国内経済が縮小に向かうこれからの日本にとって、成長の鍵を握るのが海外からの投資やインバウンド需要です。日本の不動産は世界的に見てどのような位置にあるのでしょうか。データを元に、主要都市で海外と日本の不動産マーケットを比較してみます。
これからの経済成長には海外からの投資が不可欠
2018年に国立社会保障人口問題研究所が予測した「日本の地域別将来推計人口」によると、2045年度の全国平均人口は2015年度を100とした場合、83.7%に減少するとされています。これまで人口の増加とともに成長してきた日本経済は、今後負のスパイラルに入っていくことになります。国内需要だけでは、経済成長は先細りになることが避けられません。
そこで成長のマイナス分を補うには、海外からの投資を呼び込むことが不可欠となります。経済を支える主な要因は株式などの金融市場、不動産市場、そして個人消費の3つです。消費に関しては増え続ける外国人観光旅行客のインバウンド需要が引き続き伸びる見込みなので、それほど心配はないといえるでしょう。
ただ金融市場の場合は、米中貿易摩擦や日韓関係悪化、欧州政情不安など外部要因に左右される面が多いため、国内要因だけではどうにもならないところがあります。その点、不動産市場は日本が独自に投資メリットを発信していけば、海外からの投資を呼び込める可能性が一番高いセクションです。では、どのように魅力を発信していけばよいのでしょうか。
ニューヨーク・ロンドンと、東京・大阪はどちらが有望か
日本の不動産市場に海外からの投資を呼び込むには、海外に比べて日本の不動産市場が割安であることをアピールする必要があります。実際、日本の不動産マーケットは海外に比べてどのような位置にあるのでしょうか。代表的な都市である「ニューヨーク」「ロンドン」「東京」「大阪」の4都市で比較してみましょう。
日本不動産研究所が算出した「国際不動産価格賃料指数」を元に、世界の高級住宅(マンション)の価格水準を比較したデータによると、2019年4月時点の東京を100とした指数でニューヨークが105.3、ロンドンは197.4でした。ニューヨークと比較するとやや安い程度ですが、ロンドンとの比較では半分程度とかなり割安であることがわかります。大阪にいたっては54.7と大幅に出遅れています。
ニューヨーク・ロンドンの世界的大都市と比較しても、東京・大阪は今後、かなり有望と考えてよいでしょう。
投資形態別に主要都市を比較する
投資形態別に主要都市の不動産マーケットを比較してみましょう。ここではオフィスとマンションの価格指数の伸び率を主要14都市で比較します。(2019年4月現在)
- オフィス価格指数伸び率上位5都市
都市名 | 伸び率 |
---|---|
大阪 | +7.4% |
東京 | +4.3% |
バンコク | +3.9% |
北京 | +3.4% |
ホーチミン | +3.0% |
ニューヨーク(参考) | ±0.0% |
- マンション価格指数伸び率上位5都市
都市名 | 伸び率 |
---|---|
ホーチミン | +3.4% |
バンコク | +3.1% |
大阪 | +2.8% |
北京 | +1.2% |
東京 | +0.5% |
ニューヨーク(参考) | -1.2% |
ここでも、すでに価格が上がりきった都市よりも日本など出遅れていた地区の伸び率の高さが目立ちます。
相対的に日本の不動産が投資妙味あり
以上のデータから相対的に日本の不動産に投資妙味があることは明白といえます。なぜなら不動産の価格そのものが割安でありながら価格の伸び率が高いということは、今後も一段と上昇する余地があることを意味するからです。しかも日本の不動産市場は、2020年の東京五輪を皮切りに大阪万博、IR(統合型リゾート)計画など目白押しといえます。
さらに2037年のリニア中央新幹線、東京~名古屋~大阪間全線開通までほぼ間断なく巨大イベントと開発が続くのです。そのため決して一過性のブームで終わるわけではない点に投資としての安心感があります。その動きを先取りするように、2019年7月10日には東証REIT指数が11年半ぶりの高値を付けました。
当時は10年国債がマイナス金利になったことから、リスクヘッジとしての買いが向かった背景があります。まさに「攻めて良し、守って良し」の不動産は今後も有望な投資セクションとして注目を集めることでしょう。
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