不動産投資を検討する上で、利回りは欠かすことのできない大切な数値です。投資を行う上での一つの目的は、「利益がでるかどうか」です。しかし、利回りが高ければ高いほど良い投資かといえば、そうとも限りません。なぜなら、高い利回りはそれ相応のリスクとリターンが表裏一体だからです。この記事では、「適正な利回りとは?」について各手法を比較しながら解説します。
不動産投資の適正な利回りとは?
「不動産投資の適正な利回りは何%なのか?」といった疑問に対する、明確な答えはありません。なぜなら、投資の目的は投資家の数だけ存在するからです。例えば、「銀行預金よりも不動産のほうが利回りが高いから投資したい」「株や事業に投資するより不動産のほうが手間にならないから投資したい」など、人によって不動産投資をする理由は異なります。
前者の場合、利回りが目的のため、銀行預金よりも高い2~3%程度の利回りが得られれば充分なはずです。また、後者の場合は手間を省くのが目的のため、株や事業よりも低い5~6%程度の利回りでも満足することでしょう。目的が異なる両者の求める利回りは一致しません。さらに、もっと高い利回りを求める投資家も確実に存在します。
このように投資家ごとにさまざまな利回りが存在する場合、CAPM(キャップエム)という指標で期待収益率を求める方法が合理的です。CAPMとは、簡単にいえば「国債の利回り+市場のリスク」から導かれる収益率のことです。2019年4月19日時点の10年国債の利回りは-0.03%、同日の野村日本不動産投信のリスクが7.63%なので、CAPMは7.6%と計算できます。
投資手法ごとの目安となる利回り
不動産投資にはさまざまな手法が存在しています。当然、手法ごとに利回りも異なります。不動産投資ポータルサイト「健美家」を参考に見てみましょう。
- 都内新築マンション一棟では約4.8%
- 都内中古マンション一棟では約6.3%
- 首都圏(千葉県)新築アパートでは約7.5%
- 首都圏(千葉県)中古アパートでは約9.7%
- 地方(富山県)新築アパートでは約8.0%
- 地方(富山県)中古アパートでは約16.3%
- 地方(群馬県)中古戸建では約14.6%(新築戸建は該当なし)
- 首都圏(神奈川県)賃貸併用住宅では約8.8%(新築中古を問わず)
物件種類別では、「マンション一棟<賃貸併用住宅<戸建て<アパート」の順に利回りが上がっていきます。また、「首都圏より地方」「新築より築年数が古い」という条件ほど、利回りは上がる傾向にあります。
地方中古アパートのメリット、デメリット
上記の例で、最も利回りが高いものは地方中古アパートです。では、「地方中古アパートが最も良い不動産投資なのか?」と問われれば、そうとは言い切れません。なぜなら、地方中古アパートには以下のようなデメリットが存在しているからです。
- 人口が少なく入居者を見つけることが難しいため、空室率が高くなる
- 大規模修繕や設備更新などリフォーム費用が得られる家賃収入に対して高い
- 土地としての価値が低いため、出口戦略に乏しい
空室率を考慮すれば、利回りは1~2割は低下するでしょう。また、リフォームが頻繁に発生すれば、利回りはさらに1~2割ほど下がる可能性があります。売却時に予想を大きく下回る金額でしか売れなかった場合、トータル利回りはさらに低下します。これらのマイナス要因を合計すると、当初の表面利回りが16%だったとしても、実質利回りは半分の8%ほどに低下するでしょう。
どんな投資をしたいのかを明確に
「利回りの高い物件を購入できた!」と喜んだのもつかの間、「たび重なる退去やリフォームのため予想を下回る利回りしか得られなかった」ということもよくあります。もちろん、やりかた次第では事前に予想した以上の利回りを出すことも可能でしょう。ただし、そのためには競合との差別化戦略や地道な営業努力が必要になります。
「本業が忙しいし休日はゆっくりしたいから、なるべく不動産投資に手間はかけたくない」というスタンスであれば、なるべく手間のかからない物件を選ぶべきです。手間のかかりにくい物件の一例としては、築年数の浅い首都圏立地のアパートなどが挙げられます。不動産投資は、決して表面利回りだけで判断すべきではありません。
不動産投資にどれだけ手間をかけられるかという観点からも、自分自身の投資スタイルに合う物件を探してみてはいかがでしょうか。
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