賃貸経営,リスク,損害保険
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佐古野 道人
佐古野 道人
一般企業で不動産運用や税務を経験後、ファイナンシャル・プランナーとして独立。マネー専門ライターとしてWEBライティングの他、書籍の企画・構成にも携わる。得意分野は資産運用。日本FP協会資格認定会員(AFP)。

賃貸経営には、リスクが付きものです。対応する損害保険の種類は多く、慣れていない人にとってはややこしく感じるでしょう。ここでは代表的な施設賠償責任保険、火災保険、家財保険の概要をお伝えします。オーナーになりたての人や賃貸物件の購入を検討している人は、リスク対応を考える際の参考にしてください。

家主の他人への責任に対する施設賠償責任保険

保険の概要を整理する際は、「誰の」「何」に対する補償なのかを明確にするとわかりやすくなります。それぞれ見ていきましょう。

施設賠償責任保険は、「家主」の「他人に損害を与えたときの責任(損害賠償責任)」に対する保険です。損害賠償責任には、「施設管理の不備」と「業務上の不注意」があります。

損害賠償責任は他人に重症を負わせるといった取り返しのつかないことになると、数千万円単位になることがあります。このように莫大な支払義務が発生しても、事業を継続するために加入するものです。

損害賠償責任は、以下のようなケースで発生します。

・保有しているアパートの階段の手すりがとれて通行人がケガをした
・エントランスの自動ドアが誤作動し、住人の子どもがはさまれて通院することになった
・屋上防水が不十分で雨漏りが発生し、入居者の家財を台無しにしてしまった(一般的に水漏れには特約が必要です)

施設賠償責任保険は、賃貸経営における賠償リスクを幅広く補償する、必要不可欠な保険と言えます。名前がよく似ているものに個人賠償責任保険がありますが、これは日常生活における損害賠償責任に対応する保険で、賃貸経営の業務上で発生する賠償責任については補償されません。

建物への損害に対する火災保険

マイホームの火災保険に加入している人は多いでしょう。これは火災や風災、水災で建物が被害にあった場合に保険金が支払われる保険です。賃貸経営における火災保険も基本的に同じで、家主が所有する「建物」の「受けた損害」を補償します。

収益の源である建物が損害を受けた場合に復旧するため、あるいは収入の減少分を補うために加入します。

賃貸経営向けの火災保険には、さまざまなオプションがあります。たとえば家賃収入特約は、火災などの影響で空室が発生した場合の賃料を補償する特約です。また、居室内で死亡事故が発生した場合の清掃費用や賃料の減額分を補償する「孤独死保険(特約)」といったものもあります。

火災保険とセットで加入する地震保険も前向きに検討すべきでしょう。通常の火災保険は、地震を原因とした火災の場合は保険金が支払われないからです。

入居者の持ち物への損害に対する家財保険

自己居住用の火災保険には、家財道具に対する補償をつけられます。火災や水漏れ、空き巣などの被害にあって家財を失った場合、買替費用が支払われる保険です。家財保険は、「加入者の財産」の「受けた損害」を補償します。

賃貸住宅では家財は入居者のものですから、家主が火災保険をかける必要はありません。加入するとしたら入居者負担です。入居者が自分の費用で自分の財産を守るために入るので任意のはずですが、賃貸契約では加入を必須とする家主が少なくありません。

その理由は、家財保険には借家人賠償責任保険が含まれているからです。借家人賠償責任保険は、「入居者」の「家主に対する損害賠償責任」を補償します。たとえば不注意で出火し建物が焼けてしまった場合、入居者には回復する義務が生じます。修理費用は数十万円~数百万円、大規模な火災であれば数千万円に上ることがあり、個人で支払える範囲を超えてしまうかもしれません。

入居者に借家人賠償責任保険を含む家財保険へ加入してもらうことは、賃貸経営では必須と言えます。

補償のタイプは違っても賃貸経営には欠かせない損害保険

賃貸経営に関わる3種類の損害保険について、概要を説明しました。施設賠償責任は「家主」の「損害賠償責任」、火災保険は「家主が所有する建物」の「損害」、家財保険は「入居者が所有する財産」の「損害」、それに付帯する借家人賠償責任保険は「入居者」の「家主に対する損害賠償責任」に対応するもので、いずれも賃貸経営には欠かせない損害保険と言えます。

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