未来,賃貸経営,MaaS
(画像=QinJin/Shutterstock.com)
丸山優太郎
丸山優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している

「MaaS」はトヨタ自動車とソフトバンクの2大メガ企業が提携してサービスの開始を目指すことで知られるようになりました。交通手段のシームレス化が主な目的ですが実は賃貸経営にも影響があるといわれます。そこで今回はMaaSがもたらす賃貸経営の新しい形について解説します。

MaaSとはどんな仕組みか

MaaS(Mobility as a Service)とは、アプリを通じて出発地~目的地までの最適な交通手段をシームレスに提供するモビリティ(移動手段)サービスのことです。

従来の移動手段は電車・バスなどの公共交通手段と米ウーバー・テクノロジーズに代表される配車サービスなどのシェアリングサービスがそれぞれ分断していました。

しかしMaaSを活用すれば、例えば音楽コンサートの会場に行く場合、交通費の額や時刻表の検索に加えて、配車サービスや宿泊先の予約もでき即座にキャッシュレス決済まで行うことができるのです。

MaaS先進国といわれるフィンランドでは、マース・グローバル社によるWhim(ウィム)というアプリを使った30日間や月額など定額制によるサービスがすでに普及しています。

MaaSが普及すれば立地の差が縮小する

MaaSは不動産の価値も大きく変えようとしています。なぜならMaaSが普及することにより立地の差を縮小することが期待できるからです。

現在不動産物件の人気を左右する大きな要素が「駅から徒歩〇分」という立地条件ですが、駅から徒歩約20分程度の中距離物件の利便性が向上すれば環境などそのほかの要素で競争力を高められる可能性が出てきます。

フィンランドが先行するMaaSですが、日本でも2018年10月にトヨタ自動車などの自動車メーカーとソフトバンクの共同出資でモビリティサービス提供のための新会社「モネ・テクノロジーズ」が設立されました。

両社が立ち上げる「MONET」では、トヨタ自動車の情報基盤である「モビリティサービスプラットフォーム」とソフトバンクの「IoTプラットフォーム」を連携させることでさまざまなデータを活用し需要と供給の最適化を目指しています。

さらに不動産業界でも2019年4月に三井不動産が先に述べたフィンランドのマース・グローバル社と協業契約を結びました。今後両社で首都圏において交通事業者と連携した実証実験を開始することを発表しています。

これらメガ企業がモビリティサービス事業に進出し「一定のビジネスモデルを築けるか」が今後のMaaS普及のカギを握りそうです。

「MaaS定額制パッケージ付き賃貸住宅」普及も

MaaSの仕組みが社会に浸透すれば「MaaS定額制パッケージ付賃貸住宅」という新しい不動産物件の形が普及する可能性があります。MaaSの利用料が家賃に含まれ移動の便利さが保証されれば、マイカーを持つ必要性がなくなり居住者にとっては駐車料金をはじめ自動車関連のコストを削減することが可能です。

米サンフランシスコではすでに月100米ドル分の交通ICカードが付いた賃貸住宅が登場しています。サービスが普及すれば高齢者が駅前のスーパーや医者に出かけることもできるようになるでしょう。MaaSは、急速に高齢化が進む日本では特に必要なサービスです。

差別化が進めば対応が必要

MaaSはこれから普及が進み、2018年11月に三菱総合研究所が公表した予測では2050年に世界で約900兆円の主要産業に成長すると見込まれています。そのうち「MaaS定額制パッケージ付き住宅」がどの程度の売り上げシェアになるかは不透明です。

しかし不動産広告戦略上でMaaS定額制パッケージの有無による差別化が進むようであれば導入せざるを得ないオーナーも増えることでしょう。

この流れは駐車スペースが不足している物件には大きな助けにもなります。不足分を他の敷地を借りて確保しているオーナーは、駐車場希望の入居者が減ることで物件内の駐車スペースのみで対応が可能です。

AI技術の浸透は、あらゆる分野に革命的な変化をもたらしています。VR(バーチャルリアリティ)内覧を導入し始めた不動産会社もあり、不動産業界も最先端のテクノロジーと無縁ではなくなりました。

そう考えると未来の賃貸経営が「MaaS」に左右されるという見通しも、あながち的外れではないかもしれません。

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