結婚新生活支援事業
(画像=VGstockstudio/Shutterstock.com)

少子高齢化に人口減……未曾有(みぞう)の危機に政府が打ち出したのが新しい家庭を創出しようという「結婚新生活支援事業」です。実は結婚新生活支援事業は、支援対象を不動産関連費用に特化しているという特徴があります。本記事では注目されている結婚新生活支援事業制度の概要を紹介します。

深刻化する少子高齢化と人口減

日本にとって少子高齢化と人口減少は大きな社会問題の一つです。国立社会保障・人口問題研究所の予測によると2045年の全国の人口は2015年を100とすると83.7まで減少する予測になっています。東京こそ100.7と増加予想ですが「東京都以外はすべて人口減になる」という深刻な予測が出ているのです。政府はこれまで人口減をインバウンド需要で補う経済戦略を立てていました。

しかし2020年に世界中で発生した新型コロナウィルスの影響で訪日外国人客が激減し戦略の立て直しを迫られています。少子化に関しても危機的状況で厚生労働省の「人口動態統計」によると2015年まで年間100万人の出生数を保っていましたが逓減傾向には変わりなく2019年の出生数(推計)は86万5,234人で過去最低を記録しました。

少子化対策は待ったなしの状況となっていますが出生率を上げるには婚姻率の増加が前提となります。

政府が打ち出した「結婚新生活支援事業」とは?

そこで政府が打ち出したのが「結婚新生活支援事業」です。2017年3月に国立社会保障・人口問題研究所が公表した「現代日本の結婚と出産」という調査によると「1年以内に結婚するとしたら何か障害となることがあるか」という問いに対して「結婚資金」と答えた人が最も多く43.3%を占めています。つまり結婚する意志はあっても結婚資金を準備できないために実行できない人が4割以上もいるのです。

政府は結婚資金の一部を補助することによって1組でも多く結婚に踏み切るカップルを増やしたいと考えたのでしょう。結婚新生活支援事業では結婚生活を始めるための不動産関連費用に補助金を交付します。対象になる費用は以下の通りです。

  • 新居の購入費用
  • 新居の家賃、敷金* 礼金、共益費、仲介手数料
  • 引っ越し業者や運送業者に支払った引っ越し費用

新婚生活のコストで大きな比重を占めるのが新居へ入居するための不動産関連費用のため、対象となる新婚家庭にとってはありがたい補助制度といえるでしょう。

対象になる世帯と費用

結婚新生活支援事業の対象になるには、以下の要件を満たすことが必要です。

  • 各市区町村が提示している期間内に婚姻届けを提出し入籍した世帯
  • 夫婦の所得を合わせて340万円未満(年収換算で530万円程度)の世帯。奨学金を返還している世帯は、奨学金の年間返済額を夫婦の所得から控除する
  • 夫婦ともに婚姻日における年齢が34歳以下の世帯
  • その他、住んでいる市区町村が定める要件を満たす世帯

対象になる世帯が申請した場合、1世帯あたり最大30万円まで補助金を受け取ることができます。申請方法は各市区町村で異なりますがここでは千葉県千葉市を例に挙げて手順を確認していきましょう。

千葉県千葉市の申請手順

  1. 必要書類を住宅政策課へ提出する(郵送での提出も可)
  2. 審査の結果、補助金の交付が決まったら、「補助金交付決定兼額確定通知書」により通知される
  3. 「補助金交付決定兼額確定通知書」により通知を受けたら「補助金交付請求書(様式第7号)」に請求金額、振込先口座番号などを記入し、住宅政策課へ提出する
  4. 請求書に記載の口座に補助金が振り込まれる

賃貸経営に恩恵はあるのか

結婚新生活支援事業制度は賃貸経営にどのような恩恵があるのでしょうか。新婚からいきなり一戸建てを購入する人は少数と考えられるため、賃貸住宅のほうがメリットは大きいでしょう。結婚するまでお互いの実家で暮らしている場合、結婚によって新たな住宅需要が発生することになります。新婚当初は夫婦2人のため、ワンルームマンションでしばらく暮らす家庭もあるかもしれません。

しかし子どもが生まれた場合はいずれ手狭になり2DK以上のマンションに転居する可能性もあります。また子どもが進学して大学生になれば独立して新たな住居へ引っ越していくケースも出てくるでしょう。そのように結婚によって新たな不動産需要が次々に発生する好循環期待できるのです。賃貸住宅オーナーにとっては普及してほしい支援制度といえるのではないでしょうか。

ただしこの事業は全国一律ではなく実施している市区町村が限られています。まずは内閣府ホームページで実施市区町村を確認してみましょう。市区町村と国が連携して行う結婚新生活支援事業は、少子化対策の前提となる婚姻率の上昇につながるだけでなく不動産業界にとってもメリットが大きいためより一層制度の普及が期待されます。

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