こんな領収証ならバレない?私的支出を経費にしたときのペナルティ
(画像=YANUSY編集部)
鈴木まゆ子
鈴木まゆ子
税理士・税務ライター|中央大学法学部法律学科卒業後、㈱ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。「ZUU Online」「KaikeiZine」「朝日新聞『相続会議』」「マネーの達人」「納税通信」などWEBや紙面で税務・会計に関する記事を多数執筆。著書「海外資産の税金のキホン(税務経理協会、共著」。

不動産投資を行った場合の不動産所得は投資家自らが確定申告を行い納税するため、つい気が緩みがちです。今回は、避けておきたい経費計上の事例を紹介しつつ、必要経費の基本とルールを守らない場合のペナルティについて解説します。

「こんな領収書はバレない」と思っている投資家は結構多い

不動産投資に関する所得税は、給与や年金と異なり自ら収支や税額を計算したうえで申告・納付します。つまり税務署は普段、領収書や帳簿を直接見ないわけです。

このことから不動産投資家の中には、あからさまな不正はしないものの「領収書でこんな風にしてもバレない」と思い込み以下のような処理をしてしまう人がいます。

「レシート」ではなく「領収書」をもらう

レシートだと個別のメニューや購入内容が分かってしまうため、領収書でもらっているという人はいませんか。領収書ならば総額しか記載がないため「プライベートの支出が混じってもバレない」と考え、あえて領収書を受け取る人も少なくありません。

しかし金額や購入頻度が事業の規模や売上と比べて不自然に多いようであれば税務調査で目を付けられる可能性があります。

近くの飲食店での家族との食事代を経費計上

投資家の中には、家族との外食代を「会議費」などの名目で経費計上しているケースがあるかもしれません。しかし家族との食事代は所得税法上の経費にならないため注意が必要です。レシートから食事したお店が自宅近くであることがわかれば、税務調査で指摘される可能性があります。

「自宅事務所だから」と家賃を全額経費計上

不動産投資家の中には、自宅を不動産賃貸事業の拠点と考え「自宅兼事務所だから」と家賃全額を経費計上している人もいます。これで問題なさそうに見えますが税法はより厳格です。

自宅兼事務所の必要性はもちろんのこと、事務所分の経費を計上するにしても自宅部分と明確に区別したうえで合理的な家賃部分のみ経費計上するのが原則です。

これらの例から税法上の経費の考え方は私たちが思う以上に厳しいことが分かります。

不動産所得の必要経費の基本

不動産所得を計算するうえでの必要経費の基本を押さえましょう。必要経費として計上できるものには次のようなルールがあります。

  • 不動産収入を得るために直接要した費用の額である
  • 不動産収入が発生した年に生じた事業上の費用の額である
  • 費用の支払い義務が発生しており、金額が年末までに明確になっている

具体的には、次のようなものが必要経費になります。

  • 賃貸物件の管理費
  • 固定資産税、事業税、印紙代
  • 修繕費(ただし状況や金額によっては資産計上します)
  • 水道光熱費
  • 減価償却費
  • 損害保険料
  • 人件費(ただし要件を満たさないと家族への支払いは給与にならない)

これらの経費が賃貸と自宅を兼ねた物件にかかるものである場合「不動産収入を得るために直接要した費用」のみが経費となるため、自宅部分と賃貸部分を部屋面積などで合理的に按分し、事業部分のみを計上することが必要です。

この「合理的な按分基準」は、あいまいになりがちな会議費や交通費、通信費を計算するうえでも必要になります。

「プライベートの支出も経費に」がバレたときのペナルティ

プライベートの支出を必要経費に計上したりプライベートと賃貸事業をきちんと分けずにまとめて経費計上したりしたことが税務署に分かった場合、以下のような処分を受けます。

  • 必要経費が認められず所得額が増えた結果、本来納めるべき所得税が上がる
  • 過少申告加算税、延滞税などのペナルティを払わなくてはならない
  • 意図的な税逃れの場合「本来の納税額×35%」の重加算税を納めなくてはいけない
  • 青色申告を行っていた場合には、青色申告が取消になることも

自ら確定申告する場合、帳簿まで提出するわけではないので、投資家としては「これくらい大丈夫だろう」と考え、つい必要経費を余計に計上したくなります。しかしある日突然やってきた税務調査で経費の水増し計上や不正がバレた場合、思わぬ痛手を被りかねません。

気を緩めることなく適正に所得額や税額を計算し、正しく申告するようにしましょう。

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