宝くじは「負けるゲーム」 投資時に知っておきたい「期待値」の考え方
(画像=Princess_Anmitsu/Shutterstock.com)
平 行男
平 行男
フリーライター。企業広報の制作会社を経て2005年からフリーランスに。主にビジネス、マネー、ITの分野で、Web、書籍、広報・販促媒体などメディアを問わず執筆活動を展開している。ライティングのほか企画・編集・簡単な撮影も行う。

投資の分野でよく使われる「期待値」という言葉をご存じでしょうか。たとえば1枚300円の宝くじの期待値は150円程度で、つまり買うと損するゲームです。株式投資の期待値はどのように考えればいいのでしょうか。期待値について知っておくと投資手段を選ぶ際の参考になります。

期待値とは?宝くじでいうと?

期待値とは何でしょうか。少し複雑な計算が必要な統計学の「期待値」とは異なりますが、かつて村上ファンドとして一世を風靡した投資家・村上世彰氏が独自に考えた「期待値」が非常に分かりやすいので、ここに紹介します。

たとえば、百円を投資する場合の「期待値」の計算方法は、次のようになる。

  • 〇円になる可能性が二〇%、二百円になる可能性が八〇%であれば、期待値は一・六(〇×二〇%+二×八〇%=一・六)。
  • 〇円になる可能性が五〇%、二百円になる可能性が五〇%であれば、期待値は一・〇。
  • 〇円になる可能性が八〇%、二百円になる可能性が二〇%であれば、期待値は〇・四。
    出典:『生涯投資家』(村上世彰著、文藝春秋)

このようにして期待値を計算し、「期待値が1を超えないものには、投資する意味がない」と村上氏は説いています。たとえば宝くじは0.3、公営ギャンブルは0.75、カジノは0.9強と、いずれも1を下回っているので、手を出さないことにしているそうです。宝くじなら、たくさん買えば買うほど高額当選を引く可能性は高まっていきます。

しかし最終的に当選金額の合計は、購入金額の30%程度に近づいていくということです。理論上、損するようにできているのです。

株式投資の期待値は「株式益回り」で考える

では、株式投資の期待値はどれくらいでしょうか。株式投資の期待値を考えるには、「株式益回り」という考え方が有効です。株式益回りとは、1株当たり純利益(EPS)を株価で割って得られる利回りのこと。その会社が、1年間にどれくらいの利益を稼ぐのかを表した指標です。たとえば純利益が100、株価が1,200円なら、益回りは100÷1,200×100=約8.3%となります。

つまり、この会社に投資すれば元本が1年後には約8.3%上昇することが期待できるというわけです。ただし株価は相場の状況により大きく変動されるものです。市場に対して不安が大きいと、投資家はリスクが高いと考え、リスクに見合ったリターンを求める傾向にあります。そのどれくらいのリターンを求めるかの度合いを示したものが「リスクプレミアム」です。

リスクプレミアムは、先ほどの株式益回りから10年国債利回りを差し引いた数値となります。市場に対する不安が大きいとリスクプレミアムは上昇し、不安材料が少ないとリスクプレミアムは低下。2010年代以降の東証一部のリスクプレミアムは、おおむね6%超上回る水準で推移しています。リスクプレミアムが高いということは、得られる利回りは高いものの、その株式を買いたい人が少ないという状態です。

いわゆる「リスクオフ」です。リスクプレミアムは株式だけでなくどの資産にも当てはまり、市場や資産ごとに異なります。基本的にはハイリスクであるほどリスクプレミアムも高くなります。このような指標から株式市場への「期待値」を知ることが、投資に際しての判断基準の一つになるといえるでしょう。

それでもやっぱり買いたい!?

「宝くじがいくら期待値としては低いといっても、買わなければ当たらない!」という人もいるかもしれません。たしかにその通りです。買った人のなかから確実に当選者が出るわけですし、買わなければ高額当選者の仲間入りはできません。だからこそ「負けるゲーム」と分かっていても買ってしまうのが人の性(さが)というものでしょう。

しかし買えば買うほど損すると分かっているものを大量に購入するのはおすすめできません。そのため一獲千金を期待して買うとしても、買う額はほどほどにするのがいいのではないでしょうか。

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