賃貸経営のリスクは、不可抗力のものとそうでないものにわかれます。家賃滞納リスクは、後者のタイプ。つまり、事前に対策をとっていれば回避できるものです。具体的にどのような対策があるかチェックしましょう。
一棟物件のオーナーは「家賃滞納があって当たり前」のレベル
全国の管理会社を対象にした「日管協短観」のによれば、2018年上期(2018年4~9月)における全国の賃貸物件の家賃滞納率は次の通りです。
- 月初め段階での滞納率: 6.8%
- 月末までの1ヵ月滞納率:3.1%
- 2ヵ月以上の滞納率:1.3%
「月末の指定日に家賃をうっかり入金し忘れた」という滞納者を含めた月初め段階での滞納は6.8%で約15戸に1戸、1ヵ月滞納は3.1%で約32戸に1戸発生していることになります。長期滞納に発展しかねない2ヵ月以上滞納は、1.3%で約77戸に1戸の割合です。この数値を見て「家賃滞納はレアケース」と考えるのは危険です。
一棟物件を経営されていたり、所有戸数が多い人は長期滞納者と出会う確率が一気に高まります。仮に20~30戸を所有されているなら入居者の中に1ヵ月滞納者がいても不思議ではありません。ある程度の期間経営されているのであれば長期滞納の経験がないのは珍しいということになります。
もちろん所有物件によって滞納が発生しやすい物件とそうではない物件に分かれる傾向はありますが、所有戸数が少ない人でも家賃滞納に出会う確率は十分にあるため楽観視はできません。
家賃滞納リスクの対策:3つのセオリーを再確認
これから先を考えると高齢者の増加で家賃滞納が増えることが予想されます。なぜなら一般の高齢者は現役世代よりも収入が少ないからです。家賃滞納リスクを回避する方法を改めてチェックし対策を立てる必要があるでしょう。家賃滞納リスク対策のセオリーともいえる対策には次のものがあります。
家賃滞納の対策:サブリースの利用
家賃滞納リスクを回避するためのセオリーといえば、やはりサブリースでしょう。注意したいのは、サブリースといっても内容が多岐にわたる点です。大きくは、実際の家賃が変動してもオーナーへ支払われる額が固定されている「固定型」と、実際の家賃と連動する「連動型」があります。
また住宅設備の交換などのコストがサービスに含まれることもあります。さらに契約の更改時期や条件も異なるため、契約書を隅々まで理解してから契約することが大切です。
家賃滞納の対策:家賃保証会社の利用
財務体質のしっかりした家賃保証会社と契約することがポイントです。リスクヘッジをしていても家賃保証会社が倒産してしまえば元も子もありません。中小企業であれば業界のうわさや契約数の推移など上場企業であれば四季報やIRをチェックしましょう。
家賃滞納の対策:適切な入居審査の設定
一般的な入居審査では、勤務証明書や収入証明書などで家賃を安定的に支払えるかを確認することが多いでしょう。管理会社ごとの入居審査の基準もあるでしょうが、オーナーの要望を反映することも可能なケースもあります。例えば大手企業勤務、公務員など入居審査の基準を厳しくすれば家賃滞納リスクは減るかもしれません。
しかしその分、入居候補者が限定されるため、空室リスクが高くなります。入居審査の基準を上げるのであれば、「家賃を相場よりも割安にする」「住宅設備を充実させる」などでバランスをとることも時には必要です。
プラスアルファの家賃滞納の対策:顧問弁護士との契約
長期的な家賃滞納が発生してから弁護士を探し始めるよりも事前に家賃滞納に強い弁護士と顧問契約を結んでいるほうがスムーズに家賃回収や退去手続きを行えます。ポイントは、家賃滞納の分野に強い弁護士に依頼することです。例えば内容証明の効果的な送り方(発送タイミングや支払い期限の設定)一つとってもノウハウのある弁護士とそうでない弁護士では差が出てきます。
ここでは家賃滞納の対策について見てきました。家賃滞納が起こってから対策を練っても手数は限られます。ある程度の戸数を所有しているのであれば、家賃保証サービスの利用は必須でしょう。ただし前述した通り、「どの家賃保証会社と契約するか」が重要です。信頼できる家賃保証会社を選びましょう。
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