【不動産投資用ローンの基礎知識④】繰上返済で返済期間を短縮して利息を減らそう
(画像=Doucefleur/Shutterstock.com)
山下和之
山下和之
1952年生まれ。住宅・不動産分野で新聞・雑誌・単行本などの取材・原稿制作、各種講演、メディア出演などを行う。『住宅ローン相談ハンドブック』(近代セールス社)などの著書がある

不動産投資用を含めて各種ローンは、約定通りに毎月返済するだけではなく元金の全部または一部を繰り上げて返済することが可能です。元金の一部を繰上返済することを「一部繰上返済」と呼びます。

一部繰上返済によって本来支払わなければならない利息を大幅にカットしたり完済までの期間を短縮したりすることが期待できます。

手元資金がすべてなくなってしまうような無理な繰上返済はおすすめできません。しかしゆとりを崩さない範囲で繰上返済していけば通常通りの返済に比べて大幅に得できるのです。

今回は繰上返済の仕組みとメリットについて解説します。

繰上返済には期間短縮型と返済軽減型がある

一部繰上返済には、毎回の返済額を変えずに残りの返済期間を短くする「期間短縮型」と残りの返済期間は変えずに毎回の返済額を少なくする「返済軽減型」の2種類があります。

実際に得する金額は期間短縮型のほうが多くなるので、さまざまな事情から「当面の返済額を少なくしたい」といった人を除いて期間短縮型を選択する人が多い傾向です。

「一部繰上返済でどれくらい得になるのか」については、ネット上のシミュレーターを活用することで知ることができます。例えば日本銀行情報サービス局が運営している「知るぽると」のシミュレーターでは「当初借入額」「借入条件」「繰上返済したい金額」などの項目を入力すれば簡単にシミュレーションすることが可能です。

各種条件を入力すれば期間短縮型を利用する場合と返済軽減型を利用する場合の、それぞれの結果が出てくるので両者の違いも比較検討できて便利です。

期間短縮型と返済軽減型、減らせる利息の差額は?

例えば以下の条件で3年後に100万円を繰上返済した場合、期間短縮型と返済軽減型とでは、それぞれどのくらいの利息を減らせるのでしょうか。

借入額:2,000万円(ボーナス返済なし)
金利:2.0%
返済期間:30年
返済方法:元利均等返済

期間短縮型では、本来支払うべき利息を約68万円カットできるうえ残りの返済期間27年から25年2ヵ月に短縮されます。つまり1年10ヵ月の短縮効果です。

支払利息を大幅にカットしたうえで残りの返済期間が短くなるという安心感があります。何度か一部繰上返済を繰り返していけば5年、10年と返済期間を短くしていけるはずです。

返済軽減型の場合、毎月の返済額を7万3,923円から6万9,917円と約4,000円ほど減額できますがカットできる利息は約29万円にとどまります。もちろん残りの返済期間は27年で変わりません。

どうしても毎月の返済額を減らしたいという事情のある人でなければ期間短縮型を利用するのが得策でしょう。

できるだけ早く実行するほうが得する金額が多くなる

繰上返済はローンの金利が高いほど効果があり早い時期に実行するほどメリットが大きいといった特徴があります。借入額2,000万円の先ほどの条件の場合、期間短縮型で3年後に100万円の繰上返済を行ったときの支払利息カット効果は約68万円で返済期間短縮効果は1年10ヵ月でした。

それが1年後の100万円の繰上返済だとカットできる利息は約75万円に増え短縮できる期間は1年11ヵ月になります。反対に5年後だと支払い利息カット効果は約62万円に減り短縮できる期間は1年9ヵ月です。

かつての一部繰上返済は一定の手数料が必要で最低でも100万円からなどの条件が厳しい傾向でした。しかし最近ではインターネットで手続きを行えば無料でできる金融機関が増えているので気軽に行えます。ただしあくまでも無理のない範囲でというのが前提です。

余裕ができた段階でできるだけ早く実行するのが不動産オーナーの賢い選択ということになります。こうして余裕ができれば区分所有マンション1戸から2戸、3戸へと買い増しが可能になるかもしれません。さらに1棟丸ごと所有する本格的な不動産投資家、富裕層の仲間入りも夢ではないでしょう。

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