「サラリーマンが不動産投資するなら賃貸?民泊?」判断すべき3つのポイント
(画像=Brian A Jackson/Shutterstock.com)
鈴木まゆ子
鈴木まゆ子
税理士・税務ライター|中央大学法学部法律学科卒業後、㈱ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。「ZUU Online」「KaikeiZine」「朝日新聞『相続会議』」「マネーの達人」「納税通信」などWEBや紙面で税務・会計に関する記事を多数執筆。著書「海外資産の税金のキホン(税務経理協会、共著」。

サラリーマンも副業が必須の時代となりました。不動産投資を考える中で、「賃貸か、民泊か」で悩む人は少なくありません。今回は、賃貸か民泊かを検討する際の3つのポイントについて解説します。

不動産の活用方法は「賃貸」以外に「民泊」も

これまで不動産投資とは賃貸事業を指し、居住用や事業用の不動産を一定期間貸し出すものでした。しかし、最近は「民泊」という新たな不動産投資方法が注目を浴びています。

民泊とは、旅行者などにホテルや旅館などに代わる宿泊所として自宅の一室やマンションを提供するというビジネスです。Airbnb(エアビーアンドビー)といった仲介サイトの普及や、2020年の東京オリンピックに向けたインバウンド需要の増加を見込んで急速に広まりました。

民泊の期間は数日から1週間程度の短期間で、自宅の一室や所有不動産を貸し出すケースが大半です。民泊事業は、不動産投資を専業でやっている人よりも、サラリーマンや自営業者が副業として行うケースが多いようです。

「賃貸」と「民泊」、サラリーマンが検討するときのポイント

給与が増えず、老後資金を心配するサラリーマンにとっては、副業としてできる不動産投資は気になるところでしょう。不動産投資を始めるなら、「賃貸」と「民泊」のどちらを選ぶべきなのでしょうか。この選択では、以下の3つのポイントがカギになると思われます。

ポイント1:事前の手続

まず、事前の手続きが必要かどうかです。賃貸の場合、仲介や代理でなければ特に資格や免許は必要ありません。一方、民泊は事前の手続が必要です。

民泊に関連する法律は3つありますが、民泊新法では届出が、国家戦略特区法では認定が、旅館業法に従って旅館業・簡易宿泊所として営業するなら許可が必要です。民泊新法では届出さえ出せばよく、宿泊所としての制限も特段ありませんが、旅館業法に則るなら、さまざまな要件をクリアしなければなりません。

また、賃貸であれ民泊であれ、個人事業主として開業することになるため、「個人事業の開業届出書」「所得税の青色申告承認申請書(該当者のみ)」などの書類を所轄の税務署に提出する必要があります。

民泊の場合、マンションや町内会が見知らぬ人の出入りや夜中の騒音を懸念する可能性もあります。民泊を始めるなら、管理組合や管理会社、町内会などに確認しておいたほうがいいでしょう。

ポイント2:運営時の手間・収益性

検討すべきことは、開業時の手続きだけではありません。むしろ運営時の手間や収益性のほうが、判断材料としては重要でしょう。

運営時の手間は、民泊のほうが賃貸よりも大変かもしれません。賃貸の場合、賃貸借契約・修繕などの物件管理、資産価値の維持は不動産管理会社が行うケースがほとんどです。

一方で民泊は、規模が大きい場合は別として、自宅や空室を一時的に活用するだけならばオーナー自身が管理することになります。この場合、アメニティの準備や外国語での案内文の作成、事後の清掃などを自分で行わなくてはなりません。

収益性については、賃貸のほう中長期では安定した利益を得やすいでしょう。中長期で物件を貸し出すため、毎月家賃という安定収入を得られるからです。ただし初期投資額が大きいため、ほとんどの場合ローンを組んで物件を購入することになります。また、空室・修繕リスクも念頭に置いておくべきでしょう。

民泊の収益規模は、大きくなりにくいと言えます。貸し出す期間が短期間であることに加え、手続が簡単な民泊新法に従う場合、営業日数を年間180日以下にしなくてはならないからです。ただし、自宅や所有している空き家を活用するだけなので、金銭的な負担はかなり小さいはずです。

ポイント3:節税になるか

サラリーマンにとっての節税効果は、賃貸のほうが民泊よりも大きいです。なぜなら、賃貸は不動産所得として申告できますが、民泊は雑所得として申告することになるからです。不動産所得と雑所得には、以下のような違いがあります。

  • 他の所得との損益通算:不動産所得はできる、雑所得はできない
  • 青色申告:不動産所得はできる、雑所得はできない

損益通算とは、赤字の所得と黒字の所得を合算し相殺することを言います。不動産所得・事業所得・山林所得については、赤字が生じた場合、給与所得など他の一部の所得と損益通算できるため、所得額全体が下がり、節税できる可能性があります。しかし、雑所得は赤字になっても「0円」として扱われるだけなので、節税効果はありません。

また、節税効果の高さで知られる青色申告は不動産所得や事業所得などで認められていますが、雑所得では認められていません。このように、節税効果は不動産所得のほうが大きいと言えます。

損得よりも「自分に合うかどうか」で選ぼう

以上が「賃貸か、民泊か」の判断の目安ですが、これだけでは判断できない人もいるでしょう。あるいは、「有利と判断して始めたのに、うまくいかない」ということもあるかもしれません。

このような場合は、上記の3点だけでなく「自分との相性」も考えましょう。自分に合う事業であれば、多少の手間やコストがかかっても長期で運営することができ、その結果大きな利益を手にしやすくなるはずです。

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