これから一棟物件を建てるなら、アパートとマンションどちらを選ぶべき?
(画像=ronstik/Shutterstock.com)

賃貸経営(一棟物件)では、投資対象をアパートとマンションのどちらを選択するのかも重要な要素の一つです。同じ立地でも、どちらを建てるかで利回りや稼働率が大きく変わってくることもあります。そこで本記事ではアパートとマンションを選ぶときのポイントを解説します。

アパートとマンションの家賃の差額:1室あたり平均 2万2,000円の差

アパートとマンションを比較した場合、一般的には「マンションのほうが家賃を高く設定しやすい」「アパートのほうが建築費を抑えやすい」などといわれます。具体的にどれくらいの家賃や建築費の差になるのでしょうか。家賃の差について『Yahoo!不動産』の家賃相場検索を使って東京都のアパートおよびマンションの平均家賃を出してみると次のような結果になりました。

  • アパートの平均家賃:5万8,000円
  • マンションの平均家賃:8万円

Yahoo!不動産 東京都の家賃相場(2019年10月19日現在)

両者の家賃の差は2万2,000円で、年額にすると26万4,000円になります。仮に20室規模で考えてみますと、年間528万円の差額、20年間の運用で1億円以上の差額です。ちなみにこれはワンルームの場合で、1LDK~2LDKだと両者の家賃の差は1室あたり4万7,000円に広がります。東京都以外のエリアについても見てみましょう。大阪府のアパートとマンションの平均家賃(ワンルーム)は次の通りです。

  • アパートの平均家賃:4万5,000円
  • マンションの平均家賃:4万7,000円

Yahoo!不動産 大阪府の家賃相場(2019年10月19日現在)

このデータで見てみると東京都よりも大阪府の人がアパートとマンションの家賃の差は少ない傾向です。このようにエリアによっても傾向は大きく変わってきます。

アパートとマンションの建築費の差額:2倍以上の開きになることも

建築費は、敷地や建物の面積やグレードなどで相当変わってきます。それを前提に一般的な相場では、木造アパートの坪単価は40万~60万円前後、RC(鉄筋コンクリート)マンションの坪単価は70万~120万円前後です。当然ながら同じ面積の建物を建てれば木造アパートのほうが割安になります。しかしその分マンションの建物は長寿命です。

法定耐用年数で見るとRCマンションの47年に対して木造アパートは22年です。仮に木造アパートの坪単価を50万円、マンションの坪単価を100万円と考えて後者のほうが倍の建築費を払ったとしても「寿命が倍以上あるのでよい」という判断もできるでしょう。逆に「アパートの寿命は短いけれど建築費が割安なのでよい」といった判断もできます。

対象エリアの現在・将来のニーズ変化を読むことも大切

ここまで見てきたような家賃・建築費・建物寿命、これにメンテナンス費などを加味してアパートとマンションのどちらを選択するかを判断する人が多いでしょう。もう一つ意識しておきたいのは「対象エリアは、アパートとマンションどちらの入居者ニーズがあるか?」という視点です。一例としては以下のような選択方法があります。

  • 単身ビジネスパーソンやDINKSのニーズが強いエリアなら住居性能の高いマンションのほうを選択
  • 学生や高齢者のニーズが強いエリアなら家賃が割安なアパートのほうを選択

あわせて対象エリアのニーズ変化も大切です。

  • 大学のキャンパス移転が近々予定されているなら学生向けのアパート
  • 再開発などでオフィス需要が強くビジネスパーソンの流入が多いと見込まれるならマンション

上記以外にも高齢者の急増が予測されるエリアなのでバリアフリータイプのアパートを建てるといった発想もあるかもしれません。いずれにしても対象エリアのニーズ変化を読むことは賃貸経営にとって生命線となります。

相続税対策のための賃貸経営でもニーズを読むことは大事

気をつけたいのは、相続税対策のために賃貸物件を建てるようなケースです。「いくら節税できるか?」といったことにばかり目が行ってしまい、エリアのニーズを無視して建物が建てられることも少なくありません。節税のために利益をコントロールすることと、多額の赤字を垂れ流すことは根本が違います。相続税対策のための賃貸経営でもニーズを意識することは非常に重要です。

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