まだ空室……その不動産「コンバージョン」したほうがいいかも
(画像=zlikovec/Shutterstock.com)
佐古野 道人
佐古野 道人
一般企業で不動産運用や税務を経験後、ファイナンシャル・プランナーとして独立。マネー専門ライターとしてWEBライティングの他、書籍の企画・構成にも携わる。得意分野は資産運用。日本FP協会資格認定会員(AFP)。

ビルオーナーにとって、空室は最も悩ましい問題の一つです。部屋が入居者で埋まらない理由の一つに、立地にそぐわない種類の物件であることが考えられます。このような状況を打破する対策として挙げられるのがコンバージョンです。

コンバージョンとは?どのようなメリットがあるのか

コンバージョンとは、建物の用途変更を伴う改築のことです。例えば住居を事務所に変えたり、事務所を倉庫にしたりするといった施策が挙げられます。よく似た概念にリノベーションがありますが、こちらは用途変更を伴いません。リノベーションの例としては、もともと賃貸マンションして使用している物件を壁や水回りなどの設備や間取りを一新するといった場合です。

居住用という用途は変わらないので、コンバージョンとは呼びません。コンバージョンの主な目的は、周辺のニーズに合わせた適切なタイプの物件に変更し、収益性を高めることにあります。例えば住宅地にマンションを持っていて再開発により、オフィスとしての需要が増えた場合です。このまま住居として持ち続けるより貸事務所に変更したほうが、多くの賃料を受け取れるようになるかもしれません。

反対のパターンとして、商業地で賃貸事務所として競合としのぎを削っているビルがあったとします。これをビジネスホテルとして生まれ変わらせたらどうでしょうか。「地域で唯一の宿泊施設」といった希少価値があれば、差別化につながるでしょう。特に近年、民泊の需要が高まり、旅館業法や住宅宿泊事業法によって、建物を宿泊施設として利用することへの規制が緩和されました。

事務所を簡易宿所や住居などに用途変更する例は増えていくでしょう。不動産は、文字どおり立地を変えることはできません。しかしコンバージョンによって、周辺環境に合った建物に生まれ変わらせることはできるのです。

コンバージョンの事例

2012年に国土交通省が公表している「中心市街地の空きビル活用及びリニューアル事例調査」によると、95ものコンバージョン事例が掲載されています。比較的大規模な建物が多いのですが、不動産を有効活用するためのアイディア集として参考になるでしょう。栃木県佐野市の駅近くの事例を一つ紹介します。かつては商店街の中心的存在であったデパートが、経営不振により撤退しました。

そのビルを地元の医師が買い取り、高齢者向け住宅として改修。介護老人保健施設やサービス付き高齢者向け住宅、診療所などが入る総合的な介護施設に生まれ変わらせました。繁華街が近いため入居者にとっての利便性も高く、地域の活性化にもつながっているといいます。賃貸需要の変化に合わせたコンバージョンの好例です。

コンバージョンは、建て替えに比べてコスト面で有利です。上記とは異なる国土交通省の資料「公共建築物の老朽化対策に係る事例集」で、専門学校を児童相談所に改修した事例を取り上げています。「新築費の3分の2程度で施設を整備することができ、建物の長期利用につながった」とのことです。

注意点

コンバージョンを検討するにあたってまず注意することは、地域によって利用できる建物の用途に違いがあることです。建物を建てるときには、建築申請が必要になります。用途地域に沿った用途でなければ、許可は下りません。建築後に当初とは別の用途で使っても、違法となる可能性があります。例えば、保育所や診療所は、どの用途地域にも建てられます。

しかしホテルや旅館は住居専用地域には建てられません。用途地域は、都市計画法にもとづいて各市町村が都市計画図によって定めています。自治体のホームページや役所に備え付けられた地図で確認可能です。また変更する内容によっては、消防設備の改修が必要になることがあります。なぜなら用途によって消防法の安全基準が変わることがあるからです。

コンバージョンはリノベーションやリフォームに比べ、満たさなければならない法的な要件が数多くあります。検討するのであれば、経験の豊富な不動産会社に依頼したほうがスムーズかつ確実です。

賃貸需要に合わせて適者生存をはかるコンバージェンス

用途変更を伴う建物の改修、コンバージェンス。賃貸需要に合わせて物件の役割を変化させることにより、収益性の改善が期待できます。不動産の世界は、変化に適応できる人が生き残るのです。

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