民泊に潜むリスクを考える
(画像=Tero Vesalainen/Shutterstock.com)
檜垣嘉孝
檜垣嘉孝
不動産賃貸仲介業、マンション管理業を経て、不動産専門ライターとして独立。コンサルティング会社を経営する傍ら自らも不動産投資を行う中で、投資家の目線に立った記事制作を心がけています。

2018年6月5日に施行された「住宅宿泊事業法(民泊新法)」の内容を受けて、民泊事業へ参入そのもののハードルは下がり、一定条件を満たしさえすれば、比較的容易に民泊を始めることが可能になりました。空き部屋の有効活用方法として民泊は選択肢になり得ますが、潜在するリスクも正しく理解して進める必要があります。

民泊とは

住宅を宿泊希望者に貸し出すことを「民泊」と言います。2018年6月5日に施行された「住宅宿泊事業法(民泊新法)」では、年間宿泊可能日数が180日以内などの制約がありますが、事前に届出および登録を行えば、比較的容易に民泊を行うことが可能になりました。

2020年に東京オリンピック開催を控えて、訪日観光客数は増え続けている反面、その受け皿となる宿泊施設が不足することを踏まえ、より多くの外国人観光客を取り込みたいという日本政府の思惑があったものと思われます。

「Airbnb」などの、海外の民泊マッチングサイトなどの普及により、日本人・外国人を問わず「民泊を利用したい」と考えている方は増えつつあると思われます。民泊事業を通して、現在保有している物件をいかにして収益化するのかを考えている投資家の方もいらっしゃるかもしれません。

民泊に潜むリスクとは?

「比較的簡単に始められる」という点で、現在、不動産投資を行っているという方にとっては、「やってみようかな」というマインドになっている方もいらっしゃるかもしれませんが、民泊には種々のリスクが伴いますので、それらに対する正しい理解が必須となります。

住民トラブルに発展するリスク

外国人を対象とした民泊ビジネスを考えている場合、同じ物件内の他の住民とのトラブルに発展するリスクがあることを認識しておく必要があります。

特に、外国人と日本人では生活習慣やマナーの面で大きな認識の違いがあります。ゴミ出しマナーや騒音に関する考え方など、日本では常識のことでも、海外では認識が違う可能性も十二分に考えられます。また、物件を不特定多数の人物が出入りすることができる環境になると、盗難や空き巣などのトラブルが発生する可能性もあります。

こうしたリスクを踏まえ、どのように対策するのかが、民泊ビジネスでの成功には必要不可欠と言えます。

共用部分が破損する(通常より汚れる)リスク

マンション内を不特定多数の人物が出入りすることができる環境になると、エレベーターや共用階段、廊下などの共用部分が破損したり、通常より汚れる頻度が高くなるリスクも考えられます。

しかも、民泊利用者は基本的に短期間での宿泊が前提となるため、破損した箇所について発見が遅れてしまうと、責任の所在があいまいになったり、そもそも破損した人物を特定できない可能性も考えられるのです。

資産価値低減のリスク

マンションなどの共同住宅では、資産価値をいかに長く維持することができるのかという点が、投資の成功に密接に関係してきます。

部屋内の消防設備点検や排水管洗浄などを定期的かつ確実に行って、物件の資産価値を維持・向上させるという意識が必要になります。

しかしながら、民泊利用者にはこうした資産価値維持のための活動について理解してもらえない可能性もあります。消防設備点検にご協力いただけなければ火災・災害発生時の初動が遅れるリスクがありますし、長期間にわたって排水管洗浄を行わなければ、配水管が詰まり、最悪の場合下階に漏水してしまう危険性があります。

民泊を行いつつ、どのように投資物件の資産価値を保つのかということを考えなければ、民泊ビジネスで成功することは難しそうです。

収益に大きく影響する可能性も

上述したようなリスクが潜在しているため、民泊においては、「不動産投資の収益に大きく影響する可能性がある」ということを念頭に置いておく必要があります。

長期間にわたって安定的な収益を実現したいと考えている投資家であれば、むしろ民泊は避けて通るべきなのかもしれません。

まとめ

不動産投資家にとって注目度の高い民泊ですが、まずは様々なリスクが潜在していることを考慮に入れて、どのようにリスクを回避しながら運用するのか、ということを考えなければなりません。不動産投資のメリットの一つである「長期間にわたって安定的な収益を得ることができる」というメリットを損なわないような対策と工夫が必須と言えそうです。

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