賃貸経営において空室率や家賃収入は重要な要素ですが、同時に重要なのがコスト管理。今回のテーマは「BM費」(ビルマネジメント費)。BM費を削減するにはどのようなポイントを押さえたらよいのでしょうか。

不動産

入居者の満足度や将来的な入居率にも影響するBM費

不動産賃貸経営においては、様々なランニングコストが発生します。「PM費」や「BM費」はよく耳にすると思います。PM(プロパティマネジメント)とは、空室募集や案内活動等のリージング業務、契約締結業務、賃料回収、トラブル対応といった人(入居者・オーナー等)を対象にしたソフト面の業務を指します。一方、BM(ビルマネジメント)は建物の所有者や不動産投資家に代わり、日常清掃、設備管理、点検、警備業務、美観管理といった物(物件・付帯設備等)を対象にしたハード面の業務のことをいいます。

管理方法は大きく分けて二つ。自主管理か委託管理です。自主管理は自分で管理するか、清掃・設備・警備会社等へ別々に発注しなければならず、非常に手間がかかるのに対し、委託管理は一つの発注先にすべて委託することができます。費用は発生しますが、手間がかからず急なトラブルにも対応できる委託管理の方がより安心で、ほとんどのオーナーに選ばれています。

これからBM費の内訳について見ていきましょう。

設備管理・保守費用

空調やボイラー、電気設備や防災設備といった機械設備が正常に運転するよう保守管理を行うための費用。建物の安全性を確保するため、建築基準法・消防法・ビル衛生管理法等の法令に基づいた定期点検を行わなければなりません。

警備費用

セキュリティシステムといった機械警備や、入館管理や巡回といった人的警備にかかる費用。

清掃・衛生管理費

共用部の窓ガラス、床、壁等の日常清掃や、廃棄物処理、害虫駆除等の衛生管理業務のための費用。清潔に保つことは建物の資産価値を保つことに繋がります。

これらはどこまで管理を行うか、清掃頻度はどれくらいか、また建物の規模によっても費用が変わってきます。BM費の相場は【家賃×双方で合意が取れている料率】となり、この料率は5~10%が相場とされています。ただしいくら料率が安くても、管理技術がない業者であれば結局費用がかさんでしまう場合もあります。清掃頻度や各項目の具体的な費用等、内訳は必ずチェックしましょう。トラブルへの対応力や修繕費を最小限に抑えるノウハウを持っているなど、業者の強みを見て決定することが良いでしょう。

BM費の削減ポイント

エレベーター保守の見直し

エレベーター保守はメーカー系と独立系の2つに大別されます。メーカー系保守会社はエレベーターの製造からメンテナンスを行い、部品の開発コストも上乗せしているため価格が高くなります。独立系保守会社はメンテナンスや修繕に必要な部品を必要な時だけメーカーから取り寄せており、製造・開発コストのかかる独立系保守会社と比べてコストが圧倒的に低くなります。さらに契約形態によって費用が変化します。

フルメンテナンス…定期点検や部品の交換が生じた際のメンテナンスを全て契約料金のみで行うことができる。
POG契約…契約料金で清掃、定期点検、給油等を行い、部品の交換や修理があった場合その都度料金を支払う。

メーカー系(1基あたり)独立系(1基あたり)
フルメンテナンス契約4~6万円/月額3~4万円/月額
POG契約3~5万円/月額2~3万円/月額
  • メーカー系×フルメンテナンス契約(1基あたりの月額費用6万円と想定)
    6万円×12か月=72万円/年
  • 独立系×POG契約(1基あたりの月額費用3万円と想定)
    3万円×12か月=36万円/年

この2パターンで比較した場合、約半額になります。エレベーターの耐用年数は約30年といわれており、さほど年数が経っていないマンションではPOG契約に切り替える選択肢を検討しても良いでしょう。反対に、長期のフルメンテナンス契約をしてきたマンションでPOG契約に切り替えることは得策ではないでしょう。

清掃業務の見直し

巡回清掃業務(週1~2回の通常清掃)は建物の規模にもよりますが、半日くらいで完了するものであれば1回4,000~5,000円程度。年一度もしくは半年に一度くらいのペースで行う定期清掃(大規模清掃)は、廊下やエントランス等の高圧洗浄であれば150~200円/㎡内で洗浄が可能。広ければそれなりに費用がかかります。人件費が大きなウエイトを占めているため、清掃の頻度や人員数を建物の規模に対して妥当であるか見直すことでコスト削減に繋がります。

ゴミ置き場

敷地内にゴミストッカーを設置すると、設置費用や清掃費用がかかります。設置場所によっては集積所までゴミを運ばなければならず、そうした管理費も発生します。地域の共同集積所を利用すれば、こうした費用を抑えることができます。ただし分別・収集方法は地域によって異なるため、清掃局に問い合わせが必要です。ゴミ出しをめぐり近隣住民とトラブルになることもあるので、ゴミ出しに関するルールを入居者へ徹底させる必要があります。

共用部をコンパクトに設計する

新築する場合、共用部を最小限に抑えた設計にすることで清掃面積と頻度が減り、共用部分のメンテナンス費用を抑えることができます。汚れやすい外廊下より内廊下にするのも良いでしょう。他にもエレベーターや自動ドアをなくす、植栽を最小限に抑えることでBM費の削減になります。

以上BM費の削減ポイントをいくつか解説しましたが、ここで注意しなければならないのは、管理費削減によってサービスの質が下がり住民の不満が増すことです。メンテナンスが行き届いているかどうかは建物の印象に直結しますし、入居者の満足度や将来的な入居率にも影響する可能性があります。物件毎に改善ポイントを見極め、「適切な値下げ」にこだわり最適な管理会社を選定し、収益アップにつなげていきましょう。

下記動画にて詳しい内容をご覧いただけます。



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