不動産投資を始めるとき、物件購入までどのような流れで進んでいくのか、全体像を把握しておくとスムーズに行なうことができます。不動産投資での物件選びのポイントと、購入から引き渡しまでの流れについて、注意すべきポイントを解説します。
1.不動産投資における物件選び3つのポイント
不動産は自分が住むために購入する場合と、投資として賃貸経営を行う場合とでは、物件選びのポイントが異なります。始めに、賃貸経営を行うための収益物件を購入する際の選び方のポイントを確認しておきましょう。
1-1.収益物件購入前の目標設定が大切
不動産投資をする場合、収益物件を購入する前に賃料利回りの目標値を設定することが大切です。その際の重要なポイントは、目標値を「実質利回り」で計算することです。単に年間賃料収入を購入価格で割った「表面利回り」で計算すると、融資の返済や空室率、固定資産税などの諸経費が反映されないので、正確なシミュレーションができません。
【利回りの計算例】購入金額3,000万円、年間家賃収入150万円、諸経費100万円の場合
・表面利回り
(150万円÷3,000万円)×100=5%
・実質利回り
((150万円-100万円)÷3,000万円)×100=2%
上記の計算例では、実質利回りのほうが利回りは3%低くなります。税金などの諸経費は必ずかかるものなので、実質利回りでシミュレーションをし、目標値を設定するようにしましょう。
1-2.物件選びは立地が最も大切
物件選びで最も大切なのは「立地」です。不動産投資は、「立地が命」といっても過言ではありません。なかでも駅近など好立地の物件は長期にわたり賃貸需要が安定し、資産価値も下がりにくいといえます。ただし、好立地の物件はその分、価格も高い(利回りが低い)傾向があります。郊外や地方でも土地面積が広く積算評価が高い物件や利回りが高く上手く運用できれば多くのキャッシュフローを得られる物件などもあります。投資家それぞれが何を目的に取り組むかによって取るべき選択肢は変わってくるでしょう。
1-3.不動産会社選びも大切!選ぶポイントは?
不動産は大きな買い物なので、それを仲介する不動産会社選びも大切なポイントです。特に中古物件の場合、優秀な営業マンがいる不動産会社であれば、売り主との交渉によって有利な条件で購入できる可能性が高くなります。
良い不動産会社を選ぶためには、単に仲介するだけでなく、リーシングと呼ばれる商業用不動産の賃貸支援業務も行う会社を探すことです。リーシングを行う不動産会社であれば、購入後のフォロー体制が整っているはずです。
2.物件種別ごとの選び方とそれぞれのメリット・デメリット
不動産には、さまざまな種類があります。ここでは物件種別ごとに分けて、選び方のポイントとメリット・デメリットを見ていきます。
2-1.立地の選び方とメリット・デメリット
・都内
東京23区内の物件は人気があります。価格も上昇傾向にあるので、コストパフォーマンスの良い物件を選ぶことが大切です。ポイントはターミナル駅へのアクセスが良く、通勤・通学に便利であることです。特に乗降客数が多い、新宿・渋谷・池袋・東京・品川などへ数駅で行ける物件は賃貸需要が高いです。デメリットは価格が高いことと、物件が不足気味であることです。利回りが低い分、安定した入居率が見込めることと、長期的にも資産価値が下がりにくい点がメリットです。
・地方大都市
大阪・名古屋・横浜・札幌・福岡など、地方の大都市の不動産も人気が高まっています。人口減少が進むほど大都市圏に人口が集中しやすいことから、将来も需要が見込めるためです。選ぶポイントは、大きなイベントがあり開発が進んでいることや、政令指定都市であることなどです。
2-2.形態種別での選び方とメリット・デメリット
・区分マンション
区分マンションは1棟まるごとではなく、1部屋から購入できるため、少ない資金で投資できることがメリットです。その意味では、不動産投資初心者向けの物件形態と言えるでしょう。デメリットは、区分所有なので自分の思い通りに経営することができない場合があることです。共用部分を自分の希望だけで修繕することはできず、その都度管理組合に相談しなければなりません。
「駅徒歩3分」など本当に賃貸需要が強いエリアの場合、1棟で購入しようとすると高額になりますが、区分マンションなら手ごろな金額から投資することができるでしょう。賃貸需要の強いエリアで複数分散して投資できることもメリットといえます。
・1棟マンション
1棟マンションは、区分マンションに比べて経営の自由度が高く、共用部分も自分の所有物になるため、運用の幅が広がります。また、土地に価値を持たせることができるので、金融機関からの融資を受けやすくなることにもつながり、それによって少ない自己資金で購入することができます。
1部屋だけの区分所有であれば、その部屋が空室になれば家賃収入がゼロになりますが、1棟の場合は入居者が同時に全員いなくなることはまずありません。区分マンションに比べると多くの資金が必要になりますが、資金に余裕があれば魅力的な形態と言えるでしょう。
・1棟アパート
アパートのメリットは、マンションよりも少ない資金で購入できることです。ほとんどが2階建て、3階建てまでの小規模な形態なので、管理がしやすいというメリットもあります。
デメリットは木造のため耐用年数が短いことです。中古で購入する場合、融資期間が短くなりキャッシュフローが出にくくなる傾向がります。また、入居者も木造よりRCマンションを好む傾向があることは気に留めておく必要があるでしょう。
2-3.構造種別での選び方とメリット・デメリット
・新築・中古
不動産投資で新築と中古のどちらを選ぶかは、多くの人が迷うところでしょう。結論から言えば、予算次第ということになります。
新築は価格が高いものの、その分家賃を高く設定できるというメリットがあります。最初の10年程度は、大きな修繕も必要ないでしょう。一方中古は安く購入できますが、新築の家賃よりも低く設定しなければなりません。また築10年以上であれば、何らかの補修が必要になる可能性があります。
最終的には購入価格と家賃収入をシミュレーションして、コストパフォーマンスの高いほうを選ぶことになるでしょう。新築でも中古でも立地が重要であることには変わりがないので、駅近など好立地の物件を選ぶことがポイントです。
・木造・軽量鉄骨・RC
建物の構造も重要です。マンションの多くは重量鉄骨、RCまたはSRC構造です。RCとは鉄筋コンクリートのことで、耐火性や耐久性に優れています。SRCは、RCに鉄骨を加えたものです。高層マンションのような容積が大きい建造物には、鉄骨が入ったSRCが向いています。
6ミリ以下の鋼材を使用する軽量鉄骨造は製造コストが安く、家賃も低めに設定されるため、軽量鉄骨の物件を選ぶ人も少なくありません。
古いアパートは木造建築のものが多く、他の構造よりも火災リスクが高いというデメリットがあります。大型台風などでも、建物の損壊が発生するかもしれません。
3.収益不動産の購入から引き渡しまでの3つのステップ
最後に、収益不動産を購入してから引き渡しまでのステップを確認しておきましょう。
3-1. 購入する不動産をリサーチする
不動産投資は、購入する物件のリサーチから始まります。ここまで紹介した立地や形態、構造などに着目して、目的に合う物件を探します。
物件をリサーチする方法には、インターネットを使って自分で探す方法と、不動産会社に依頼する方法があります。興味のある物件を探した上で不動産会社に連絡してもいいのですが、初心者は先に信頼できる不動産会社を探し、物件リサーチの段階から相談に乗ってもらう方が安心でしょう。
3-2.収益不動産を購入する
興味のある物件を見つけたら、その物件を仲介している不動産会社と詳細を詰めていきます。具体的には、現地調査をして物件の状態や付近の入居率、家賃相場、周辺環境を確かめたり、キャッシュフローシミュレーションを作成して、購入後の資金計画を立てたりします。現地調査では、エントランスの印象や外壁のひび割れなどの補修が必要な箇所がないかどうかを細かく確認しましょう。
現地調査やキャッシュフローシミュレーションを経て、納得できる物件であれば購入の意思決定をし、買付申込書を提出します。これによって購入に向けて動き出すことになるため、購入の意思が定まらないうちは買付申込書の提出は控えましょう。買付申込書を提出した後は、金融機関にローン融資を申し込みます。
金融機関の融資審査にはある程度時間がかかるため、余裕のあるスケジュールを設定することが大切です。融資審査では、源泉徴収票のコピーや住宅ローンの返済表などの必要書類を提出します。金融機関の審査が通れば、不動産の売り主との間で売買契約を結びます。融資資金が振り込まれて決済が完了すれば、晴れて物件のオーナーになることができます。
3-3.購入した物件の引き渡し
次はいよいよ物件の引き渡しです。物件の引き渡しと同時に登記手続きも行います。登記手続きは自分で法務局に出向いて行うこともできますが、一般的には司法書士など専門家に依頼することが多いです。司法書士に依頼した場合は司法書士報酬が発生するので、その予算も確保しておく必要があります。
不動産の管理を不動産管理会社に委託するなら、売買契約の締結や決済の前に不動産管理会社を探しておくとスムーズです。不動産管理会社と契約すれば入居者募集やクレーム対応、未収賃料の回収など面倒な手続きをすべて一任できます。
4.まとめ
不動産の物件選びから購入、引き渡しまでの流れをご紹介しました。物件選びでは「立地」が最も大切であることがおわかりいただけたと思います。その他にもさまざまなポイントがあるので、都内・地方大都市、新築・中古、区分・1棟、マンション・アパートなどを比較して、自分の目標とする賃貸経営を実現できる物件を見つけましょう。
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