「居心地はどうだろう」「将来世話になるのかな」「どんな人が働いているんだろう」……介護施設に抱く印象は人それぞれではないでしょうか。「投資してみたい」と思う人は、目のつけどころが素晴らしいです!そうはいっても、実際にどうすれば投資できるか、わかる人は少ないかもしれません。その方法を紹介します。
増え続ける高齢者
厚生労働省が2017年に発表したデータによると、特別養護老人ホームの入所を待つ人の数は約29万5,000人でした。もしもこの人数が一列に並んだら、どれくらいの長さになるでしょうか。 ひとりあたり50cmとして、約150km。大よそ沖縄本島の端から端までの距離です。これだけ多くの人が介護施設の空きを待っている現状があります。
特別養護老人ホームは低料金であり、また生涯にわたって入居できるため、特に待機者が多い介護施設です。このことを差し引いても、30万人という数は多すぎます。高齢者が入居できる施設が足りていないことがよくわかるのではないでしょうか。
少子高齢化は確実に進んでいます。2025年には、日本人の3人に1人が65歳以上になる見込みです。
これから介護の市場は、ますます巨大化していくでしょう。その一端を担う介護施設は、有力な投資先になるでしょう。
REITを通じて介護施設のオーナーになる
介護施設に投資するいちばん簡単な方法は、ヘルスケア型のREITを買うことです。
念のため説明しますが、REITとは不動産投資信託のこと。ファンドと呼ばれるプロの不動産投資家にお金を預け、賃料収入の一部を分配金というかたちで受け取る仕組みをいいます。
ファンドが保有するのは、マンションだけではありません。オフィスビルや倉庫、ホテルなど、個人の不動産投資家には規模が大きく、なかなか手が出せないような施設も運用しています。
さまざまな種類の不動産に投資するファンドを総合型REIT、1種類に絞るファンドを特化型REITと呼びます。
特化型REITの中には、ヘルスケア型と呼ばれるタイプがあります。これが介護施設を多く所有しているファンドなのです。
2019年6月現在、東京証券取引所に上場しているヘルスケア型REITには、日本ヘルスケア投資法人やヘルスケア&メディカル投資法人などがあります。かつてはジャパン・シニアリビング投資法人もヘルスケア型の1つに数えられていましたが、ケネディクス・レジデンシャル投資法人と合併してケネディクス・レジデンシャル・ネクスト投資法人となってからは、老人ホームなどのヘルスケア施設の割合は、保有資産の30%以下とする方針に変わりました。
これら上場しているJ-REITは、株式と同じように取引できます。証券会社に口座を持ちさえすれば、誰でも簡単に買えるのです。
このようにヘルスケア特化型のREITや、ヘルスケア施設を持つ総合型のREITに投資すれば、介護施設を間接的に保有することになります。
介護施設や老人ホームを自分でつくる
ヘルスケア施設はREITを通じて保有するだけではなく、自分でつくることもできます。中でも不動産投資家が参入しやすいのは、住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)です。
これら2種類の施設は、介護の必要がない、または軽微な高齢者に、住まいと一定のサービスを提供するものです。契約方式は老人ホームがホテルや旅館などに近い利用権契約、サ高住は一般的なアパートやマンションと同じ賃貸契約です。このような契約上の違いはありますが、両者とも介護サービスを必須としないなど、比較的通常の不動産投資に近いといえます。
サ高住で必ず行わなければならないサービスは、生活相談と安否確認の2つだけです。老人ホームとの大きな違いは、補助金や税制優遇など、国のバックアップを得られることです。
実際に開業するにあたっては、介護事業者にサブリースする形になるでしょう。施設のオーナーが、入居者に直接サービスを提供するわけではありません。「ノウハウも知識もない」という人もご安心ください。
シニア向け住宅の投資先としての魅力は、先ほど述べた市場の拡大や補助金だけではありません。
まず、駅からの徒歩分数など、立地条件にこだわる必要がないことです。生活が施設内で完結するので、買い物や遊びなどの利便性が低くても、入居者はあまり気にしないでしょう。
また、若者向けのワンルームなどと比べて、長期の入居を期待できます。サ高住や老人ホームを終(つい)の住みかとする人も多いのです。
少子高齢化に着目したベテランの不動産投資家は、ヘルスケア施設の運営を検討してもよいのではないでしょうか。
介護施設には誰でも投資できる
高齢者が増え続ける日本では、介護施設の需要はますます伸びていくでしょう。投資をするのは難しくありません。最も簡単なのは、ヘルスケア型のREITを購入することです。また、サービス付き高齢者向け住宅などの施設を建設し、介護事業者にサブリースするという方法もあります。