「派手髪iOSエンジニア」のキャッチフレーズを持ち、フリーランスとしてヘルスケアアプリやインバウンド対策アプリなど今注目のアプリの開発に携わるAkioさん(@akio0911)は自身で仕事の意味を再定義し、自らの意志を基軸にしたキャリア形成を続けてきた。

Akioさんがエンジニア層の人気を集めるのはビジネス面だけではない。自身の仕事にコミットしながら、個人でエンジニア向けの短期講座「アプリ道場」を運営したり、セミナー登壇したり、SNSで積極的に発信したりと、仕事におけるポートフォリオだけでなく、ライフワークの充実も手に入れているからだ。

公私を切り分けつつ、いずれにも十分な時間を投資するAkioさんの生き方には、どのような考え方やライフハック術が潜んでいるのだろうか。Akioさんインタビュー最終回の後編では時間管理術に迫りながら、フリーランサーの資本が何であるかを考察する。(取材・宿木雪樹 / 写真・大口葉 / 特集協力・一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会

▼前回までのインタビューはこちら
令和のフリーランスに必要な「武士のようにフレキシブルな仕事観」とは【Akioさんに聞く・前編】
「教育好き」が「派手髪iOSエンジニア」としてフリーで稼げるようになるまで【Akioさんに聞く・中編】

Akioさん
派手髪iOSエンジニア。大学卒業後、受託開発会社や物流会社などを経て2010年に独立。著書に「iPhoneアプリ開発レシピ」「cocos2d for iPhoneレッスンノート」など。東京・大阪にて初心者向けのアプリ開発講座「アプリ道場」を主催。現在はヘルスケアベンチャーやインバウンドベンチャーなどでiOSアプリの開発に携わっている。趣味はファッション、ピアノ、ジムでのトレーニング。

興味関心を広く持ち、ブランド力を高める時間術

Akioさん
(写真=大口葉撮影,ZUU online編集部)

――セルフブランディングについて、ご自身で計画したり戦略を練ったりすることはありますか?

自分のやりたくないことを避けつつ、したいことを選んでいくことで自分の価値は他者に伝わっていくと思います。そこには、誰かから見た自分という意識はありません。

強いて言うのであれば、いろいろなことに興味を持つ意識は、個々の独自性につながるでしょう。私は比較的さまざまな事柄に関心を抱きやすく、自分の職種を理由に仕事を断ることはほとんどありません。頼まれれば、イベント企画などにも挑戦します。加えて、技術職の身であるからか、一度興味を持つと深く探求するクセがあります。

そうした行動の一つひとつが重なったときに、他者がブランドと受け止める自分らしさが如実に見えるということはあるかもしれません。

Akioさん
(写真=大口葉撮影)

――何にでも興味を持つと、今度は時間が足りないと感じませんか?

確かにフリーランスの時間はすべてが自由ですから、いつの間にかセルフブラック企業状態に陥ってしまうことも珍しくありません。

私は自分の時間とタスクの関係性を可視化するために、「Task Chute(タスクシュート)」を使っています。

※タスクシュートとは?
一つひとつのタスクをタイムライン上に表記し、見積もり時間と実績時間を記述していくことで自分のタスク量と時間の関係性を可視化する方法。タスクシュートを行うためのサービスもいくつか提供されている。

タスクシュートのアプリを利用して、朝起きてからその日やりたいことをすべて可視化します。リピートタスクという機能を用いれば、カレンダーからタスクの自動転記が可能です。そして、私を含め多くの人に共通することですが、日常のタスクのほとんどはリピートタスクで処理できるので、手動でタスクを入れなければならないことはほとんどありません。朝起きてアプリを開けば、そこにはリピートタスクとカレンダーからの転記タスクが自動で並んでいます。この時点で、何時に眠れるのかが自動で算出されます。トイレに入る、食事をする、着替えるなど些細なタスクもすべて書き出すのがポイントです。

もしも全タスクの見積もりが24時間を超えていれば、それは計画として破綻しているということです。自分の力量に関わらず、できないことに挑んでいることが理解できます。

――そんな几帳面なリストをもとに生活を……!?

ロボットみたいな生活だと驚かれることもありますが、実際にこれ通りに過ごそうと努力しているわけではありません。これはあくまで理想の一日であって、完璧に過ごす必要のないものです。むしろ、今日のタスクがいつ頃終わるのか予測することで、安心するために利用しているんです。

それに、私は決して几帳面な性格ではありません。基本的に怠け者です。怠け者だからこそ、いかに効率的にやるか、時間をどう使うか考えるのだと思います。

Akioさん
(写真=大口葉撮影)

「行動を起こすことができない」を解消する2つの方法

――なかなかエンジンのかからない怠け者が行動を起こすために、有効な手段はありますか?

方法は2つあります。ひとつは、他人を巻き込むことです。たとえば私の場合、姿勢改善やピアノはあえて人を巻き込む形で予定を組みます。パーソナルトレーナーがいるからこそジムに行く時間を死守しますし、先生がいるからこそピアノの練習にも励むからです。

もうひとつは、ルーチンワークのルールを日々のアクションとセットで決めることです。たとえば、「英語の勉強を一日〇分しよう」というルール設定は、忙しい日々のなかで後回しになり、結局手がつきません。そうではなく、その分数を確保できる勤務時間とセットにしてルールにするほうが効果的です。「仕事に行く時間は必ず英語を勉強する」と決めれば、仕事に行く日は必ず英語の勉強に手をつける習慣が生まれます。私の場合、ランニングマシンで走りながら英語の動画をチェックするようにしています。

これらが私にとって効果があるのは、私は人との約束をキャンセルすることを嫌だと感じる性質を持ち、時間を有効活用することへの興味があるからです。自分の弱みや強みを熟知していれば、おのずと有効な手段も見つかるでしょう。

そして、自らの性質と掛け合わせた24時間に収まるタスクを見いだせれば、それが自分自身の価値になり、ブランドに直結するのだと思います。

フリーランスにとっての資本とは?

――Akioさんから見たフリーランスの資本とは何でしょうか?

第一に、体が資本です。どんなにアプリケーションをアップデートしても、ハードウェアに支障があっては動きませんから。

私はパーソナルジムに通い、姿勢改善のトレーニングを続けています。自分の好きな服をスタイルよく着たいから始めたジム通いですが、今は仕事での疲れも減りましたし、休日の寝起きも良くなっています。

そして、次に重要なのは一つひとつの行為です。フリーランスにとっては、仕事のスキルを問わず、あらゆる行いや言動が名刺代わりになります。眼前のミッションに対して真摯であることの積み重ね以外に、信頼や実績を勝ち取る方法はないでしょう。

――フリーランスの資本のひとつと考えられる人脈については、どのように広げていますか?

エンジニアの場合、仕事のために人脈を広げることは必須ではありませんが、勉強会やイベントを通じた異業種の人たちとの交流は一定以上あるほうが望ましいでしょう。

前編で自分の持つスキルの市場価値について再考することが大切と述べましたが、自分を別のコミュニティのなかに置くことでそのスキルに市場価値が生まれるケースは珍しくありません。

例えば、とある国では300円程度で販売されているチョコがあるとして、日本で「海外のチョコ」というブランド力と共に売れば、そのチョコは3000円で売れることもあるかもしれません。これと同様に、自分の持つスキルが困りごとの解決に直結する場所に自分が飛び込めば、仕事はいくらでもあるでしょう。

そういった損得より純粋な異業種への興味関心がもたらす出会いが多いですが、いずれにせよ狭いコミュニティのなかで人脈を完結させないことが実りをもたらします。

そういえば、私が“派手髪”にこだわっているから呼ばれたイベントもありましたね。単純に派手髪が好きだから染めているだけなのですが、何かと記憶されやすく、人脈を広げるきっかけにもなっています。

「違和感を与えて覚えてもらう」というのはひとつ効果的な手法です。派手髪とiOSアプリはまったく関係がないからこそ、相手には強い印象を残します。

例えば、引っ越し屋が全く関係のない動物のロゴを掲げていることがあるように、違和感が残るものを組み合わせた見せ方がブランディングにつながることもあるかもしれません。知り合いのエンジニアさんは、風呂でプログラミングするのが好きだから風呂グラマーと名乗っていますが、この二つの掛け合わせもとても印象的ですね。

Akioさん
(写真=大口葉撮影)

自己探求とそれを実現させるための時間管理術を身につけよ

Akioさんのセルフブランディング力を支えているのは、自身の強みや弱みを理解したうえで決めた時間管理のルールだった。

・興味を広く抱き、それに手を出せる時間を可視化する
・時間術の基本は自分の弱みと強みに応じたルール設定を考えること
・健康維持を第一に、すべての行動や出会いを名刺代わりに

時間管理、ブランディング、年収維持などすべてに通じるAkioさんの資本は、「自分自身」という言葉に集約される。どこまで自己探求を続けられるか。自分を極めることは、誰かに与えられた使命を全うすることよりも難しいのだろう。だが、変化が激しい「個の時代」を勝ち残っていくためのヒントは、Akioさんの生き方に凝縮されているのではないだろうか。

(Akioさんインタビュー全3回、おわり)

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