不動産投資では、金融機関から融資を受ける人が多いです。そのため、融資を受ける前にある程度の知識を身につけておきましょう。今回は、不動産投資における融資の特徴、金融機関が重視する属性、それを改善するための方法などについて解説します。
目次
1.不動産投資の融資がつきやすい理由とは
1-1. 資産運用で融資を受けられるのは不動産投資だけ
不動産投資では、たとえ手元に潤沢な金融資産があっても、融資で資金調達をすることが重要です。これにより、手元資産にレバレッジがかかり、資産運用を有利に進めることができます(ただし相続税対策の場合は除く)。
目的が投資・資産運用にも関わらず、金融機関が融資をしてくれるのは不動産投資だけです。上場株式や金を買うために融資をしてくれることは、通常はありません。だからこそ、不動産投資をするのであれば融資を最大限に活用すべきなのです。不動産投資で融資がつきやすい理由は、以下の2点です。
1-2賃料収入を原資にするから
不動産投資で融資がつきやすい理由の1つ目は、家賃を返済に充てられるからです。住宅ローンをはじめとした一般的な借入では、借入をすることで新たに収入源が生まれるわけではありません。一般的な借入の場合、返済原資はあくまで個人の給与です。そのため住宅ローンの融資を受ける場合は、個人として返済能力があることを金融機関に証明しなければなりません。
一方不動産投資の場合は、借入をすることによって不動産収入という新たな収入源を得られます。返済の大部分は不動産収入の中から払っていくことになるため、金融機関側のリスクは小さいと言えます。
1-3.資産性があるから
2つ目の理由は、不動産には資産価値があることです。返済が滞ったとしても、不動産を売却することである程度残債を回収できる見込みがあるため、評価額の範囲内であれば融資を受けやすいと言えます。
1-4.低金利で融資を受けられるのも魅力
このように、不動産投資には「家賃を返済に充てられる」「資産価値がある」という特徴があるため、金融機関からの融資が付きやすいという特性があり、金利も低く抑えられています。
たとえば、クレジットカードでの借入だと金利は14%前後と非常に高くなります。クレジットカードは無担保ローンですぐにお金が入ることが魅力ですが、金融機関にとってはリスクが高い分高金利になるのです。限度額もせいぜい数百万円と低く設定されています。
一方不動産投資では、1~3%台という低金利が採用されています。住宅ローンでの借入限度額は一般的に年収の10倍程度ですが、不動産投資では年収の20倍程度まで融資を受けられることもあります。
2.融資審査で鍵を握る「属性」の5つの要素
このように不動産投資には融資がつきやすいのですが、個人属性も審査において重視されます。属性を構成する主な要素は全部で5つあります。それぞれの内容を確認していきましょう。
2-1.属性の構成要素:職業や勤務先など
その人がどんな会社に勤めているか、どんな職業についているかで属性評価は大きく変わります。一般的な評価の傾向をまとめると、以下のようになります。
(1)公務員・大企業の正社員(属性:高)
公務員や大企業(老舗企業や1部上場企業など)の正社員は属性が高く、融資を受けやすいと言われています。公務員や大企業の会社員は安定性に加えて、退職金の多さも高評価の理由と考えられます。
(2)士業に携わる高額所得者(属性:高)
弁護士・公認会計士・医師など高額所得の士業の人も、属性が高いと言われます。ただし、有名事務所の所長や大手事務所勤務などではなく、個人事業主として立ち上げたばかりであれば、属性を低く評価される可能性が高いです。
(3)中小企業の社員(属性:中)
中小企業の社員は、会社規模・年収・勤務年数などによって大きく評価が分かれます。言うまでもなく高所得で勤務年数が長いほど、融資審査で有利になります。一般的には、不動産投資の融資審査が通りやすいボーダーラインは勤続3年以上と言われています。
(4)中小企業の経営者(属性:ケースにより様々)
中小企業の経営者は、属性が低いと言われています。ただし、何代にもわたって黒字を積み上げてきたような優良企業で、なおかつ経営者の個人資産が潤沢であれば、金融機関によっては融資を受けやすくなります。
(5)自営業者(属性:低)
上記4つと比べると、自営業者は最も属性が低いです。直近の業績が良好でも、金融機関からは「今後はどうなるかわからない」と判断されてしまうからです。そのため、自営業者は一般の金融機関ではなく、中小企業や自営業者向けの日本政策金融公庫から融資を受けて不動産投資をするのも一案です。
2-2.属性を構成する要素:金融資産
預金や現金化しやすい金融資産を潤沢に持っていれば、金融機関へのアピールになります。特に融資額に近い、または融資額を超える金融資産を長期的に所有していれば、大きなプラス材料になります。
ちなみに、勤務先の項目では属性の高かった大企業の社員でも、金融資産が平均よりも少なければ「浪費家ではないか」と疑われかねません。逆に、属性があまり高くない中小企業の社員や経営者でも、金融資産を潤沢に有していれば、融資審査で有利になることがあるのです。
2-3.属性の構成要素:家族やマイホームの有無
家族構成やマイホームの有無などについては、金融機関によって評価が大きく分かれます。一般的に配偶者がいることはプラス材料、幼児がいることはこれから教育費がかかるためマイナス材料とされます。
マイホームの有無に関しては、たとえローン残債があっても、マイホームがあるから社会的な信用力が高いと考える金融機関もあれば、多額の借金があるためマイナスと見る金融機関もあります。地方銀行や信用金庫などでは、マイホームがあることで評価が上がるケースが多いようです。
2-4.属性の構成要素:契約者の年齢
個人事業主として不動産投資をする場合は、ローン契約者の年齢も考慮されます。一般的に借入年齢の上限は60~65歳といわれますが、ローンの返済年数の上限が30~35年に設定されていることを考えると、50歳を超えると属性は下がっていくと考えられます。
2-5.属性の構成要素:他のローンの借入状況
マイホーム以外のショッピングやマイカーなどのローン残債があることで、属性が下がることもあります。また、たとえ少額だったとしても過去に返済が滞ったことがあると、大きなマイナス材料になることもあります。
3.属性を改善する3つの方法とは
現在の属性では融資を受けることが難しい場合、属性を改善してローン審査に再度臨むという手もあります。いずれにせよ、短期間で属性を改善することは難しいため、時間をかけてじっくり取り組むことが大切です。
法的に問題がある手法で属性を改善しようとする投資家もいますが、嘘の情報によって融資を受けると、それが発覚した時に全額返済を求められるリスクがあります。融資審査は、あくまでも真実の情報で受けましょう。
3-1.他のローン残債を減らす
他のローンの残債を減らすことは、属性を高めるための最も現実的な方法です。ただしローン残債を減らしても、すぐに信用情報が高まるわけではありません。特にローン返済が滞り、信用情報が大きく低下している人は、相当な時間が経過しないと信用情報が改善されないと考えておくべきです。
3-2.収入を上げる
現在の収入では不動産投資の融資を受けられない場合、大企業や高収入の職業に転職して属性を上げるという方法もあります。ただし転職してから3年など、ある程度の年数が経たないと安定収入があると見なされないので注意しましょう。
3-3.預金や金融資産を増やす
公務員や大企業にも関わらず、預金や金融資産が少ないことが理由で融資審査に通らなかったと考えられる場合は、この部分を改善して改めて融資審査にチャレンジするのも一案です。
ここで紹介したような方法では属性の改善が難しい場合、配偶者や両親に連帯保証人をお願いするのも有効です。配偶者が大手企業の社員や公務員であったり、親が資産家であったりすれば、審査で有利になる可能性があります。
4.融資審査で有利な賃貸物件の条件
属性の高い人であれば不動産投資の融資はつきやすいですが、低金利や融資割合が高いなど、さらに有利な条件で融資を受けられる賃貸物件があります。このような物件は、金融機関の融資額よりも物件の評価額が高いことが多いです。このような優良物件であれば貸し倒れリスクが少ないため、有利な融資条件になりやすいのです。
賃貸物件の評価方法には、土地と建物の資産価値をもとに計算する「積算評価」、その収益物件が生み出す収益をもとに計算する「収益還元評価」があります。
大半の金融機関が融資審査で重視するのは、積算評価です。しかし、積算評価額を大きく下回る価格でマーケットに出される物件はあまりありません。物件検索サイトを細かくチェックしたり、不動産会社と良好な関係を構築したりして、積算評価が高い賃貸物件と出会う確率を高めるしかありません。
5.まとめ-最終的に融資審査を受けないとわからない面も
ここまで解説してきた内容をまとめると、以下のようになります。不動産投資で融資がつきやすい理由は、「家賃収入を原資に返済するから」「資産性があるから」でした。
また、不動産投資の融資審査では、属性が重視されます。属性を構成する要素は以下の5つでした。
- 職業や勤務先など
- 金融資産
- 家族やマイホームの有無
- 契約者の年齢
- 他のローンの借入状況
そして、属性を改善する方法として以下の3つを紹介しました。
・ローン残債を減らす
・収入を上げる
・預金や金融資産を増やす
ただし融資審査には数多くの要素が影響するため、「属性が低いのに通った」「属性が高いのに落ちた」ということが往々にして起こります。最終的には審査を受けてみないとわからない部分が多いため、前情報だけで判断するべきではないでしょう。
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