不動産投資で得られる最終的な手残りキャッシュフローを最大化するためには、家賃収入アップなどによるキャッシュイン最大化、ランニングコスト削減などによるキャッシュアウト最小化のどちらかを推進していく必要があります。
その中でも、ローン返済額を減少させることはキャッシュアウト最小化に直結し、かつ一旦返済額を減らすことができれば、その後長期的なメリットを享受できます。
ローン返済額を減額するには、「繰り上げ返済を行う」「金利を引き下げる」といった方法があります。金利交渉については借入先金融機関と話し合いをすべきであり、ある程度の交渉シナリオをイメージしておくほうが、成功する可能性は高くなるでしょう。
今回は、金利交渉のシナリオを中心にお伝えしたいと思います。
手元現金を維持する重要性
前述のとおり、ローン返済額を減額する方法には「繰り上げ返済」と「金利交渉」があります。
金利交渉には、今回の記事で紹介させていただく手元現金を武器にした金利交渉や、好調な決算成績を武器にした金利交渉などがあります。
どの方法でも金利を引き下げられる可能性はありますが、交渉は武器が多いほど有利に進めることができます。手元現金を多く保有しているほうが交渉で使えるシナリオが多くなり、かつ強い武器になります。
物件購入時の融資を受ける際、手元現金が多いほうが融資を受けやすいことを知っている方は多いですが、手元現金が多い事が購入後のローン返済額を下げる交渉においても有利であることを知っている方は少ないようです。
賃貸経営の安全性を高めることに加えて、借入後のローン返済額を下げていくという観点でも、手元現金は多めに保有しておくことをおすすめします。
友好的金利交渉シナリオ
ここからは、具体的な金利交渉の方法について説明します。まずは、その後の金融機関との良好な関係を維持しつつ、金利を引き下げる交渉シナリオを紹介します。
シナリオを紹介する前に、金融機関が貸付金利を決定するまでの基本的な流れを確認しておきましょう。金融機関は与信リスクが高い借り手には高い金利を設定し、与信リスクが低い借り手には低い金利を設定します。
「高い金利」「低い金利」の基準は金融機関によって異なりますが、金融機関は貸付金が返済される可能性が高いと判断した借り手には多く貸したいと考え、逆に貸付金が返済されない可能性が高い(貸倒リスクが高い)借り手には貸付金額を制限したいと考えます。
したがって金利交渉をスムーズに進めていくためには、金融機関に「与信リスクの低い借り手」とみなされる必要があるわけですが、その一つに「定期預金を増額する」という方法があります。
仮に債務者が破産したとしても担保が充分にある債務者であれば、金融機関はその担保を売却して貸付金を回収することができます。定期預金を増額することは、金融機関にとっては担保が増えることと同義であり、その預金をより高い金利で貸し付けることで収益を上げることもできます。
ここで重要なのは、定期預金を増額した後に金利交渉するのではなく、定期預金の増額をちらつかせながら交渉をしていくことです。
決算の内容が申し分ないため定期預金を増額するのであれば、金融機関にとっての与信リスクが低くなることは明らかなので、これを武器にして交渉してみましょう。
定期預金の金額や期間、下がる金利幅については、できる限り少ない金額、できる限り短い期間で、金利を最大限に引き下げるつもりで交渉に臨むようにしましょう。
敵対的金利交渉シナリオ
もう1つの交渉シナリオは金融機関と敵対的に交渉するというもので、失敗するとその後の関係性が悪化する可能性があるので注意が必要です。
金融機関は、優良な貸付先の貸付残高が減少することを嫌がります。ましてや自分たちの貸付先だった債務者に、他の金融機関で借り換えをされることはさらに嫌がります。
この心理をうまく利用して交渉を進めていくのが、敵対的金利交渉シナリオです。
つまり、より有利な条件で借り入れができる金融機関への借り換えを検討していることをちらつかせながら、金利交渉を進めていくのです。
この交渉術で求められるのは、現実的かつ具体的な情報を現在の借入先に伝えることです。
たとえば、借り換え先の金融機関で20年以上の借り入れが難しいことは誰が見ても明らかなのに、「30年で借り入れができる」といった非現実的な情報を伝えないことです。また、借り換え先の担当者からのメールを見せるなど、交渉を進めている証拠を相手に差し出すことも重要です。
ただし、借り換え先との守秘義務もあるので、出せる情報だけを出すようにしましょう。
敵対的金利交渉においても現金を多く保有しているほうが、話が現実的になるという意味で交渉を有利に進めやすくなります。
現在の金融機関で借り入れを継続していくことを考えている場合は、まずは友好的金利交渉を進めることをおすすめしますが、本格的に借り換えを検討しており、現在よりも融資条件が良くなる可能性が高い場合は、敵対的金利交渉でも問題ないでしょう。
その人の状況やその時の情勢によってベストな方法は変わるので、臨機応変に交渉方法を選択するようにしましょう。
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