デリバリー専業「クラウドキッチン」が都心ビル活用の選択肢に

 食事のデリバリー需要が高まっている。コロナ禍で外出自粛が広がったことから、その勢いは加速した。なかでも注目されるのがデリバリー専業「クラウドキッチン」だ。複数の厨房スペースがあり、そこに各飲食店が入居して宅配食用の調理に集中して取り組む。不動産業界でも物件活用の手段となりそうだ。

シェフファーストの信念 西新橋にクラウドキッチンビル誕生

 マウンテン(東京都港区)は「ウーバーイーツ」に代表される宅配食を主に扱い、デリバリーを中心としたクラウドキッチン事業を展開する。自社のクラウドキッチン第一号店として、西新橋エリアの1棟ビルを活用した調理場「キッチンマウンテン」をオープンする。
 同物件はマウンテン株式会社の関連会社が保有。築60年超の地上4階地下1階の物件をフルリノベーションし、11の厨房スペースを備えたクラウドキッチンビルとして稼働する。2月中旬頃に一部オープンし、グランドオープンは3月を予定している。
 コロナ禍のなかで一躍注目を浴びたクラウドキッチンやゴーストレストランだが、米国やインドなどの海外では2018年頃から台頭してきた。代表取締役の石井善之氏は「飲食業界に良い影響をもたらすもの」として、日本での展開の機会をうかがってきた。
 「現在の飲食店は料理をつくること以外に、フロアでの接客や経理などの業務が発生します。シェフにとってこれらの業務は料理をつくる時間を割くことになります。デリバリーやテイクアウトがメーンとなるゴーストレストランやクラウドキッチンは、シェフの集中できる環境が築け、楽しんで調理できると考えました」

経営・営業両面でサポート充実 渋谷・新宿で次の開業地を探る

 キッチンマウンテンでは厨房スペース以外に営業面のサポートも手厚くする。たとえば経営面のサポートはもとより、SNSやデリバリープラットフォームでの集客支援も行い、食材の仕入れもコストダウンできるようにする。キッチンマウンテンはデリバリーのほかテイクアウトにも対応するが、将来的にはキッチンカーでの販売や、ミールキットなどのeコマースや調理体験などのコンテンツ充実化の施策も打っていく予定だ。
 「1号店は好立地で、デリバリー需要が高い港区、中央区、渋谷区、千代田区を商圏に持ち、テイクアウト需要が最も高い虎ノ門、西新橋、汐留などのオフィス街に立地しています」(石井氏)
 2号店以降はまだ決定していないが、渋谷、新宿の両エリアで物件の選定を進めているという。

オーナー単独は難しさも サブリースプラン用意へ

 不動産業界にとってクラウドキッチンやゴーストレストランはビルや空室の新しい活用の形として期待されている。コロナ禍以前より宅配需要は伸びていて、ライフスタイルとして定着してきているのも追い風だ。キッチンマウンテンでは、坪単価を通常の飲食ビルより高く設定できることも魅力の一つだ。
 ただ、ビルオーナー単独で行うのはハードルが高いかもしれない。石井氏は条件として「クラウドキッチンを行うのにはガスや電気、給排気などのインフラを整えることが条件です。またデリバリーを行うための配達員に対応するための動線の確保、また許認可についても通常の飲食店とは異なる認可が必要になるケースもあります。そしてデリバリーやテイクアウトの営業支援をビルオーナー単独で行えるかどうかがポイントになります。キッチンマウンテンでは営業支援にコミットするため、レベニューシェアを収益の基軸としてシェフやビルオーナーのウィンウィンの関係を築いています」と指摘する。これらを考慮すると、プロと協力して進めていくほうがリスクは低く、収益が高まる。
 マウンテンではサブリース形式での出店戦略も検討している。ビルオーナーに対する支援も期待できそうだ。

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