賃貸管理にトラブルは付き物と言って良いでしょう。賃貸管理には多くの人が関わるので、それぞれの当事者に考えがあり、事情があります。つまり、不動産投資とは物件の売り買いを行って資産を増やすだけの行動ではなく、「人を相手にするビジネス」という側面もあるのです。「人相手のビジネス」において避けて通れないのが、クレームやもめ事をはじめとする各種トラブルです。不動産投資家として、こうしたトラブルにはできるかぎり適切に対応したいものです。

実はこうした賃貸管理に関するトラブルには、一定のパターンがあります。そのパターンを知ることで問題の本質を理解すれば、解決方法も自ずと見えてきます。当記事では賃貸管理において発生しうるトラブルやクレームに関してありがちなパターンを3つの系統に整理し、適切に対応するための対応策、そしてクレーム対応について、ノウハウを紹介します。

目次

  1. 1.賃貸管理で起こりうるトラブルの種類
    1. 1-1.人を原因としたトラブル
    2. 1-2.物理的なトラブル
    3. 1-3.動植物を原因としたトラブル
  2. 2.よくあるトラブルとその対応策
    1. 2-1.家賃滞納が発生した
    2. 2-2.近隣住戸の生活音がうるさい
    3. 2-3.退去時の原状回復に関するトラブル
    4. 2-4.ペットに関するトラブル
  3. 3.クレームに対応する際のポイント
    1. 3-1.相手の怒りを鎮める対応の仕方
  4. 4.トラブル・クレームに発展しない仕組みづくりを

1.賃貸管理で起こりうるトラブルの種類

賃貸管理上でのトラブル対応術とは?
(画像=fizkes/Shutterstock.com)

賃貸管理の現場で起こりうるトラブルには実にさまざまなものがありますが、大きく3つの系統に分類できます。それぞれキーワードでまとめると、「人」「モノ」「生き物」となります。

1-1.人を原因としたトラブル

「人」に起因するトラブルとして良くあるものは、以下の通りです。

  • 騒音トラブル
  • 隣人トラブル(違法駐車、駐輪、ゴミ出しなど)
  • 家賃滞納

投資物件がマンション・アパートなどの集合住宅の場合、「近隣住戸の生活音がうるさい」というクレームが多いのではないでしょうか。「壁を1枚隔てて他の入居者と同じ建物内にいる」という、集合住宅ならではの悩みともいえます。音の感じ方は人それぞれですが、最悪の場合は住人同士のいざこざに発展するリスクもあるため、面倒ではあっても適切に対応しなければならないクレームのひとつです。

家賃の滞納についても同様で、投資物件のオーナーは入居者が家賃を支払うことによって賃料収入を得られます。たとえ満室でも家賃滞納が発生していれば、その滞納分だけ損をしているということになります。家賃滞納は、不動産投資の成否に直結するものであるため、長期化させずに早い段階で芽を摘んでおくことが重要です。

1-2.物理的なトラブル

次によくあるのが、「モノ」に起因するトラブルです。主に以下のようなものがあります。

  • 漏水
  • 設備の故障
  • 原状回復

水廻りの故障によって漏水が発生すると、その住戸だけでなく他の住戸にも浸水してしまうことがあります。そうなると、トラブルはより大きなものになってしまいます。設備の故障もトラブルの元です。水廻りの他に空調や床暖房、給湯器など、設備が充実している物件ほど故障の可能性は多くなります。

退去時の原状回復に関して、「入居者が原状回復のための費用負担に応じない」といったケースが散見されます。これもトラブルの要因です。

1-3.動植物を原因としたトラブル

人やモノ以外にも、トラブルとなる要因はあります。それは人でもモノでもない「生き物」によるものです。

  • ペット
  • 害虫駆除
  • 雑草、ガーデニング

ペットを飼育するのは人間の意思なので、「無断でペットを飼っている」「ペットの声、臭いが気になる」といったトラブルは人的なトラブルに属するとも解釈できます。ガーデニングについても同様で、植木の枝が隣家にまで伸びている、植木鉢に繁殖した害虫が出没するといったトラブルも、人的なトラブルに近いものがあります。

害虫や雑草は人間の活動とは直接の因果関係がないものも多く、例えばハチが巣を作ってしまったケースです。この場合、誰が処理するべき問題なのかという「責任の所在」をめぐってトラブルに発展することがあります。

2.よくあるトラブルとその対応策

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(画像=G-Stock Studio/Shutterstock.com)

前章で紹介した賃貸管理にありがちなトラブルの中でも、特によくある4つのトラブルについて、その対応策を解説します。

2-1.家賃滞納が発生した

入居時に契約書を交わしていることから、家賃滞納は契約違反ということになります。法的には、オーナーのほうが強い立場であることは間違いありません。しかし、長期入居してくれている人が家賃を滞納するような場合、それまで築き上げてきた人間関係を壊さないようにと、強い態度を取ることに躊躇してしまうかもしれません。

特に2020年3月頃から影響が深刻化した新型コロナウイルスの感染拡大による失業や休業によって、家賃滞納を余儀なくされたという事例も増えています。

家賃滞納の場合にオーナーが取りうる対策としては、電話や書面による督促⇒内容証明による督促⇒契約解除の通告⇒明け渡し請求⇒強制執行というのが一般的です。これをオーナー自身が行う場合、慣れていないと大変でしょう。専門の管理会社に委託するのもひとつの手です。

普段から管理業務全般を委託しておくのが最善ですが、自主管理していた場合でも一定の手数料を支払うことで家賃の督促を管理会社に任せることもできます。

2-2.近隣住戸の生活音がうるさい

「人」に起因するトラブルの中でも特に多いのが、生活音に関するものです。国土交通省の調査「平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」によると、平成30(2018)年度の居住者同士のトラブル内容で最も多いのが「生活音」です。次いで違法駐車・違法駐輪となっています。これらのトラブルは、賃貸管理の中で避けて通れないカテゴリーです。

同調査では、トラブルの処理方法についても調査結果をまとめています。それによると、「管理組合内で話し合った」が1位、2位は「マンション管理業者に委託した」、3位でようやく「当事者間で話し合った」という処理方法がランクインしています。このランキングからは、当事者間で話し合うよりも第三者を介在させつつ、穏便に話し合うことが有効であると考察されます。

当事者をあまりに前に出すことなく、専門の管理業者などトラブル処理のノウハウを有しているプロに委託するのが最も無難であると考えるべきでしょう。

2-3.退去時の原状回復に関するトラブル

原状回復については、国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」をまとめており、このガイドラインに沿った対応をするのがセオリーとなります。同ガイドラインは内容がとても細かいのですが、借主と貸主のどちらに責任や原因があるのかによって責任の所在が明確に分けられていると理解しておけば問題ありません。

その責任範囲は、以下の図でご覧いただくと分かりやすいと思います。

賃貸管理上でのトラブル対応術とは?

経年劣化や通常損耗については借主の責任ではないため、原状回復の義務はありません。それ以外の注意義務違反や故意、過失によるものは借主、任意のグレードアップについては貸主の責任範囲になるという考え方です。

このガイドラインをもとに借主の責任であると判断できる部分は、退去時に敷金から差し引くことができます。仮にトラブルの解決が困難になっても、少額訴訟などでその権利を守ることができます。

2-4.ペットに関するトラブル

ペットに関連するトラブルで多いのが、「ペット不可なのに犬を飼っている」「猫を飼っている」といった契約違反であるのと同時に、それが原因で近隣トラブルに発展しているケースです。ペット飼育を許可している物件の場合は、入居者同士のトラブルとして管理会社などに委託するのが無難です。ペット飼育不可の場合は明確な契約違反なので、その点から是正していく必要があります。

具体的には室内点検の名目で室内をチェックさせてもらい、その時にペットの存在が明らかになったら、それを証拠に是正を求めることができます。それを拒否した場合は契約違反であることを根拠に最終的に物件の明け渡しを含めた措置を取ることになります。この場合も専門的な知識やノウハウを要するので、専門の管理会社などに任せるのが良いでしょう。

重要なのは、ペットの飼育に関するトラブルは起きる可能性が高いため、契約書の中に可否を明確に記載し、それを納得してもらった上で入居してもらうことです。

3.クレームに対応する際のポイント

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(画像=create jobs 51/Shutterstock.com)

クレームは、人から生まれるものです。人が相手だけに対応を間違えるとトラブルがさらに大きく、深刻になってしまう可能性があります。火災と同じで「ボヤ」を大火災にしてしまわないために、「初期消火」のポイントを解説します。

3-1.相手の怒りを鎮める対応の仕方

クレームを入れてくる相手は、程度の違いはあっても怒りの感情を持っています。その怒りをどのように鎮めるか、穏便に対処できるかが結果に大きく影響します。そこで注意したいのが、以下の3つのポイントです。

【ポイント1】相手との接し方(話し方・聞き方) 怒っている相手に対して、その怒りをさらに増幅させないためには「話し方」と「聞き方」に工夫が必要です。以下の点に注意をして、まずはクレームの内容を正確に聞き取るよう心掛けてください。

  • 横柄な話し方をしない
  • 話を途中で遮って早合点をしない
  • 話し方のスピードは普通より少し遅めに
  • 疑うような言動を慎む
  • 「よくあることです」といった具合に茶化さない
  • 安請け合いをしない
  • 明言をしなさすぎる「ゼロ回答」も避ける(回答できることは可能な限りその場で回答する)

管理会社に委託をしている場合、オーナーのところに直接クレームが入ってくることは少ないかもしれませんが、クレームが入った際には問題を大きくしないよう、適切な初動対応をとりましょう。

【ポイント2】対応の方法(スピード・失念しない) クレームを受け取ったら、次はその対応です。対応時に心掛けたいのは、以下のポイントです。

・できるだけ迅速に動き、何らかの回答をする ・絶対に失念しない ・たらい回しにせず、第一報で受理する ・時間が掛かる場合は早めにそのことを伝える

相手は目の前の問題を早く解決したいからクレームを入れるのです。対応に時間が掛かったり、待たされた挙句にたらい回しにされたり、放置されたりしたら、冷静ではいられなくなる人も多いはず。クレーム対応の基本は、スピード感と確実性です。上記の点をしっかりと心得ておきましょう。

【ポイント3】法的知識を得ておく クレーム処理が穏便に解決できない場合や、言いがかりに近いような無理難題を押し付けてくるような場合は、法的知識が役立ちます。クレームも行き過ぎたものや、不当な要求を繰り返すような場合は、犯罪行為に該当する場合もあります。法的な知識で理論武装しておけば、毅然とした態度を維持することができます。

もちろん、弁護士など法律の専門家にいつでも相談できる環境を作っておくのも有効です。謝罪することや、クレームを入れてきた相手の要望を実現することだけがクレーム対応ではありません。自分で対応するのか、専門家に相談するのか、その線引きをする意味でも、法的な知識を持っておいて損はありません。

4.トラブル・クレームに発展しない仕組みづくりを

不動産投資は、人が入居する物件を取り扱う以上、「人が相手の商売」です。したがって、「トラブルやクレームは避けては通れないもの」であることを理解しておきましょう。投資物件でトラブルやクレームが発生した場合、オーナーとして責任を持って対応するのは当然です。一方で、トラブル・クレームに発展しない仕組みづくりを、事前に構築しておくことも大切といえます。

クレームが発生しにくい物件、仕組みづくりは、そのまま満足度の高い賃貸経営を意味します。満足度の向上で、満室経営を目指しましょう。

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