REITは不動産で運用することに特化した投資信託です。自分で選ばなくてもプロが選んだ優良物件に小口投資ができることや複数の不動産に分散投資するのと同じ効果が得られるため、投資家からも安定的な人気を誇ります。
しかし、REITにはメリットだけでなくデメリットもあります。デメリットをしっかり理解してリスクを抑えつつREIT投資のメリットを最大化するために必要な基礎知識をまとめました。
これからREIT投資を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
REIT投資のメリット
REIT投資には、主に6つのメリットがあります。
- 少額から購入可能
- リスク分散効果が高い
- 投資家に代わってプロが物件を厳選、運用する
- 現金化しやすい
- 収益の大半が投資家に分配される
- 市場の透明性が高い
ここでは、REIT投資のメリットを1つずつ解説していきます。
少額から購入可能
REITは、運用対象が不動産というだけで他の株式や債券などで運用している投資信託と同様に売買が可能です。J-REITの場合は数万円、REITを含む投資信託の場合は数百円といった少額からでも購入することができます。
REITのなかでも東京証券取引所に上場している銘柄群をJ-REITと呼びます。多くのJ-REITで運用対象とされているのは、個人投資家では手が届かないような高額の優良物件です。こうした「高値の花」ともいえる物件に小口で投資できることは、REITの大きなメリットといえるでしょう。
リスク分散効果が高い
リスクを抑えた運用を行うためには、一つの投資先に依存せず、分散して投資を行うことが有効です。 しかし、個人投資家が複数の不動産に分散投資をするためには資金面でのハードルが高くなります。しかしREITは、複数物件に投資をしているため1本保有するだけでも一定の分散効果を得ることが可能です。
REITには、商業施設や住居物件、物流施設など特定の分野に特化した銘柄や、異なる分野にまたがって複合的に運用する銘柄などがあります。REITに1本だけ投資するだけでも分散効果は得られますが、分野の異なるREITに投資をすることで、さらなる分散効果を得ることも期待できるでしょう。
投資家に代わってプロが物件を厳選、運用する
REITは、プロのファンドマネージャーが運用を担います。知識や経験が少ない初心者であっても不利になりにくい点はREIT投資の魅力といえます。特に不動産投資は、物件選びの目利きや運用のノウハウが重要になるため、そういった部分をプロに任せられることは大きなメリットです。
現金化しやすい
REITのなかでもJ-REITは、証券取引所に上場しているため、株式と同じ方法で売買が可能です。そのため証券取引所の取引時間であれば自由に売買ができ、必要に応じてすぐに現金化ができます。また取引時間中は、随時価格が変動しているため、株式投資と同じように、値上がり益を狙う投資にも適しているでしょう。
もちろん非上場のREITであっても手軽に売買が可能ですが、市場流通していないため機動的な売買には適していません。
収益の大半が投資家に分配される
J-REITを運営している投資法人には「収益の90%超を投資家に分配すると実質的に法人税がかからない」という制度があります。そのため企業の内部留保のように収益を分配せずに貯めこむことがなく、収益のほとんどは、投資家へ分配される仕組みとなっています。
株式投資の場合は、保有している銘柄の企業方針によって配当の有無や金額が決まるのが一般的です。一方、J-REITは収益の90%超が実質的にそのまま分配されるため、分配金や配当金狙いの投資家にとって有用な投資対象といえます。
市場の透明性が高い
証券取引所に上場をするには、株式であってもJ-REITであっても厳しい審査に通過することが必要です。上場後も、東京証券取引所の規定によって投資方針や運用体制などに関する情報開示が義務づけられています。
こうした制度のおかげで高い透明性が確保されている点もメリットです。いわゆるインサイダー取引など一部の投資家だけが有利になるようなことは起きづらい仕組みとなっています。
REIT投資のデメリット、やめとけと言われる理由
REIT投資には、多くのメリットがある一方でデメリットもあります。デメリットもあることから「やめとけ」と言われることもあるわけですが、ここではその理由について解説します。
値下がりによる損失の可能性がある
REITは、日々価格が変動しているため、購入時よりも売却時の価格が低ければ損失となります。つまり保有していることで安定的な分配金が得られる一方で、売却損(キャピタルロス)が発生してしまうとそれまで蓄積してきた分配金の利益を損失が上回ってしまう恐れもあるのです。これは、REITに限らず元本保証されていない投資商品全般にいえるデメリットです。
投資法人の経営破たん、上場廃止リスクがある
REITを運営している投資法人は、いわば不動産投資をする専門会社のようなものです。投資家は、投資法人が発行する投資証券を購入することにより、REIT投資を行います。投資法人は、運用している不動産で得られた利益を、この投資証券を保有している人に分配する仕組みです。ただ営利を目的としている以上、運用が不振であれば投資法人が経営破たんする可能性もあります。
2008年10月には、東京証券取引所に上場しているJ-REITの投資法人「ニューシティ・レジデンス投資法人」が経営破たんしました。投資法人の倒産や上場廃止になると投資家にも損失が及ぶ可能性が高く、これも上記と同じく元本保証ではない投資には付き物のリスクです。
分配金が常に一定とは限らない
REITの分配金は、運用している不動産から得られる収益によって変動します。不動産は、比較的安定した運用資産ですが、未来永劫同じ収益が発生し続けるとは限りません。例えばコロナ禍時には、観光市場が大きく縮小した影響でホテルなど宿泊施設を運用しているREITが分配金を減らし、利回りが低下したことがありました。
こうしたことは、今後も起こる可能性があり、REITを保有していればずっと同じ利回りが得られることが確約されているわけではありません。
自然災害との関わりが避けられない
REITが運用しているのは不動産、つまり現物資産です。そのため現物の不動産投資と同様に自然災害との関わりを避けられません。地震や台風、また自然災害による火災などREITが運用している物件がダメージを受けると資産が目減りしてREITの価格が低下する恐れがあります。また運用物件からの賃料収入が減ってしまうと、分配金が減額される原因になりかねません。
レバレッジ効果が得られない
少ない資金で大きな規模の運用ができることを「レバレッジ効果」といいます。現物の不動産投資では、金融機関からの融資を利用できるため、少ない自己資金で物件を購入して収益を狙うことでレバレッジ効果を発揮できます。
しかし、REITは現物の不動産ではないため、REITの購入に融資を利用することはできません。REIT投資に用いることができるのは自己資金が中心となるため、現物の不動産投資のようなレバレッジ効果を得られません。
現物の不動産投資のような節税効果はない
現物の不動産投資は「事業」として扱われるため、減価償却費を含むさまざまな経費を計上したり、損益通算によって所得を圧縮したりするなどの節税効果が期待できます。しかしREIT投資は、投資信託への投資となるため、現物不動産投資のような節税の余地はほとんどありません。
もちろんNISAを活用すればREIT投資で得られた利益を一定範囲まで非課税にすることはできます。しかしそれ以外の節税方法はないため、節税目的でREIT投資を検討するのは適切ではありません。
金利上昇により収益が悪化する可能性がある
REITを運営している投資法人は、不動産購入や開発のために金融機関から資金を借り入れています。もちろん借入金には利子が発生するため、金利が上昇するとREITの運用成績にも影響が及びかねません。長らく日本では、超低金利が続いてきたため利息負担の増大をあまり考慮する必要はありませんでしたが、世界的な金利上昇の影響を受けて日本でもじわじわと長期金利が上昇しつつあります。
この傾向がさらに加速すると、REIT投資にも影響が出るでしょう。
REITの基礎情報
REIT(リート)は「Real Estate Investment Trust」の略語で不動産投資信託のことです。不動産を運用している投資信託を購入することで間接的な不動産投資が可能になる金融商品です。
上述したようにREITのなかでも東京証券取引所に上場している銘柄群は「J-REIT」と呼ばれ、2023年8月時点で60銘柄への投資ができます。
投資対象によってREITは3種類に分類される
REITは、運用対象の不動産の種類により、主に以下の3つの種類があります。
- 単一用途特化型:住居やオフィスビルなど特定分野の不動産に特化しているREIT
- 複合型:2つの分野にまたがって不動産を運用しているREIT
- 総合型:3つ以上の分野にまたがって不動産を運用しているREIT
単一用途特化型は、特定の分野の不動産のみで運用しているため、景気変動や社会情勢の変化による影響を受けるリスクが高い傾向です。一方、複合型や総合型は異なる分野にまたがる運用をしているため、リスク分散の効果があります。
REIT投資を始める方法
REITは、証券会社に口座開設すれば投資を始めることができます。J-REITは、株式と同じ感覚で売買ができ、非上場のREITでも各銘柄を取扱っている証券会社の口座から購入するだけです。
個別のREITを購入する以外にも、東証REIT指数といってJ-REIT全銘柄の値動きを示す指数と連動するETF(上場投資信託)などを購入して実質的な「J-REIT全銘柄への分散投資」を実践する方法もあります。
おすすめの運用方法
REITは、値上がり益よりも分配金収入を狙うのに適した金融商品です。そのため購入するタイミングを見極めるよりも長期保有、積立投資をするのに適しています。
2023年9月21日時点におけるJ-REITの分配金平均利回りは4.13%となっています。
仮に4%として100万円分のJ-REITを長期運用すると以下のように増えていきます。
- 10年目:約148万円
- 20年目:約219万円
- 30年目:約324万円
このように時間が経つごとに資産が加速度的に増えているのは、複利効果があるからです。もちろん投資元本をもっと大きくしたり、積み立てによって元本を増やしながら運用したりすると資産形成効果はさらに大きくなります。
REITに関するQ&A
Q.REIT投資のメリットは?
少額からプロが厳選した優良物件に投資ができたり、物件管理などが不要であったりするなど多くのメリットがあります。J-REITは、証券取引所で売買できるため、換金性の高さも魅力の一つです。
Q.REITは危ないですか?
元本保証の金融商品ではないため、価格の値下がりや投資法人の経営破たんなどのリスクはあります。しかし、こうしたリスクは株式や投資信託など他の投資商品も同様です。REITだけが危ないわけではありません。
Q.REITを買うとどうなるの?
不動産の運用で得られた利益が分配金として定期的に支払われます。投資家は、REITを保有しているだけで分配金を得ることが可能です。REITの健全な運用が続く限り、分配金が入り続けます。
Q.REITの税金はいくらですか?
REITは、投資信託となるため、他の投資信託と同様、利益分に対して20.315%の税金がかかります。例えば10万円の利益が出た場合は、税金として2万315円が差し引かれ手もとに残るのは7万9,685円です。20.315%の内訳は、所得税が15.315%(2037年までの復興特別所得税込み)と住民税が5%です。
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