが可能です。返済が終われば家賃収入はそのまま手元の資金となります。老後は、家賃収入を生活費にすれば安心して暮らしていくことが期待できるでしょう。
「リスクに備える」というと保険が一般的ですが不動産投資と団信のメリットに気づき活用する人が増えてきています。まったく不動産投資に興味がないなら保険のほうが手軽で勉強も不要ですが「資産に価値を感じる」「不労所得で生活したい」といった人ならぜひ一度検討してみてください。
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