不動産価値を最適化する、ファシリティマネジメントとは何か
(画像=Suwicha/Shutterstock.com)
丸山優太郎
丸山優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業のライター。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している

「ファシリティマネジメント」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。普段聞きなれない言葉ですが、実は不動産価値を最適化するために重要なマネジメント活動です。管理会社や賃貸住宅オーナーにとってもメリットが多い、ファシリティマネジメントとは?

ファシリティマネジメントとは何か

ファシリティマネジメントとは、「企業・団体等が組織活動のために、施設とその環境を総合的に企画、管理、活用する経営活動」(日本ファシリティマネジメント協会公式定義)のことです。

この活動で特に重要なのが、施設・設備・建物を表すファシリティを、最小のコストで最大の効果を得られる状態にすることです。経営組織においては、「人事、ICT、財務、ファシリティマネジメント」が事業を支える4つの機能分野とされていますが、財務と同格に位置付けられていることで、ファシリティマネジメントの重要性がわかります。

伝統的な施設管理との違いとは?

では、ファシリティマネジメントと伝統的な施設管理には、どのような違いがあるのでしょうか。これまで管理組合や管理会社が行なってきた施設管理は、建物の美観・機能・設備・備品などを維持・保全する業務が中心でした。

ファシリティマネジメントはこれにとどまらず、経営的視点に立って、施設・設備の全体を最適化するための継続的な業務を目的とします。そこには、必要な施設・設備の構想から、購入・建設・レンタル・リースなどの選択や調達方法まで含まれます。

ファシリティマネジメントがこれまでの施設管理と違うのは、日常業務・管理の上に全ファシリティを最適化するための経営的概念を取り入れていることです。

ファシリティマネジメントの業務内容

ファシリティマネジメントの業務内容は、まず経営戦略のもとにファシリティマネジメントのプランを立て、プロジェクトを管理・維持・運営します。その結果を「統括マネジメント」がチェック・評価して改善を指示し、経営戦略やプランに生かします。この業務によって、以下のような効果が期待できます。

  • 不要な施設、不足している施設がわかると同時に、施設の不適切な使用などもチェックできる。
  • 施設の改革や有効活用によって、経営効率が向上し、施設関連コストを抑制できる。
  • 入居者、従業員をはじめ施設を利用する人にとって魅力的な環境を整備することによって、組織や社会に貢献できる。
  • 省エネルギーやコスト低減につながり、環境問題や事業の継続性に効果的な解決手段を得られる。

以上のような効果が、関連するすべての人のモチベーション向上にも役立つことから、ファシリティマネジメントは極めて重要な活動と言えるでしょう。

管理会社、賃貸オーナー向けのサービスもある

管理会社や賃貸住宅オーナー向けのサービスもあります。オーナーにとって荷が重いのが、入居者が退居する際の立ち合い交渉や、原状回復のための費用負担の依頼です。

一部の不動産会社が提供する「ファシリティマネジメント事業」のサービスを利用すれば、不動産会社が適切な費用負担を交渉し、退居に伴う原状回復工事費用の圧縮を図ります。適切な費用負担が提示されることで、入居者の納得が得られやすいというメリットもあります。

マンション・ビルの修繕はもとより、立ち合い交渉、原状回復工事、原状回復完了報告まで管理会社やオーナーをトータルにサポートするサービスが「ファシリティマネジメント事業」なのです。
※上記は一例であり、サービス内容は不動産会社によって異なります。

不動産物件の価値が最適化されることは、入居者、オーナー、不動産会社にとってそれぞれメリットがあります。その橋渡し役となる管理会社にとって、「ファシリティマネジメント事業」はこれからの時代に欠かせないサービスになりそうです。