健康経営やWELL認証関心高まりも オーナーが需要を生かす手段は限定的
(画像=ostap25/stock.adobe.com)

 オフィス仲介や内装構築などのワークプレイス事業を展開する47ホールディングス(東京都渋谷区)は産業保健業務のサポートプログラム「リモート産業保健」を展開するエス・エム・エス(東京都港区)と業務提携を結んだ。送客を行い、快適な職場環境づくりをサポートしていく。数年前より「健康経営」の意識が高まり、企業側は身体・精神両面で健康的なオフィスの構築に力を入れる。このようなニーズに対してビルオーナーが応える手段があればリーシング向上にもつながりそう。しかしながら、現状は打つ手が限られる。

オフィス仲介7割「拡張」健康経営ニーズも高まり

 47HDの阿久根聡社長は直近のオフィス需要について「オフィス拡張ニーズが強くなっている」と話す。同社が展開する賃貸オフィス情報・仲介サービスの「officee」は主にスタートアップやベンチャー企業などが利用する。コロナ禍で一時は解約や縮小傾向が強まった。直近では成長軌道に乗る新興企業が社員増に対応するため、より規模の大きいオフィスに移転する動きが強まっている。同社の直近の問合せ件数のうち7割は拡張だった。

 働き方は出社とリモートワークを組み合わせた「ハイブリッド型」にしていることが多い。ワーカーからは歓迎された一方、「運動量の減少」や「孤独感」など様々な課題が出てきた。こういった課題が「健康経営」ニーズの拡大につながっている。

 産業医は従業員50名以上の会社であれば選任義務があるが、50名未満であってもメンタルケアのために産業医を置くケースがある。人員を拡大させる成長ベンチャーの従業員数はこの境目であることも多い。阿久根氏は「今回の業務提携がそういった企業の課題を解決するサービスとして展開できる」と見ている。

 高まる企業の「健康経営」ニーズ。ビルオーナーの視点に立てば、このニーズに対応する手が打てればリーシングのポイントとして活用することができる。

 そのひとつとして挙がるのが、「WELL認証」。GREEN BUILDING JAPANの公式サイトでは「人の健康とウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に良好であること)に影響を与えるさまざまな機能をパフォーマンスベースで測定・評価・認証する評価システム」と紹介されている。阿久根氏はこういった認証について「テナント企業側の認知度も高まり、関心は強くなっている」と話す。

共用部充実化や仲介等との連携強化が現実的

 一方でビルオーナーが現状で打つ施策としては「費用対効果で割に合わないのでは」とする。その理由は、日本国内での認証件数が少なく効果が見通せないことや、認証取得までのコストが一定以上かかること、また認証が米国を基準としていることから日本にあてはめると厳しい基準になっていること、などが挙がる。阿久根氏は現実的な施策として「共用部の充実化や、屋上空間をリフレッシュスペースとして整備すること」を提案する。

 トレンドとなっている「健康経営」だが、ビルオーナー自身が打てる手は少ない。そういった需要を取り込むには、ニーズをしっかりと把握している仲介会社・内装会社との関係性構築が現実的な手段となっている。

ビル経営

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