国土交通省は3月23日、令和3年1月1日時点の公示地価を発表した。住宅地・商業地ともに対前年比でマイナスの地点が多い中、今後の不動産市場に与える影響を専門家の意見をもとに考える。

千葉県松戸市,クラウドキッチン

全国平均が6年ぶりに下落

 今年1月1日時点の公示地価は、全用途の全国平均で6年ぶりに下落に転じた。訪日外国人観光客数が堅調な伸びを続けてきたこの数年は、三大都市圏の商業地を中心に地価が上昇傾向にあった。しかし、昨年からのコロナ禍の影響で観光や宿泊などの需要が急減し、公示地価も主に三大都市圏での経済の失速を表すような数値となった。中でも大阪随一の繁華街であるミナミの地価下落は顕著で、道頓堀川にかかる戎橋周辺は前年比でマイナス20%を超える下落幅を記録した地点も少なくない。
 対照的に全用途で地価の上昇がみられたのは、三大都市圏に続く地方圏の主要4市(札幌、仙台、広島、福岡)である。特に福岡市の商業地は全国上昇率上位10地点のうち8地点を占める状況。これは訪日客に限らず地域経済が盤石であることに加え、行政と民間が協力し博多の中心地・天神で展開されている大規模な再開発プロジェクト「天神ビッグバン」への期待感の大きさも伺うことができる。

選ばれるエリアと選ばれないエリア

 局所的な地価上昇は観測されたものの、全国平均ではコロナ禍に起因する影響を受けた形となった最新の公示地価。不動産市場にはどのような影響が考えられるのか。投資市場の展望に関して専門家は「選ばれるエリア」と「選ばれないエリア」の二極化が加速すると予測する。フローク・アドバイザリー(東京都港区)の成田隆一氏は「『駅近』や『高い繁華性』といった普遍的な価値基準は残りつつ、コロナ禍で新しい生活様式が定着しつつある中、不動産投資に対する新しい価値基準も生まれています」と話す。

不動産売買市場では物件の選別進み二極化

難波不動産鑑定(大阪市西区)の難波里美氏は、不動産売買市場は買い手優位への移行を示唆しながら、「立地と物件の選別は進み、不動産の二極化がますます進むでしょう」と述べる。不動産に対する投資意欲は国内・外資問わず依然として高く、通年でみればマイナス基調であるものの昨年後半から地価が上昇に転じていることからも、売買市場に関しては「選ばれるエリア」への需要がより高まることが予測される。
 また公示地価の急激な変動は相続にも影響を及ぼす可能性があると前出の成田氏は指摘する。相続する資産が不動産を含む場合、公示地価の急激な変動は財産の分配にバランスを欠いてしまう恐れがある。現在あるいは今後相続のシミュレーションを行う際には、不動産価格の変動を逐次観察し、次の世代で「争族」が起きないような財産分配を想定すべきだろう。

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