面積の大きい土地を活用する場合、土地を一体と分割して活用する方法があります。どちらを選択するかはオーナーの考え方と、土地の持つ特性によって変わってきます。今回は具体例を見ながら活用方法を見ていきましょう。
地方都市で約1,000㎡の土地の場合
もともと、このオーナーは1,000㎡の土地でガソリンスタンドを経営していましたが、少子高齢化とモータリゼーションの変化でガソリンスタンドを廃業し、その跡地をどのように有効活用しようか悩んでいました。
広い土地では一般的には一棟物のアパートを建てて、一括で運営する方法が提案されます。事実、ある建築会社からは、鉄筋コンクリート建て3階建て24室の賃貸マンションを提案されました。
当然、更地で所有するより貸家建付地にすることで、固定資産税や相続税も安く抑えられ、家賃収入もあります。しかし建築コストがかかり、建物と土地共に金融機関に担保設定されます。
土地分割の方法
1,000㎡の土地を活用する方法として、前述の通り一体活用をする方法と、土地を分割して活用する方法もあります。それぞれメリットとデメリットを見ていきましょう。
一括で賃貸物件を建てる場合
メリット
- 賃料の総収入が大きい
- 貸家建付地扱いなので相続税の節税効果が大きい
- 空室が出てもスケールメリットで収入がゼロになるリスクは小さい
デメリット
- 建築費が高く借入のために土地建物全体に担保設定がかけられる
- 鉄筋コンクリート作りのため将来の解体工事費がかかる
小規模なメゾネットタイプの木造賃貸物件と月極駐車場に分割
メリット
- 建築費が抑えられる
- 遺産相続時に分割しやすい
- 納税資金が必要となった場合に売却しやすい
デメリット
- 一括建築に比べて相続税の節税効果が小さい
このケースの場合では、あまり相続税が多額にならない、賃貸需要がそれほど多い地域ではないため、小規模でも利回りの良い物件として投資を行い、得た収入で生命保険加入や生前贈与を活用し、資産の移転を狙うといった方法を採用しました。
多視点からの土地活用方法
よくありがちなのは、大規模な土地なので、そのスケールメリットを使って一括で大規模な賃貸アパートを建築し、相続税対策にしてしまおうという提案です。
しかし、それが正解とは限りません。まず、その立地にアパート需要が本当にあるのかどうか、建築会社からサブリースの提案があっても、将来に渡って家賃が保証されるわけではないことも考慮する必要があります。
相続税対策だけに絞った場合でも、土地の場合は評価額の引き下げ、財産の移転、納税資金準備といった視点から考える必要があります。このケースのように更地を所有しているのであれば、借入金を使って相続財産を圧縮する、または土地利用形態の変更をすることで土地の評価額を引き下げるという方法もあります。
たとえば、宅地は利用単位の一画地ごとを評価します。道路付けの形状によっては、広い一画の土地とみなさず分割して考えます。そうすることで相続税の節税につながるケースもあります。
逆に分割しない方が相続税法上は有利になるケースもあります。たとえば、土地を分割してしまうと相続税評価額の減額補正の一つである「規模格差補正」を適用できなくなることがあります。俗にいう「広大地評価」というものです。
これは三大都市圏では500㎡以上、それ以外の地域では1,000㎡以上で一定の要件を満たす土地に適用されます。
もし、三大都市圏でこの評価が適用されますと評価額が20%減額されます。土地を分割してしまうとこの特例が受けられなくなります。これを逆手に取ると、500㎡に少し満たない土地を持っているケースでは、隣地を購入することで500㎡以上にする方法もあるのです。
広大な面積の土地の利用は多様な視点で検討
土地活用の方法はいろいろな条件を考える上で、適切な判断材料となるものがどれだけ手に入れられるかがポイントです。一つの提案だけで決定するのではなく、多様な視点から見比べ検討する必要があるのです。
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