ついに、居住用賃貸マンションの消費税還付を封じ込める税制改正がありました。
居住用賃貸マンションの消費税還付とは、不動産取得時に消費税が還付されることで、例えば、建物代金が2億円(税抜き)なら、2,000万円分の消費税が還付されることをいいます。この消費税還付の歴史は古く、約20年以上前から行われていました。平成22年と平成28年に消費税還付を封じ込める大きな税制改正がありましたが、完全には封じ込めることはできませんでした。
しかし、令和2年の税制改正により、居住用賃貸マンションの消費税還付を行うことが実質できなくなりました。その改正内容を簡単に説明すると「居住用賃貸マンションの消費税還付はダメ」というピンポイントで狙い撃ちした内容です。
それでは、改正の背景を説明する前に、そもそもの消費税納税・還付の仕組みについて見ていきましょう。
消費税の納税・還付の仕組みとは
消費税は簡単に説明すると、売上(預かった消費税)と経費(支払った消費税)を相殺して、納税または還付になります。
例えば、
売上550万円(税込み)、仕入330万円(税込み)の場合、50万円-30万円で、20万円の納税となります。
これは、預かった消費税50万円と支払った消費税30万円では、預かった消費税の方が多いため、差額の20万円を納税するということです。これが消費税の基本的な考え方になります。
では、売上と仕入の金額が反対の場合はどうでしょう?
売上330万円(税込み)、仕入550万円(税込み)の場合、30万円-50万円で、20万円の還付となります。
支払った消費税の方が多いため、還付になりますね。
これを不動産投資に当てはめた場合…
売上550万円(税込み)-不動産購入(建物部分)2億2,000万円(税込み)=50万円-2,000万円で1,950万円の還付になります。
3年後に消費税還付金が没収される!?
ここで注意しなければいけないのは、何もしなければ、3年後にこの消費税還付額が税務署に没収されてしまうことです。
家賃収入は一般的な売上と違い、消費税が課税されない売上に分類されます。これを「非課税売上」といいます。
そして、3年間の課税売上と非課税売上の合計の内、課税売上の割合が50%以上無いと、消費税還付額が没収されてしまいます。
図で表しますと下記のようになります。
※第1期目に100%消費税還付を受けた場合を想定しています。
3年間の課税売上割合が50%以上ないため、消費税還付額が没収されてしまいます。改正前の税制をもう一度見てみますと、「課税売上割合が50%以上無い」と消費税還付額が没収されてしまいます。ということは…「課税売上割合が50%以上あれば」消費税還付額は没収されないということです。
3年後の消費税還付金の没収を防ぐ方法は?
上記でみたように、課税売上を意図的に計上する必要があります。そこで考えられたのが、金(GOLD)の売買を繰り返すことです。日本は諸外国では珍しく、現物の金の売買には消費税が課税されます。では、多額の金の売買を行った場合の図を見ていきましょう。
第1期に多額の金の売買を行った結果、3年間の課税売上割合が54.5%になりましたので、消費税還付額を没収されることは無くなりました。なお、金を売買すると手数料がかかります。また、買った金が売却するまでに値下がりしてしまう可能性もあります。そのため、基本的には金の売買で利益を上げることは難しいといえるでしょう。しかし、消費税が還付されるための必要経費と考えればいかがでしょうか?数十万円の経費で数千万円の還付を受けることができれば、どちらが得か一目瞭然です。
この消費税還付の仕組みを国税庁が問題視していましたが、遂に令和2年の税制改正で消費税還付が封じ込められました。それが、冒頭でも述べた「居住用賃貸マンションの消費税還付はダメ」というピンポイントで狙い撃ちした内容です。条文は複雑怪奇なので、ここでは省略しますが、上記の図のような複雑な計算は考えず、シンプルな改正内容となっているのです。
終わりに
令和1年中で噂されていた税制改正は「金を課税売上ではなくす」や「本業に関係ない無意味な売上は、課税売上割合の計算から除く」というものでした。実際の改正は全く違う内容でしたが、その影響は計り知れません。
家賃収入に消費税が課税されないため、基本的にオーナーは消費税の納税義務がなく、消費税還付は悪だと国税庁は考えていますが、本当にそうなのでしょうか?管理費や修繕費、水道光熱費などには消費税が発生し、この消費税をオーナーが負担しています。しかし、家賃収入は消費税が課税されないため、消費税分を入居者に転嫁することができません。国の考え方を一方的に押し付けるのではなく、納税者の意見も聞くことが本当の民主主義だと思います。「消費税の負担者は最終消費者であり、不動産オーナーではない」という大原則を忘れないでいただきたいものです。今後の税制改正では不動産賃貸業の方が合理的な根拠もなく不利にならないよう、願うばかりです。
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所属税理士(執筆者)村上 覚
代表税理士 田中 美光
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