投資のコツは「見切り千両」お荷物不動産をスピーディに売る任意売却
(画像=PHOTOCREO Michal Bednarek/Shutterstock.com)
佐古野 道人
佐古野 道人
一般企業で不動産運用や税務を経験後、ファイナンシャル・プランナーとして独立。マネー専門ライターとしてWEBライティングの他、書籍の企画・構成にも携わる。得意分野は資産運用。日本FP協会資格認定会員(AFP)。

投資に損失はつきものです。事業としての性格を持つ不動産投資もそれは同様で計画どおりの収支にならず、頭を抱える人も少なからずいることでしょう。「思い切って売却して楽になりたい」と考えるのは自然です。しかし赤字を出し続ける「お荷物物件」は簡単には売れません。このような状況を打破するためにあるのが任意売却です。

なぜ不動産投資では「損切り」が難しいのか

株式投資には「見切り千両」という格言があります。「上がる見込みのない株は、損失が膨らむ前に早めに売却したほうがよい」というような意味です。しかし投資に慣れないうちの「見切り」は難しいものです。人間は購入した価格を現在価格が下回る「含み損」の状態では、なかなか売ることができません。なぜなら損失を確定することには、大きな心理的ストレスが伴うからです。

早く売却して投資のリスタートを切るべきなのに、できない……このような人間心理に対する戒めを表した言葉が、この「見切り千両」という格言なのです。損失の拡大を防ぐために、含み損の状態から売却することを「損切り」といいます。株式投資の場合、決断さえすれば、すぐにでも損切りができます。

しかし不動産投資の場合、電話1本、クリック1つというわけにはいきません。なぜならローンがあることが多いからです。例えば、こんな場面を想像してみましょう。1棟マンションで残りのローンが1億円、毎月の返済額が50万円あるとします。「管理状態が悪く半分以上が空室」「入居者がいる部屋の家賃も相場より低い」といった環境で家賃収入は30万円、毎月の赤字は20万円です。

何とか他の物件や本業の収入で補てんしていたものの、手元にお金がなくなり、ついにローンを滞納してしまいました。もしこのマンションに1億円以上の値がつけば、何の支障もなく損切りできるでしょう。しかし手元の資金と売却代金の合計から売却手数料を差し引いた額が、残りのローンを上回らなければ、基本的に金融機関は売却を許してくれません。そのために物件を担保にとり、主導権を握っているのです。

間に不動産会社が入って話をつける任意売却

担保にとるということは、「ローンを当初の予定どおりに返せる見込みがなくなったら、物件を売って返済にあててもよい」という権利を持つことです。この力関係は、ローンを完済し抵当権抹消登記をすることで解消できます。そのためには金融機関が承諾し、その旨を書いた書類を発行しなければなりません。

たとえ赤の他人に売却したとしても元の持ち主がローンを完済できなければ、物件は担保にとられたままなのです。勝手に売却されるおそれのある不動産を買う人はいないでしょう。市場価格がローンの残高に満たないとき、他の方法で完済するための資金を調達しなければ、売却できないのが一般的です。

しかし金融機関から任意売却の許可が得られれば売却することもできます。任意売却とは、ローンを残したまま抵当権を抹消してもらったうえで不動産を売却する手続きです。具体的には、不動産会社が間に入り、売り出し価格などを金融機関と話し合います。双方が納得したうえで買い主を探し、抵当権抹消登記をして引き渡すことができれば、無事に損切りができるのです。

買い主にとって、任意売却物件と通常の物件の間に大きな違いはありません。そのため大差ないスピードと金額で売却できます。任意売却によって投資不動産の損切りをするためには、金融機関との交渉に長けた不動産会社を見つけて依頼することが必要です。

競売では1年かかって相場の半額になることも

もし任意売却ができず、ローン完済の見込みもなければ、持ち主にとって非常に不利な状況が待ち受けています。金融機関は抵当権を実行し、強制的に不動産を売却するでしょう。これが競売です。不動産競売は裁判所が主体となって行います。金融機関による申し立てが受理されると、価格の査定や周知に時間がかけられ、売却までには早くて半年ほどかかるのが一般的です。

誰でも買い手になれますが、1人も名乗りを上げないときはやり直しになります。1年以上かかることもあり、その間もローンの利息と延滞金は積み重なっていくことはデメリットです。売却価格の面でも競売は不利になりやすいといえます。内覧や瑕疵担保などの権利が制限されているため、一般市場よりも低く評価されることが原因です。市場価格の半額程度になることもあります。

物件を売却してローンの返済にあてても、返しきれない分には引き続き返済義務があります。売却価格が低く、債務が残りがちな競売は避けるべきでしょう。

いざというときに役立つ不動産会社との縁

投資不動産の損切りが難しい理由は心理的な抵抗だけでなく、物件を担保に提供していることにもあります。滞納したまま放っておけば、競売にかけられることになるでしょう。年単位の時間をかけ、しかも不利な価格で売却されることになってしまいます。それを防ぐために、任意売却を得意とする不動産会社を味方につけておいて損はありません。

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